第二章・第2話
限界の先
日が昇った頃、
Rは、倒れていた。
地面に、顔を押しつけたまま、
指一本、動かない。
「……は……は……」
呼吸だけが、やっとだった。
カイも、少し離れた場所で、
仰向けに倒れている。
「……もう……無理……」
クロウは、二人の前に立つ。
「……死んでないな」
淡々と確認する。
Rは、かすかに顔を上げた。
「……なんで……こんな……」
声が、震える。
「……仮面、使えば……もっと……」
クロウは、首を横に振った。
「……違う」
Rの前に、しゃがみ込む。
「仮面は、強くしてくれる」
「……でもな」
クロウは、Rの胸に、指を当てた。
「“強くなった気”にさせるだけだ」
Rは、目を見開く。
「……じゃあ……」
「お前は、仮面がなければ、何者だ」
Rは、言葉を探す。
だが、出てこない。
――何者でもない。
そう、思ってしまった。
「……何も、ないです」
Rは、絞り出すように言った。
クロウは、少しだけ目を伏せた。
「……そうか」
それから、静かに立ち上がる。
「なら、作れ」
Rは、顔を上げる。
「……作る?」
「そうだ」
クロウは、空を見た。
「自分の“芯”を」
風が、吹いた。
砂埃が、舞う。
Rは、震える手で、
地面を掴む。
「……俺は……」
息を整えながら、
言葉を探す。
「……守りたい」
クロウは、Rを見る。
「誰を」
「……目の前の人を」
Rの声は、弱いけど、真っ直ぐだった。
「……仮面があってもなくても」
クロウは、ほんの一瞬だけ、
口元を緩めた。
「……それでいい」
そう言って、背を向ける。
「……今日は、終わりだ」
Rとカイは、驚く。
「……え?」
「……限界は、越えた」
クロウは、歩き出す。
「……あとは、積み上げろ」
Rは、空を見上げた。
太陽が、まぶしかった。
――初めて、自分で掴んだ光だった。




