7 休みの日
初任務終わりの次の日
一日の授業を終えた松雪は机の上でぐったりしていた。その周りを白と雲雀が立って様子を見ている。今日一日元気はなく、眠たげであった。それもしかないといっては仕方ないのかもしれない。なぜなら
「昨日で一気に今までの疲れどーん、と来た。」
昨日は初任務、その前の一週間は休みなく修行。昨日ついにちゃんと任務をみたことで、精神的な疲れも来たのだろう。
「今日は流石に休みにしよっか。」
白の言葉に松雪はガバリと起き上がり、白をキラキラおめめで見つめる。その勢いに若干引きながら、白がうんと頷く。
「ヤッター休みキター!」
一気に元気になった松雪に白が微笑み、雲雀は呆れ顔を見せる。
「ちょっと焦り気味で、今までは詰め込んでたけど、これからは日曜日と水曜日は休みにしようか。まだ新人の身だしね」
一気に週に二日の休みが与えられ、松雪は嬉しそうに身体を震わせる。
「そうと決まれば、今日一緒に遊びに行かない?!カラオケしたい!」
最近は松雪の教育ばかりだったため、雲雀と白、共に仕事は休みだが
「悪いな弟子、今日は予定があるんだ」
「残念…白くんは?」
雲雀に断られガックリ肩を下ろすと、白に視線を向ける。白は向けられた視線に少し気まづそうに頬をかく
「僕は、ワッ「僕と遊ぶんだしーね!」」
白に後ろから抱きついて、3人の輪の中に入ってきた男を白はなんとか倒れず受け止め、顔を見た。
「悠くん」
白に名前を呼ばれた悠は白に抱きついたまま、いぇーいとピースをする。
「雲雀、やっほーだしー」
おう、と雲雀は軽く右手を上げる。悠は雲雀をみたあと松雪を見たが、冷たい目線を向けるばかりで何も声をかけない。
そんな悠の様子に松雪は体を強ばらせ、白は二人をみて悠の視線を辞めさせるように、悠の頭を撫でた。
「前から僕と休みの日は、遊ぶ約束してたんだしーね」
「勿論覚えてたよー…ってことでごめんね、松雪くん」
「いや全然いいよ」
流石に今、悠と遊ぶのは無理だ、と判断した松雪はブンブンと頭を大きく振る。その様子に当たり前だし、というようにフンっと悠は松雪を見る。
「つーくん、最近全然顔だしてくれないしー、いつも3人でつるんでるし」
最近は第三修練所に入り浸っているため、アジトに顔を出すことが少ない。それでも幹部としての仕事もあるため、顔は出しているが確かに玲の部屋に顔を出すことは少なかったし、自身の相棒に会うことはあれど、他の幹部と顔を合わせることも少なかった。
白は申し訳無さそうに、松雪は気まずそうな顔をする。敵対心ビンビンな悠と一緒にいるこの空間が気まずいのだ。
悠はそんな松雪を気にしているのか気にしていないのか、分からないくらいの様子で会話を続ける。
「みかくんもふくれてたよ」
「だよね、最近話せてなかったからなー」
二人で会話する中で知らない名前が聞こえたので、こっそり雲雀の腕をつつく。雲雀は松雪の方に耳だけ傾ける。
「みかくんって誰?」
きっと組織の人間だろうがここで名前が出るということは、中心人物なんだろう。
「幹部の一人だぜ」
予想通りの言葉にやっぱりと松雪は納得する。雲雀は言葉を続ける。
「ついでにいうとこのクラス」
「えっ」
その回答は予想外。確かに、もう一人このクラスに幹部がいると言っていたが、まさかのここでヒントがきた。“みか“なんて名前のクラスメイトいただろうか。君付けだし男子だろうが女子の方が多いとされる名前のため、女子の可能性も考えられる。悩ましげに考えていると、雲雀はまだ言葉を続ける。
「あいつがふくれてるようには見えなかったけどな」
白も悠も全部聞こえていたようで、二人で顔を見合わせる。
「分かりやすいし」
「顔に書いてあるよね」
そんな二人の様子に雲雀はため息をつく。
「俺も関係長いはずなんだけど、お前ら別格だよな」
「当たり前だし」
何故か胸を張る悠に白が苦笑いを浮かべる。別に誇ることでは無い、若干恥ずかしいまである。
「雲雀!僕ら行くからまたし!」
悠は全く松雪を見ていない、白は申し訳なさそうな顔をしながら二人に挨拶して悠と一緒に教室を出る。
「悠くん、松雪くんはやっぱ受けつけない?」
白に聞かれた悠はえー、と嫌そうな顔をする。
「受け付ける受けつけない以前に邪魔だし」
悠はこてんと首を傾げる。
「いらなくない?」
悠の素朴な白への質問。その質問にどう答えればいいのか、若干白は悩む。
「…僕が巻き込んだ手間っていうのもあるけど、いらない、とは言えないかも」
悠は面白くなさそうに相槌を打つ。その変な空気を壊すように、悠がそれよりとステップを刻みながら白の前に行く。
「今日はデザートデイだから早く行くし!」
テンション高めに言う悠は白を引っ張りながら外に出る。悠と遊ぶ日は大体、カフェかお家かだ。高校生ならカラオケやゲーセン、ボーリングとかだろうにカフェなんて洒落てる。
カフェなんて大体女の子かカップルしかいないため、気恥しさが最初の頃はあったが最近はもう慣れてきたし悠なんて最初っから1ミリも気にしていない。
今日ももはや常連と言える程通うようになったカフェに引っ張られる。人数を聞かれる前に、席に案内される程度には常連客だ。ひっそりとしていて静かなこの店が白はとても気に行っていた。
席につくと、注文を聞いてくる店員にいつも通りのものを注文する。
メモも取らずに注文を受けて帰る店員は最初から分かっていたようだ。
「いい加減、いつもので通じるようになってきたんじゃないしかー?」
「僕もそう思う」
たまにいつもと違うものが食べたくなるが大体は同じものだ。自分へのご褒美にもしているスイーツはここが一番絶品だ。
しばらく二人で談笑していると、注文した商品が運ばれてきた。商品は、それぞれ自分のだと名乗らずとも目の前に置かれる。ごゆっくりどうぞ、と静かに告げた店員の後ろ姿を見たあとに自分の頼んだ商品を見る。
いつ見ても実に美味しそうで、目がキラキラしてしまう。
「つー、目キラキラだし」
白を見ながら優しい笑顔をする悠の前には、抹茶ぜんざいとコーヒー、僕の前にはバナナパンケーキにミルクティーだ。
そう、聞いて分かる通り別に悠は甘いものが特段好きという訳ではないのだ。どちらかというと苦手に入るはずなのに、こうやってカフェを提案してくれるのは白が甘いものが好きだからという理由だ。白とて、悪いと感じ他のお店を提案したがスイーツ以外もあるしぜんざい美味しいし、と気にするなとばかりに返答し、白がここのパンケーキを好きと知ってから定期的に誘ってくれる。自分が女ならば絶対堕ちていた、と白は語る。
「ん〜、めちゃウマだぁ」
何回食べても変わらない美味しいパンケーキに白はうっとりする。そんな白を見ながら悠もぜんざいを口に運ぶ。
「つーはさ、いつまでアイツ育てるつもりなんし」
アイツとは松雪のことだろう、悠は食べながらさりげなく白に聞いてきた。白は一瞬止まるが、すぐひなんでもないようにパンケーキを頬張る。
「え〜」
もぐもぐしながら、白は考える。悠はマイペースにパクパクぜんざいを食べる。白がパンケーキを飲み込むと同時に、口を開く。
「あの子がやめたいって言わない限り育てるつもりだよ。一回ちゃんと見てあげてよ」
白も悠を見ずに、パンケーキを切りながら答える。
「ふーん、白も気に入ってる訳じゃないんし、ね」
思いがけない言葉に白はえっ、と顔を上げ悠を見る。
「まぁ、でもとりあえず白がそういうならちょっと様子見してみるし」
悠は白を気にせず、話を進める。
「僕としては嫌いだし邪魔だけど、本人知らないしー」
どういうことか、質問するのを遮るように悠は一人で決めていく。
「第三修練所だったしー?」
「えっ、あ、うん。日水休みで大体そこいる。」
りょーかい、と悠はぜんざいを食べ終わる。
「つーはよくそんな甘々食べれるしね」
「見た目から行くと悠の方が食べそうなのにね」
「つーは、窓辺で紅茶飲んでそうだし」
「何、そのイメージ」
悠と白は二人で顔を見合わせてクスクス笑う。こうなったら悠は言うつもりはないだろうが、先程の言葉が白の頭に強く残っていた。




