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The hopeless world ?  作者: ハロハロ
狂った化物は慟哭する
19/36

狂う時ⅰ

「よし、それじゃあ説明しようか」

 バン。と、片付けられた事務机の上に広げられたのはこの周辺の地図だ。

 その地図を赤ペンでコツコツ叩きながら神谷は説明を始める。

「まず最初に。実を言うと四年ほど前にも今回と同じと思われる人物による、似たような通り魔事件があったんだよ」

 記憶を探ると確かに、そんな事件があったような、なかったような。  

 ーー当時は小学六年生の終わりだったか······。

 神谷は先を続けた。

「その時は通りすがりに一般人の服を切りつける程度で、大事にはならなかったんだけど、まあその時から彼女は ”狂って” いたのかもね」

 漣の眉が小さく動く。

 ナギはただ無言で話を聞いている。

 小芝居めいた口調で話す神谷は、まさに物語の語り部。彼は今回の事件とどこまで情報として所有しているのだろうか。


「さあさあそして今回の通り魔事件だ」


 大仰に手を広げ、自然と意識が惹かれる。

 ーーこの人は話し方が尋常じゃなく上手いんだろうなあ。

「ことの発端は今年の二月初旬。報道はされていないけど既にこの時、通り魔事件第一号は起きていたのさ」

 なんで報道もされていないような事件を知っているんだ。という質問は今更すぎるだろう。

 ーー神谷さんの情報ネットワークおそるべし。

 そんなことより、ナギは一つ気になることがあった。

「通り魔事件が報道され始めたのは七月末からですよね······。二月に最初の事件が起きているなら、報道され始める七月までにだいぶブランクがあるんですけど······?」

「それを言ったら四年前もそうだ。ここ最近は同一犯で間違いないだろうが、この四年っていう期間は間が空きすぎなんじゃないか? 本当に同一犯なのかすら怪しいぞ」

 二人の疑問に神谷は胸を張って答える。

「そこは情報通の俺を信じなさい」

 一体どこにそんな自信があるのだろう。

 ナギは白々しい目神谷に向ける。

「ナギちゃーん? そんな目で見ないでくれるかな? ······と、とにかく。この一連の事件は同一犯によるもので間違いないよ」

「························」

 漣は険しい表情をしたままだ。

 ーー?  


 ーー漣さんはどこか納得していない······?

 

 漣と神谷は微妙に噛み合ってない。

 ナギの違和感とは裏腹に、奇妙な齟齬を保ちながら事は進む。

 神谷は近くのペン立てから赤ペンを選び、手に取る。突き刺さる視線を受けながら、地図に赤い丸を描き始めた。

 鼻唄でも唄いそうなほど丸を描くペンを快活に走らせる。

「神谷さん、何してるんですか?」

「これはここ数ヶ月で起きた通り魔事件の発生場所さ」

「ほおほおなるほど」

 ふと、漣を見ると彼はじっと何かを考え込んでいるようだった。

「まあさ、もしその通り魔さんが四年も前から狂い始めていたのなら、それはすごいことだと思うんだよねえ。なんせ四年もの間、 ”狂い” きっていないんだから」

 ペンはどんどん地図上に赤丸を描いてゆく。

「そろそろ限界なんじゃないかな?」

「満杯になったバケツに一滴の水を落とすようなものか? 竜輔」

「············そうだね。それで千夏ちゃんって子は狂うだろうね」

 

 ーー······ッ。


 一瞬、ナギの背中に悪寒が走った。

 ーー何か、悪寒が······。それも、恐ろしい悪寒を感じたような············。

 

 だがその悪寒も波が引くようにサッと消えた。

 ーー············今のは······?

 気のせいだろう。と思い、ナギは神谷の話と千夏を思い浮かべた。

 千夏に初めて会ってからの出来事が走馬灯のように駆け巡る。

 息を吸って、ゆっくりと吐いた。


 ーー ”狂わせて” たまるか。


 強く拳を握る。

 ーーあいつはまだ一線を越えていない。踏ん張っているんだ。

 ーー千夏に何があって通り魔なんかしているのかはもうどうでもいい。あいつはまだ独りで戦っている。


 ナギの眼に、意志という炎が灯った。


「··················」

 そんな彼女に神谷は羨望の眼差しを送るのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


今回はクライマックスに向けての前段階となります。次の話とかもそうなるかもしれませんが。

ナギ達は動き始めています。千夏は、どうするのでしょうか。

はてさてこれからどうなるのやら……


さて、毎度のことながら誤字脱字、おかしな表現など点在するかもしれません。御指摘のほどお願いいたします。

感想や評価などお待ちしてますので、こちらも是非お願いします。

評価をしてくださった方ありがとうございますッ。「応援してます」などのお言葉、至極恐縮でございますッ大変力になります(*^^)


ではでは、次回も目を通してもらえることを祈りつつ

              霞アマユキ

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