第二章・第11話
【ノクスの影】
その夜――
遠く離れた“黒の都”。
高い塔の最上階。
巨大な玉座に、
ひとりの男が座っていた。
顔には、
禍々しい仮面。
だが――
その仮面すら、
“器”にすぎないと分かるほどの存在感。
――ノクス。
玉座の前に、
ゼオンが膝をついていた。
「……街は、奪えませんでした」
ノクスは、しばらく黙っていた。
そして、低く言う。
「……理由は」
「……Rという少年と……」
「……クロウです」
その名を聞いた瞬間、
ノクスの仮面が、わずかに軋んだ。
「……クロウ……まだ、生きていたか」
ゼオンは、顔を上げない。
「……はい」
ノクスは、ゆっくり立ち上がる。
空気が、震える。
「……ならば、時が来た」
玉座の奥の壁が、開く。
そこには――
無数の仮面。
だが、その中心に――
布で覆われた“ひとつ”があった。
ノクスは、その前に立つ。
「……《原初の仮面》」
ゼオンの喉が、鳴る。
「……まもなく、目覚めます」
ノクスは、静かに笑った。
「……目覚めるのではない」
「……呼び寄せるのだ」
ノクスは、ゼオンを見る。
「……Rを、生かしておけ」
ゼオンは、目を細める。
「……あの少年を?」
「……ああ」
ノクスは、低く言った。
「……《原初》は、“壊す者”を必要とする」
ゼオンは、微笑む。
「……なるほど」
「……なら、育てましょう」
ノクスの仮面の奥で、
闇が、うねった。
「……すべては、仮面の時代を“完成”させるために」
⸻
一方――
Rたちは、焚き火を囲んでいた。
空には、満天の星。
だが――
Rの胸は、ざわついていた。
「……なあ、クロウ」
「……なんだ」
「……ノクスって……どんな奴なんだ」
クロウは、火を見つめたまま言った。
「……仮面に、喰われた男だ」
Rは、静かに拳を握る。
――あいつを、止める。
そのために、
俺は――進む。




