第16話 同じ派閥に所属します
ユリウス・バルトロメオとその取り巻き達の意識を沈めた後、俺達は闘技場を後にし在籍する教室へとむかっていた。
「俺が休学中の間何があったんだ? ユーリ。君程の学園での実力者がバルトロメオの様な男にあんな態度を取らせるとは」
「それは……」
「俺から説明してやるぜ。レイン」
「私も! ユーリからだと説明しづらいだろしね」
「セイラとアルスト。付いてきてたのか?」
近くで俺達の事を静観していた2人も同じタイミングで闘技場を後にしていたみたいだ。
そういえばこの2人はユーリとはかなり仲が良く、アレイス学園に幾つか存在する派閥も一緒だった記憶がある。
「ユーリの派閥の仲間なんだから当たり前だろう。それよりも復学早朝から良くやるなぁ。レイン、全然。病床に伏せていたとは思えない魔法捌きだったぜ」
「ええ。あれでしばらくはバルトロメオ派閥も大人しくなるでしょうね」
「病床?……(あぁ、そういう理由でアレイス学園を休学していたんだったな。)それで? 何故、魔法も上手く使えない筈のバルトロメオがあんな状態だったんだ? それとシエル。他の生徒が注目してるからそろそろ俺の腕から手を離せ」
「……嫌です。罰ゲームです。さっきは私もユーリさんに対してやり過ぎましたが。レイン様も同じ位やり過ぎです。なので教室に辿り着くまでこうしてレイン様には辱しめを受けてもらいます」
シエルの奴。ユーリの件について納得はしている様だが。俺に対してはやり返したい気持ちもあるな。
「へー、その娘がレインの新しい恋人かい? 背もスラッとして美人系って感じだな。俺はアルスト・ホーエンハイム。レインの友達だよろしくな。レインの嫁さん」
「(この娘どこかで見たことがあるのよね) 私はレイラ・ホーエンハイムよ。アルストとは実の兄妹なの。よろしくね」
「……シエルです。アルストさんにレイラさんですね。宜しくお願い致します……御二人は《ホーエンハイム》の……魔法貴族の家系なのですね」
「あぁ! スゲーだろう? こう見えてもエリート家系なんだぜ。俺達は」
「何、自慢しているのよ。アルストは……私達はたまたま運良く《ホーエンハイム》に産まれただけでしょう」
メルト家は魔法剣士としての貴族で。ホーエンハイム家は魔法研究者を多く輩出してきた貴族だ。どちらの家系も元四大貴族アッシュクラフト家とは懇意の仲にあったと父さんからは聞かされていたが……
「まさか。バルトロメオはそれを妬んでユーリにあんな態度を取っていたのか?」
「おっ! 流石、感が良いな。今日から復帰したうちの最大戦力さんは。半年前にないきなりバルトロメオがユーリに決闘を挑んできて勝ちやがったんだ。それからはバルトロメオは調子に乗り始めてな」
「そうね。今日からやり返せると思うと嬉しくなっちゃうわ」
「……は? 今日から復帰? 何の話だ」
「なんだよ。ユーリから聞いてたんじゃないのか? レイン。お前、復学と同時にうちの派閥メルト派閥に入ったんだろう? いやー、助かったぜ。ここ数ヶ月うちの派閥に所属したいる生徒がいきなり力を付けたバルトロメオ派閥の奴等に襲われて大変だったからな」
「本当よね。今じゃあ残っているのが私達3人だけなんて笑い話にも程があるわ」
「ちょっと待て。なぜ、俺が既にユーリの派閥に組み込まれているんだ? 俺はそんな話ユーリから一度も聞いていないんだが?」
「……ユーリさん。ぜひ私も貴女の派閥に参加させて下さい。旦那様と共に」
「最後の旦那様って所に引っ掛かりがありますが。シエルさんがメルト派閥に所属したくれるのは心強いです。ではこちらの入会申請書にサインして下さい。ついでにレインの分も」
「……はい。喜んで! (カキカキ)……」
「あっ! こら! 何をしているシエル。申請書の類いをちゃんと読まないで名前だけ貸すなど。軽率な行動過ぎるぞ」
「…………そうでした。お師匠様からも何かを始める際はちゃんと下準備と調査を怠るなと何度も言われておりましたわ。(カキカキ)」
「名前ありがとうございます! これでレインとシエルさんは私達メルト派閥の一員ですね」
「よっしゃー! これでまともにやり合える戦力ゲットだぜっ!」
「今日の放課後。バルトロメオ派閥に抱腹に行くからよろしくね」
「待て! 2人共。その申請書をどこに持って行くつもりだ。明らかに魔法契約で縛りがある申請書だよな? その紙は……くそ。逃げられた」
アルストとレイラはそう言うと自分のクラスがある教室へと逃げる様に入って行った。
「では私達も教室へと入りましょう。朝の目的も果たせましたしね」
ユーリはユーリで笑顔で教室の中へと入って行った。
「まさか。復学した俺に絡んで来た理由は、最初から俺をユーリの派閥に組み込む為だったのか?」
「……レイン様。これでまた一緒に居られる時間が出来ましたね。私は幸せですわ」
シオンはそう言って俺へと抱き付くのだった。