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The hopeless world ?  作者: ハロハロ
狂った化物は慟哭する
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二人の化物

「えっ」

 ナギは千夏が何を言っているのか分からなかった。

 ーーどういう、こと······?

 ナギの耳には確か千夏が通り魔と言うのが聞こえた。

 それは、不可解この上ないことだ。

 通り魔が相手に対し、通り魔と呼ぶことはおかしい。それでは通り魔が二人いることになってしまう。

 では、もともと通り魔が二人いたとすると矛盾はない。しかしナギには、どうもそうとは考えられなかった。  

 目の前ではナイフを持った二人が睨み合っている。

 一人は鋭く、冷徹に。

 一人は歪で、愉しそうに。

 ナギの脳内で、ハッと昨日の光景が思い出される。

 倒れている女の人。側に立つ千夏。血塗られたナイフ············。

 そして、女の人が奇跡的に助かったということ。

 ······それが、奇跡的ではなく必然的なら?

 女の人は助かったのではなく、助けられたとしたら?

 あの時、ナギは千夏が女の人を刺した場面を見たわけではない······っ。

 

 ーー通り魔は、千夏じゃなかった······?


 昨日の事件も千夏の仕業ではなかった。

 千夏は、人を傷付けてはいなかったのだ。


 ーー私たちは、ずっと勘違いをしていたのか?


 では何故千夏があの時、血臭漂うあの路地裏にいたのか。

 彼女は、血塗られたナイフを持っていた。その血は倒れている女の人のものではないとするなら······。

 

 本物の通り魔の血だったとしたら······。


 ついにナギは真実に触れる。


 ーー千夏は本物の通り魔を探していたんだッ。倒れていた女の人は千夏に助けられた······!

  

 その時、天高くに居座る三日月は、まるでこの結末を嘲笑うかのように煌々と夜空を照らしていた。

「フーッフーッ············フヒヒ」  

 本物の通り魔はだらだらとよだれを垂らし、胡乱な目つきでナイフを振るう。

 血走った両眼は薬の中毒者を想像させた。

 千夏は繰り出されるナイフを的確に躱し、受け止め、流す。

 千夏自身も愉しくて仕方がないといった表情だ。

「あはははは············焦るなよ。お前は私と同じなんだろ? 殺人衝動にどうする事もできない化物なんだっ」

 鋭い一閃を難なく躱す通り魔も、千夏同様ありえない身体能力を秘めているはとま間違いない。

「そんなお前と私、一体どこが違うって言う!?」

 隙を見せようものなら死を意味する攻防に、蹴りなども繰り出される。

「ヒヒヒッ。フヒヒヒヒヒッヒャハハハハハハ!」

 千夏の蹴りを難なく躱すが、それはフェイク。本命のナイフによる一撃が、通り魔の腕をかろうじて捉えた。

 ナイフの軌道にそって赤い血が弧を描いた。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

 まるでリミッターが外れたように、より一層笑い声を上げる通り魔。

 切られたことなど意に介さず、一瞬無防備になった千夏へと飛びかかる。

 すんでのところで飛び退いた千夏は猫のようなしなやかさで体勢を立て直し、そして歓喜の叫びを響かせた。

「アハハハハハ! お前は痛みすら感じないのか? そこまで ”狂って” いるってなら······いいねえっ最高だ。そう、こなくっちゃなあ!」

 この時、ナギはただの傍観者だった。二人の間に割って入ることなど出来はしない。

 目の前では目を疑うような激闘にナギの入り込む余地などない。

 現実を逸している。そこらの不良同士の喧嘩とは次元の違う、心の底から愉しみ合っている二人の異常者による殺し合い。

 彼らに常人は関与することは出来ない。

 その時、ナギが腰を抜かしている間に背後から複数の足音が聞こえた。

「っちょっ、どうなってんのよ」

 ーー木乃香っ? ということは······。

「あわわわっ。と、止めた方がいいよね。でもどうしたら······」

「早苗、落ち着いて。まず警察に連絡をーー」

「それはダメ。いま警察なんかが絡むと千夏ちゃんにとって都合が悪すぎる」

 早苗、渚、神谷が続々とやって来る。

 どうやら漣が呼んでいた応援が到着したようだ。

 すっとナギの目の前に手が差し伸べられる。

「立てるか、桜河。ったくどういう状況なんだよ一体」

「あ、ありがと一文字。どういう状況って、私にも分かんないよ」

 一文字の手を取り立ち上がる。彼の背後には漣が険しい表情で立っていた。

「お前ら、安全ところまで下がってろ。これは城本のケジメだからな」

「ケジメったって、度を越してますっ。危険すぎますよ漣さん」

「··················」

 漣はそれきり黙ってしまった。

 ーー何か、止める術は······。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


初めての作品なんで当たり前ですが、初の戦闘シーン(?)難しいですね(ーー;)

語彙が少ないのもありますが、なかなか自分の考えが表現できないものです。

もっと練習しなければ……!


では、毎度同じく誤字脱字、間違った表現などあればご指摘お願いします。

感想や評価、アドバイスなどあればとても嬉しいです。


さて、次回も目を通してもらえることを祈りつつ。




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