第一章・第3話
初めての“力”
Rの指が、震えながら仮面の縁を掴んでいた。
それは、奪われた誰かの仮面。
伝説の名が刻まれた、戦士の仮面。
――これを被れば、戦える。
Rは、ゆっくりと仮面を顔に当てる。
その瞬間――
視界が、変わった。
世界が、研ぎ澄まされる。
音が近くなり、
空気の流れが分かる。
身体の奥から、
熱い何かが湧き上がってきた。
「……これが、仮面の力……」
黒仮面の男が舌打ちする。
「チッ……ガキが」
Rは、無意識に一歩踏み出した。
身体が、勝手に動く。
――速い。
さっきまでとは別人のように、
Rの拳が、黒仮面の男の腹に突き刺さる。
「ぐっ……!」
男がよろめく。
R自身が、一番驚いていた。
――守れる。
初めて、そう思った。
「ユナ……下がって!」
Rは叫ぶ。
ユナは、目を見開きながらも、
Rの後ろに下がった。
黒仮面の男が、
別の仲間を呼ぶ。
「囲め!」
二人、三人と集まってくる。
Rは、息を呑む。
――多すぎる。
その時、
横から、風のような影が走った。
「ちょっとどいてくれる?」
軽い声。
次の瞬間、
黒仮面の一人が吹き飛んだ。
Rが振り返ると、
そこには――カイがいた。
「……遅くなった」
カイは笑う。
「まさか、こんな形で再会するとはな」
Rは、戸惑いながらも、
頷いた。
「……助かる」
「礼は後で」
カイは一瞬で間合いに入り、
黒仮面の背後を取る。
速い。
まるで、影。
だが――
「調子に乗るなよ」
低い声が、響いた。
奥から、
明らかに“違う気配”の男が現れた。
黒い仮面。
だが、他の連中とは違う。
――圧がある。
「……エクリプスの幹部か」
カイが、小さく呟く。
Rの背中に、冷たい汗が流れる。
男は、Rを見た。
「……その仮面。
奪ったのか?」
Rは、答えない。
男は、鼻で笑った。
「いい。
どうせ――すぐ死ぬ」
次の瞬間、
男の仮面が、赤く光った。
――Rは知らない。
この戦いが、
自分の人生を“完全に変える”戦いになることを。




