第二章・第3話
仮面のない戦い
廃れた集落。
風に吹かれて、
壊れた看板が、ぎい…と鳴っていた。
R、カイ、クロウは、
ゆっくりと中へ入っていく。
「……気配が、ある」
カイが、小さく言った。
クロウは、頷くだけ。
「……仮面は、つけるな」
Rは、唾を飲む。
「……でも……」
「……大丈夫だ」
クロウは、低く言った。
「……お前は、もう“立てる”」
その言葉に、
Rの胸が、熱くなった。
――キィ……。
奥の建物の影から、
人影が、ひとつ、出てくる。
黒い仮面。
エクリプスの斥候だ。
「……見つけたぞ」
低く笑う声。
Rは、無意識に仮面に手を伸ばす。
――だが、止めた。
クロウの言葉を、思い出す。
Rは、ゆっくりと一歩前に出る。
「……ここは、通さない」
斥候は、鼻で笑った。
「……仮面もつけずに?」
――次の瞬間。
斥候が、跳んだ。
仮面の力で、
常人離れした速さ。
「……っ!」
Rは、身を低くしてかわす。
風圧が、頬をかすめる。
――怖い。
でも、逃げない。
Rは、歯を食いしばり、
拳を握る。
――踏み込む。
――殴る。
当たらない。
だが――
Rは、止まらない。
何度も、何度も。
転んで、
立って、
また向かう。
斥候の動きが、
少しずつ、荒くなる。
「……ちっ」
苛立ちが、見えた。
――今だ。
Rは、斥候の足元に、
飛び込んだ。
肩で、体当たりする。
「……ぐっ!」
斥候が、よろけた。
Rは、そのまま、
渾身の一撃を、腹に叩き込む。
――ドン。
斥候が、後ろに倒れた。
仮面が、外れる。
中から出てきたのは、
ただの、若い男の顔だった。
Rは、息を切らしながら、
その顔を見る。
――同じ、人間だ。
クロウが、近づく。
「……よくやった」
Rは、驚く。
クロウに、褒められた。
それだけで、
胸が、いっぱいになった。
「……仮面がなくても」
Rは、呟く。
「……俺、戦えた……」
クロウは、静かに言った。
「……それが、本当の一歩だ」




