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The hopeless world ?  作者: ハロハロ
狂った化物は慟哭する
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狂う時ⅱ

 羨み、嫉妬し、憧れ、悔やむ。

 神谷竜輔という人間を一言で表すなら、


ーー欺瞞


 これに尽きるだろう。

 人を騙し、世間を騙し自分すらも騙す。

 常に飄々とした態度など上辺っ面の仮染の姿に過ぎない。

 行動しやすいから、そう振舞っているだけ。

 彼の本質を知る者など、おそらく片手の指でこと足りる。

 そんな彼には人生で唯一最大の過ちがあるのだが、それはまた別の話······。


 だから神谷竜輔は、自らとは正反対の存在、真っ直ぐで、自らに正直な桜河ナギに羨望の眼差しを向けるのだ。

「············いいねえ。和真」

「あ? 何がだ」

「······いいや。何でもないさ。それよりも、一つ頼みたいーー」

「分かってる。お前が言おうとしている事をさっきからやってるんだが、まだ足りねえ。竜輔、今回の事件の資料を全部見せろ」

「もうお前の携帯に送ってるよ」

 漣は広げられた地図上の赤丸。すなわち通り魔被害が起きた箇所を真剣な面持ちで見つめる。

 ナギですら初めて見るかもしれない超本気モードの漣は、ピリピリとした空気を放っている程だ。

 そんな漣とは正反対に、これで仕事は終わったとばかりにくつろぎ始める神谷。

 ナギは漣の邪魔にならないように小声で神谷に耳打ちをする。

「神谷さん神谷さん」

「んぁ。どうしたの」

 彼は一体どこから取り出したのか、煎餅をばりぼりと咀嚼しているーーッとお。それはウチの煎餅じゃないか。

「漣さんは何をしているんですか?」

「うん。勝手に煎餅を食べたのは謝るからさ、グーは止めてくれないかなぁ」

 ひとまず煎餅は取り上げておく。

 ナギは笑顔だが、滲み出る圧力が半端なく怖い。

 神谷はソファに寝転がり、ゆるい調子で応えた。

「そうだねぇ。丁度、和真は本領を発揮しているところじゃないかな」

「本領?」

「そう。俺が情報を扱うのが得意なように、あいつにも得意分野があるのさ。·······················人の心を読み取るっていう、タチの悪い得意分野がね」

 ーー人の、心······。

 人間が他人の心を完璧に読むことは、どれだけ科学が進歩したとしても不可能だとナギは思っている。  

 そんなことが出来るなら、それ程恐ろしい事はないのではないだろうか。

 ······逆に、それ程幸せなこともないだろう。

 そんなことは有り得ない。

「······もし、漣さんが人の心を読めたとして、何の関係があるんです?」

 信じてないねぇ。と神谷は苦笑する。

「つまり、あいつは通り魔事件についての資料や、ナギちゃんが話した城本っていう子の内心的状況を考えて、その城本って子が今夜現れるであろうポイントを絞っているわけ。まあ······あいつだった別のことに気づくかもしれないけどね」

「?」

 神谷の最後の一言が引っ掛かったが、ともあれ漣は忙しいらしい。

 神谷も自分の仕事はちゃんとこなした。

 ならば、ナギは何をしたというのだろう。

 他人の力に頼り、縋ってばかりではいけない······。そう思うが、ナギには神谷のような情報収集力もなければ、漣のような特異な才能もない。

 そんなナギに、出来ることは何か············。

「······よしっ」

 ナギは握りこぶしを作り、部屋を出る。

「ナギちゃーん。どこ行くのー?」

 部屋を出て自分の事務机の傍まで進み、鞄を手にとった。

 隣の部屋では、漣は資料と睨めっこをしている。

 ············他人である、一人の少女のために。ナギの、友人のために。

 ーー私もやるべきことはやらなきゃ。元々、私が持ち込んだ種なんだ。

 そして鞄から、携帯電話を手に取り、ある人物へとプッシュする。

 ············ナギの出来ること······。それは、結局人を頼ることだった。


 ーー漣さんみたいな才能もない。神谷さんのような力もない。


 耳元でコール音が響く。


 ーー私に出来ることなんて何もない。だったら、とことん人を頼ってやる。そうして問題が解決するのなら別に良いんだッ。


 rrrrrrrrrrrrrrッ

 

 ーー私に出来ることなら、何だってやってやろうじゃないか!

 

 rrrrrrrrrrrrrrッ


 ーー例えそれが他人に迷惑だと受け取られても············ッ。


 ナギは例え自己満足でもいいと思っている。自分のために他人を使う。漣なんかよりもよっぽどタチの悪い。

 だが、彼女は気づいていない。

 人に頼ることで、その人がナギに力を貸し、協力する。それだけなら別にどうということはない。

 ただ、ナギの場合。多くの人がナギの元に集まることを厭わない。手を差し伸べることを厭わない。

 多くの人がナギに協力する。助けてくれる。

 ナギには他人をそうさせる魅力······信頼性というべきものを持っているのだ。

 ······このことは、立派なナギの才能であるが、彼女はまだ気づいていない。 

  

 rrrrr············カチャ。


「もしもしっ。あのね、助けて欲しいのっ木乃香!」


「えっ? ええっ? う、うーん······いいよ!」


 ーーあ、案外あっさり。


 長瀬木乃香は、事情を聞くまでもなく了承した。

最後まで目を通していただきありがとうございます!


上手い人の作品、それこそプロの文章を読むとやはりレベルが違うなと痛感します。

今回で20話目となりまして、僕が小説を書き初めて5ヶ月目に入りました。

上手い人の文章と比べると至らないところが多く、まだまだ力不足だと感じてしまいます(-.-;)

それでもこんな拙い文章を読んでくださっている方には本当にありがたいです!

 

さて、今回も誤字脱字や間違った表現などありましたら御指摘願います。

感想、アドバイス、評価等ありましたら是非ともお願いします!

 

ではでは、次回も目を通してもらえることを祈りつつ

              霞アマユキ


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