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仮面のない空へ  作者: R


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第一章・第二話

壊された日常


 その日は、少しだけ平和だった。


 Rは市場で簡単な荷運びの仕事を終え、

 夕暮れの街を歩いていた。


 空は橙色に染まり、

 高層ビルの影が長く伸びている。


 ――こういう時間が、嫌いじゃない。


 仮面越しでも、人々の生活の匂いは感じられる。

 焼き菓子の甘い匂い。

 油の弾ける音。

 誰かの笑い声。


 Rは、ある店の前で足を止めた。


 古びた花屋だ。


 店番をしているのは、

 Rより少し年上の少女――ユナ。


 柔らかい雰囲気の仮面を被っているが、

 その奥の目は、よく笑う。


「おかえり、R」


「……ただいま」


 Rは、いつものように短く返す。


 ユナはRに、

 一輪の小さな花を差し出した。


「今日、いい匂いの花が入ったの」


 Rは戸惑いながら受け取る。


「……ありがとう」


「ふふ。

 Rって、仮面つけてても感情バレバレだよね」


 Rは視線を逸らした。


 ここだけは――

 Rが“Rでいられる場所”だった。


 その時だった。


 街の奥で、

 ――ズン……と、低い振動音が鳴った。


 地面が、微かに揺れる。


 次の瞬間。


 空気が、凍った。


 通りの向こうから、

 黒い仮面を被った集団が現れた。


 揃った足音。

 無機質な動き。


 ――闇の組織。


 誰もが知っている、

 仮面を“奪う側”の存在。


「……来た」


 誰かが、そう呟いた。


 次の瞬間、

 叫び声が上がった。


「仮面を出せ!!」


 黒仮面の男が、

 近くの店主を殴り倒す。


 その仮面を、無理やり剥ぎ取る。


 男は、崩れ落ちた。


 ――力を失った瞬間、人は、こんなにも脆い。


 Rは、反射的にユナの前に立った。


「……逃げて」


 ユナは首を振る。


「R……!」


 黒仮面の一人が、

 Rたちを見つけた。


「ガキが……邪魔するな」


 Rは、震える手で、

 白い仮面を握りしめる。


 ――この仮面じゃ、戦えない。


 分かっている。


 それでも、動いた。


 Rは殴りかかった。


 だが――


 黒仮面の男は、軽く避け、

 Rを地面に叩きつけた。


「弱ぇ……」


 Rの視界が、揺れる。


 ユナが叫ぶ。


「R!!」


 Rは立ち上がろうとするが、

 体が言うことをきかない。


 黒仮面の男が、

 ユナに手を伸ばした。


 ――守れない。


 その瞬間、

 Rの胸に、強烈な後悔が走った。


 ――仮面があれば。


 ――力があれば。


 Rは、

 地面に落ちていた“戦士の仮面”に

 視線を向けた。


 誰かが、奪われた仮面。


 伝説の名が、刻まれている。


 Rの手が、伸びる。


 そして――


 その仮面を、

 掴んだ。

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