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3 師匠

夜が明け、朝が来た。学生は学校へ行く時間である。


白は通学し、一緒に登校した子らと別れると松雪のことを考える。昨日人生で中々経験しないだろうことを経験したのだ、体調を崩して休んでるかもしれない、いやもしかしたら夢だと勘違いしていつも通りなのかもしれない。そんなことを考えながら歩いているといつの間にか教室の前であった。


ガラッとドアを開けると友人達が挨拶をしてくる。白は挨拶を返しながらチラッと松雪の席を見た。彼はそこに座っていて目が合うと大袈裟に肩が跳ね、目を逸らした。そんな様子に思わずクスッと笑ってしまう、なんて分かりやすい子なのだろうか。


いつも喋っている友人達をすり抜けて、松雪の席へと向かう。明らかに体を固まらせた松雪の正面の席に座り後ろを向く。入学してまだ間もないため、いつも関わりがない二人が喋ろうとしていても何も不思議ではない。


「分かりやすぎだよ、松雪くん」


「俺の願いが生み出した夢だと思った」


落ち着かない様子の松雪に白は悪戯っ子のような笑みを見せた。


「それって僕と仲良くなれたこと?」


なんてね。と笑うと


「それもある」


なんて松雪がいうもんだから白はキョトンとしてしまった。素直なやつだ。彼の性分は素直で正義感が強いやつなのかもな、と彼を見ていて白は思った。


時計を見ると朝のHRがもうそろそろ始まる時間であった。


「松雪くん、今日はお昼ご飯二人で食べよっか。屋上で待ってるから」


「お、屋上?」


屋上は普段禁止されている場所だ、そう簡単には入れない。ましてやまだ入学して数日である新入生が、


まぁそんなの問題ではない。何なら人が来ないので好都合である。


まだ戸惑っている松雪を置いて白は席へと戻った。





昼の時間となると松雪が恐る恐る先生に見つからないよう、屋上に続く階段へ向かった。あの後白は一度も松雪に話かけなかった。自分から話かけてもいいのか分からない松雪は、自分から話かけることも出来なかった。なので朝ぶりの会話となる。


静かにドアを開けると日陰になっている場所で白が座っており、目が合うとこいこいと手招きをした。


松雪は大人しく隣に座る。白は松雪を気にせず、手を合わせお弁当を開いた。マネして松雪も自分の弁当を開く。白のお弁当が思った以上に小さく思わず小さいと声にでる。その声をキチンと聞き取った白はムッとした顔をして松雪を見る。


「これで足りるからいいの」


少し腹が立ったがそのまま白が松雪に何かを投げる。


慌てて落とさないように受け取った松雪は、キャッチしたものをみる。


「なにこれ…?」


見てみれば通信端末のようなものであった。


「僕らの組織が開発した通信端末。簡単にハッキングされないから安心安全。僕らはドーベルって呼んでる。」


「なんで?」


「なんでって…」


白は箸を加えて考えると口を開いた。


「犬って好き?」


「まぁ、普通かな」


なんでそんな事を聞くんだ?と松雪は首を傾げた。


「警察犬、軍用犬のドーベルマンって知ってる?あの子達は警戒・忠誠・任務遂行の象徴なんだ。だからその意味を込めて」


意味が分かったような分からないような。曖昧ながらも松雪は頷いた。


「俺に渡して良かったの?」


「今日から訓練も始まるし、あるにこしたことはないでしょ」


食べながらさもないことを言うように言う白に、ありがとうと通信端末改めドーベルをギュッと握った。


「そうだよね。今日から訓練も始まるし……訓練?!」


白の言葉を繰り返し、そして可笑しいな事に気がついた。


「いや俺聞いてないけど、俺にも予定というものが」


そんな松雪の言葉に白は真剣な表情で松雪を見る。


「予定が入ってないんだから強制だよ。これは遊びじゃなくて、仕事なんだから」


仕事と言われハッとした。どこかまだ気持ちが浮ついていたようだ。


「そうだよね。ごめん白くん」


「分かればいいんだよ」


気にしていないというように白は、パクッとご飯を食べる。


「今日は君の師匠を紹介して上げるよ」


「えっ、大丈夫?俺結構歓迎されてない感じだったけど」


「1から100まで知ってる子だし、君も知ってるんじゃないかな」


「えっ?」






「よろしくよ!」


「君は」


元気よい挨拶をするのは幹部組からおバカと呼ばれていた、松雪からすれば白が攻撃してこようとした時止めてくれた人物であった。


「俺、新田雲雀!一応松雪と同じ6組!」


元気良い彼は初手から呼び捨てで呼んできた。同い年ではあるし不自然ではないが、こうグイッと距離を縮められると、少し引き気味になってしまう。


「同じクラス…」


そう言われればいた気がする。今日は白のことで頭がいっぱいであったし、助けられた時は同様して気が付かなかったが、元気よい彼は確かに教室でよく白と一緒にいた。ようやく思い出した。


「同じクラスにそんなに組織の人いるんだ」


そう松雪がいうとひばりはキョトンとして白を見る。


「白、話してないの?」


そうひばりに言われると、白はバツが悪そうに頭を搔く。


「あー、気を張ると思って話してなかったけど、僕らの学校にはボス含め幹部組と合計30人くらい部下が入学してる」


「えっ?!」


「なんなら僕らのクラスにもう一人幹部いる」


「えっ?!」


先程から驚くことしかできてない。松雪は必死に昨日の幹部達の顔を思い出すが、自分のクラスにはいなかった気がする。


「昨日いた3人じゃないよ、真面目な眼鏡が一人」


白は今日一緒に登校出来なかった真面目眼鏡を思い浮かべる。今日は委員会があるとか言って、先に行ってしまったため別で登校したのだ。


ひばりはそんな白をみてニヤァとする。


「こいつら幹部組めっちゃ仲良いの、クラス操作は流石にしなかったから別々のクラスになったんだけど、それでも運命か二人一組のペアになってんの。しかも相棒組じゃないってのが面白い」


また松雪にとって新しい単語が出てきた。


「相棒組?」


ありゃ?と雲雀は首を傾げる


「全然話してないじゃん」


「一度に話す訳にも行かないでしょ」


そんな雲雀に白はため息をつく、全く何も考えずにペラペラ喋るんだから


「僕らにもそれぞれ相棒がいるんだよ。またそいつは紹介するね」


面倒臭い子だけど、とは言わなかった。白が時計を見ると随分と話し込んでしまっていた。今日の予定が潰れてしまう。改めて白は松雪をみる。


「さて、昨日は目隠ししたけど、今日から早速アジトに入る許可が出た。」


松雪が途端に目を輝かせる。


「アジト…!!」


「と言っても今日行くのは、アジトじゃないんだけどね」


期待させといて、そんなことをいう白に膝から崩れ落ちそうになる。


「アジトじゃないの…?」


「今日は第三修練場。」


「だいさんしゅうれんじょう」


子供みたいに繰り返す松雪にそう、と白は肯定する。


「地下にも場は二つあるんだけど、地下で暴れると地上に影響がでる恐れがあるから、地上にも修練場が二つあるの。」


「建物になってるから見られる心配はないし、防音になってるから余っ程聞こえもしない。外からの認識は、どっかの企業が所持してるグラウンド。ほんっとよくできてらあ」


雲雀が他人事のように言う。


「今日は貸切ってるから、行こ」


貸切だなんて、どっかの遊園地に行くみたいである。行く先は修練場で鍛えられるだけなので、松雪は全くワクワクしないが


三人で少し歩くと、大きめの建物が見えてきた。松雪も見たことがある建物であった、気にしたことはなかったが、まさか裏組織の建物だったなんて


わぁと見ている松雪を気にせず、白は鍵で入口の扉を開ける。続く通路は普通のようだが、奥に厳重な鉄の扉があった。この通路も実は普通ではなく、許可されたもの以外が入ると侵入センサが発動して、悪意ありだと判断されるとレーダーが打たれるシステムになっている。まだそのシステムが活用されたことは無いが、今後も活用されないに越したことはない。


白はドーベルで厳重なドアにアクセスすると、扉の右にあった液晶パネルをタッチした。指紋を認識すると、ようやく扉が開く。


扉の先は、だだっ広い空間が広がっていた。野球場くらいの広さで、地面は土になっている。地面にはトラックが引かれており、そのトラックは走り込み練習のためであることが分かる。天井は特殊ガラスになっており、外からの日差しは入れるが外からは見えない使用となっている。


最近は地下の修練場ばかり行っていたので、白も実は久しぶりに来た。この修練場はその昔、組織全員で息抜きがてら大運動会をやったのがいい思い出だ。


さて、と感動してる松雪を白は見る。


「そんな服装でどうやって鍛えるんだい?早く着替えておいでよ」


松雪の服装といえば制服である


「着替えると言われても」


「こっち!」


「えっ」


何に着替えればいいのかと戸惑う、松雪を雲雀が更衣室へ連れていってくれた。その内組織指定ジャージで出てくることだろう。白はそんな二人を見送ると、ベンチに一人腰かけた。ちなみに白の服装は制服のままである。理由はお察しの通り


いつもはアジトにいるか、任務か、地下での修練場で相棒と鍛錬かなので、こんなにものんびりしながら、暖かい日差しに当たっているなんて滅多にない事だ。絶対に幹部の誰かとは関わる毎日だったので、なんだか新鮮である。暖かい日差しに眠くなりそうになりながらも、白は日向ぼっこを続ける。


いつの間にか雲雀と松雪は戻っており、雲雀が元気よく外周を走って、その後を松雪が必死に走って追いかけていた。今日の訓練は雲雀におまかせした、バカなやつだが常識はあるので死なせたりはしないだろう。


なんだかこの走り込みは昔を思い出す。その昔、それこそこの修練場が出来たばっかの頃は体力作りが多かった。体力がなく、直ぐにへとへとになる自分を相棒がよくおんぶしてくれた物だ。意味が無い!と怒る声を聞きながら二人で笑っていた。今でも走るのは嫌いだが、あの記憶は悪い思い出じゃない。


どれくらい経っただろうか、昨日イレギュラーな自体が起こったせいで、寝れなかった白はうたた寝してしまっていた。そんな白に近づいてくる一つの気配で白は目を覚ました。


「白、走り込み終わったー!」


元気よく言う雲雀の傍に松雪が見えないので辺りを見渡すと、松雪が離れたところで大の字になって倒れていた。


想定していた姿に白はスポーツドリンクを持って立ち上がる。


「おつかれ、松雪くん生きてる?」


「生きてる…自分の体力の無さをここまで恨んだことはないよ」


死んだかのように倒れてる松雪は、スポーツドリンクを貰うとがぶがぶと飲む。


「飲み干した所だったんだ!生き返る!ありがとう」


自分の空のペットボトルの横に貰ったスポーツドリンクを置くと、生き返っているようには見えないぐったりとした様子で、松雪が感謝を述べた。


「それはいいけど、何周走らされたの?」


「分かんない……途中途中休憩挟みながらだったけど7周と半分…くらい?」


ここのトラックは一周、400mになっている。おそらく休憩を入れると30分以上は走っていただろう。そんなにも気が付かないだなんて、どれほどうたた寝していたのだろうか。


「陸上部にもでも入った気分だよ」


「やっぱ、最初は体力作りっしょ」


一方全く疲れた様子のない雲雀は、根性が足りないな、というような顔をしながら近づいてきた。


「少し休憩したら、次は武器をみつけんぞ!」


「武器?!」


能力者以外はみんな何らかの武器を得意としているし、能力者でも自分の武器を持っている人間は少なくない。現に白も自分の武器がある。


「武器なしでどうやって戦うんだよ。」


「避けを徹底的に指導してもいいけど、囮役専門じゃ嫌でしょ」


雲雀に続いて、白がいうと松雪は勢いよく何回も頷いた。


「色々用意したから、一回色々触ってみよ!」


雲雀は元気よくいうと、キャスター付きの作業台のようなものに沢山の武器を乗っけて持ってきた。


「じゃん!」


「凄い量」


銃に刀に小刀、ナイフ、斧にハンマーに弓。何故か杖に手裏剣、まきびし、ヌンチャク、メリケンサックに手榴弾。などなど他にも見たことがない武器までたくさんある


「ヘンテコな武器を得意としてる人もいるんだけど、今回は普通のものを揃えてみた!」


「能力を利用して使える武器にしてる人も多いからね」


松雪はこれで普通なのかと武器をみて、思わず思ってしまう。


武器を戸惑いながら見る松雪が最初にどれを触るのかと、白がじっと見ていると恐る恐る銃を持った。


「ゲームでは撃ったことあるから、これはリボルバー?」


「そうだよ。」


白は光で少し遠くに大きな壁を造る。その壁に射撃の的の紙が光の矢によって刺さる。


「あそこに撃ってみて、それくらいなら防げるから」


「防げちゃうの?!白くんの能力なんでもありじゃない?」


「白の能力は一番って程、汎用性高いぞ」


白は少し照れながら射撃用のイヤーマフを渡し、松雪のリボルバーのセーフティを解除する。初心者の銃程怖いものはない、流れ弾を注意するため雲雀は少し離れる。


松雪はゲームの見よう見まねで銃を構えると、思いきってレバーを引いた。


大きな銃声が響く、狙ったところには全く弾丸は届かず全く違う変なところに銃弾がめり込む。


松雪は肩が痛く、身体がビリビリと震え、耳がキーンとした。


「これ、無理だ」


「断念早ーい」


そのまま松雪は色んな武器を触り始めた。次は同じ遠距離武器の弓、弓は弓矢が的まで届かなかった。次にハンマー、重くて危なかった。そしてヌンチャク、手に当たりそうで怖かった。


次に


「これは…」


松雪が手に取ろうとして、固まったのはサーベル。


「かっこいい」


手に取ると鞘から抜き一度、刀を振った。


「お、」


「様になってるね」


二人が絶賛するその松雪姿は、実に様になっていてピッタリと言えた。


「…これでいく」


「本当にそれでいくの?」


最後の確認のように松雪に確認すると、力強く頷いた。


「なんかしっくりきた」


「これがこれからの君の相棒だ」


「俺、刀は専門じゃないけど、師匠として頑張るぞー!」


やる気に満ち溢れてる雲雀に、白はでもと雲雀を見る。


「燕の方が、刀は専門じゃない?レイピアだし」


白に指摘された雲雀はでも、いや、う、と言葉を漏らす。


「俺が一度師匠に選ばれたんだから、最後までやりたい」


少ししょぼくれた雲雀の頭を白が撫でる。


「そうだよね。ごめん、よろしくひばくん」


了承を得られると、雲雀は途端に元気になり、まずは素振りだー!と拳を挙げた。


この様子の雲雀になら任せても今後安心だ。二人を見ながら白はまたベンチに腰掛けた。


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