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探偵しょうがないじゃない  作者: 三重野 創


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KNOW YOUR ECONOMY

「日本経済は決して先行き不透明なんかじゃないわ」

 口を開いたのは、オブライエン女史である。


「好景気の予兆は、まず他のところから徐々に現れてくるものなの。たとえば、WBCの日本代表、サッカー日本代表、これは男子も女子もね。バスケットボールも大いに躍進したわ」

「確かに、急激に日本チームが頭角を現し、世界大会で強豪入りを果たしていますね。昔は夢のまた夢と言われたような舞台に躍り出ています」


「他にもあげたらキリが無いくらいよ」

「博士の専門とは違いますが、並の経済学者よりよほど傾聴に値しますね」

 学問の土台は、すべて共通している。それが脆くては、小手先のテクニックをいくら積み上げたところで、砂上の楼閣であろう。


「インフレ率2%の目標を掲げられたことがあったわよね。昨今の物価上昇でとっくに達成させられた感があるけど、これは当初の思惑と内実がまったく違う」

「ですね。今回のは鉄火相場、戦争インフレーションですから」


「いま、準繩じゅんじょうちゃんのところにニカルがいるんでしょ? あの子も怒り心頭だったわ」

 ずいぶん親しそうにしてくれるが、俺は別にオブライエン博士とは何もないぞ。


「あいつは国債乱発に断固として反対ですからね」

「国債をどんどん発行しろとの主張が、国の借金は国民の資産だからというところまでは、まだ分かるわ」

 学問の道を進むと、これはこういうものだから、深く考えずにとにかく覚えなさいと言われることがある。実際、そうしたことが後々深い理解に繋がったりするのだが、分からないものを分からないままで放置するのは、決してあるべき学術的態度とは言えない。


「ただね、国債を買ってるのは富裕層よ。一般国民は国債なんかに縁は無いし、懐があたたまるわけじゃない。むしろ国が富裕層に利払いをし続けなければならないから、国債を発行すればするほど税金は高くなり、国民生活は貧しくなるわ」

 事実、その通りになっている。


「ここを言わないのは、ペテンですわな」


「一応、国としての体裁は保たれるのでしょう。富裕層がお金を使えば、経済は回ることになるかも知れない」

「ですが、働かずとも豪遊出来る富裕層と、泥まみれになって働いても楽になれない労働者層との不公平感は、開く一方ですな」

 問題なのは、本来国民の味方であるべき野党が、知ってか知らずか、国債乱発に賛成していることである。野党が賛成しているせいで、与党もなんの気兼ねも無く発行することが出来ている。


「こんな単純なカラクリに気付かれないように、至る所で工作が張り巡らされております」

 『国民の借金は一人あたり1000万円で~』と報道されるや否や、『それは大嘘だ!国の借金は国民の資産だ!』との横やりが入る。繰り返しになるが、それは間違いではない。ただ、国民という括りが、ごくごく一部の少数者だという注釈が必要である。


「この説を信じてしまう人は、途中で不具合が出て来て、一旦立ち止まってる筈なのよね。だのに、そこで矛盾について考えるのを放棄してしまっている」

「もうそれは怖いくらいに、集団催眠に掛かっていますね」 

 いつも冷静なオブライエンがここまでヒートアップしているのは、優れた人財の宝庫である日本が、ここまで経済を破壊され、機能不全に貶められているためである。


「いくらでも国債を発行すればいいという論者は、なぜ無税国家の論は立てないのかしら?」






















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