第二章・第5話
過去の影
夜。
焚き火の音だけが、
静かに鳴っていた。
Rとカイは、
火を挟んで座っている。
クロウは、少し離れた場所で、
岩に腰を下ろしていた。
沈黙が、重い。
Rは、意を決して口を開く。
「……クロウ」
「……なんだ」
「……ゼオンと……
何があったんですか」
クロウは、すぐには答えなかった。
火を見つめたまま、
しばらく黙っている。
やがて――
「……あいつは、昔の俺の“仲間”だ」
Rとカイは、息を呑む。
「……え」
「……同じ師のもとで、修行した」
クロウの声は、低く、静かだった。
「……だが、道を違えた」
Rは、焚き火を見つめながら聞く。
「……どうして」
「……力の使い方だ」
クロウは、拳を握る。
「……俺は、守るために使いたかった」
「……あいつは、支配するために使いたかった」
カイが、ぽつりと言う。
「……それで、エクリプスに……」
「……ああ」
クロウは、頷く。
「……ゼオンは、ノクスの右腕だ」
Rの胸が、ざわつく。
「……ノクス……」
クロウは、火を見る。
「……あいつは、仮面の力に“酔っている”」
Rは、唇を噛む。
「……じゃあ、クロウは……」
「……俺は、仮面を一つしか使わないと決めた」
Rとカイは、驚く。
「……え?」
クロウは、Rを見る。
「……仮面を集めるほど、人は壊れる」
「……だから、俺は――」
少しだけ、間を置いて言う。
「……“一つだけ”を、極めた」
風が、吹いた。
焚き火が、揺れる。
「……だが、ノクスは違う」
クロウの声が、低くなる。
「……頂点の仮面を、欲している」
Rの心臓が、強く鳴った。
――あの、昔話の仮面。
クロウは、続ける。
「……あいつが、それを手にしたら……」
「……世界は、終わる」
Rは、拳を握りしめた。
「……じゃあ……俺が……」
言いかけて、止まる。
クロウは、Rを見る。
「……お前が、止める」
Rは、目を見開く。
「……俺が……?」
「……そうだ」
クロウは、静かに言った。
「……だから、鍛える」
火の中で、薪が、ぱちっと弾けた。
Rは、空を見上げる。
――遠くに、星が瞬いていた。
あの星の下に、
ゼオンがいる。
ノクスがいる。
そして――
Rは、そこへ行く。




