第二章・第1話
修練の始まり
朝靄の立ち込める、荒野。
Rとカイは、倒れ込んでいた。
「……はぁ……はぁ……」
息が、続かない。
指先が、震えている。
遠くで、クロウが立っていた。
岩の上に腰を下ろし、
こちらを見下ろしている。
「……まだか」
淡々とした声。
「……もう無理だって……」
カイが、地面に顔を押しつけたまま言う。
「三日……寝てない……」
「……寝るから、弱い」
クロウは、立ち上がる。
「立て」
Rは、歯を食いしばって、
腕に力を込める。
――ぐぐっ。
体が、持ち上がらない。
「……仮面、使えば……」
思わず、口に出た。
クロウの視線が、刺さる。
「……使うな」
Rは、黙る。
クロウは、Rの前に立った。
「仮面は“借り物”だ」
Rは、俯いたまま聞く。
「……だが」
クロウは、低く言う。
「お前自身は、何だ」
Rは、答えられない。
「……守りたいって言ったな」
「……はい」
「じゃあ聞く」
クロウは、Rの額に指を当てる。
「その体で、誰を守れる」
Rは、唇を噛んだ。
――何も、言えない。
「……いい」
クロウは、手を下ろす。
「今は、それでいい」
そして、背を向ける。
「……だから、鍛える」
クロウは、剣を地面に突き刺した。
「走れ」
「……え?」
「日の出まで、あの丘を往復だ」
遠くに見える丘。
……正気じゃない距離。
「……無理だって!」
カイが叫ぶ。
クロウは、振り返らない。
「……死ななきゃ、まだ足りない」
Rとカイは、顔を見合わせた。
そして――
Rは、立ち上がった。
足が、震えている。
でも、前に出る。
「……行こう、カイ」
カイは、苦笑した。
「……マジで、ついてくんだな」
二人は、走り出した。
朝靄の中へ。
足音だけが、
荒野に響いていく。
クロウは、背後で呟いた。
「……その目、忘れるな」




