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第15話 私はレイン様のだけの妻です

 30年以上前の話。テレンシア王国の四大貴族の一角であるアッシュクラフト家の当主シュトラ・アッシュクラフトが忽然とこの世から姿を消した。


 暗殺? 病死? 逃亡? 等々当時は様々な憶測が飛び交ったが。


 歴代最高とうたわれたシュトラ・アッシュクラフトの当主不在により。


 アッシュクラフト家を良く思わない貴族達からの、ありもしない冤罪えんざいをかけられ一族は衰退及び貴族階級から追放され四大貴族としての立場も失った。


 そして、そのありもしない冤罪えんざいをでっち上げたのが。現在、テレンシア王国の東方たる旧アッシュクラフト領を領地を管轄し。


 テレンシアの貴族社会でも急速に力をつけ始めている貴族、バルトロメオ家だ。そして……



  ───ユリウス・バルトロメオ。そのバルトロメオ家の嫡男が何故こんな朝早く、闘技場などに現れたんだ?


 そして、俺のシエルに…………シエルに何故、いきなりフィアンセなどと言ったんだ?



「編入生! お前。ユリウス様になんて事を」

「ユリウス様直々のお誘いをお断りするなんて。馬鹿なのかしら?」

「可愛いからって何でも許されると思うなよ!」


 バルトロメオの取り巻き達だろうか? カルク地帯に生息するアホウトーリーの群れの様にうるさく騒ぎ立てている。


「ハハ……ハハハハッ!! 見た目に反してなんと気が強い女性なのだな。編入生」


 いや、シエルは今、さっきまで戦闘をしていて終わったと同時に俺に注意されて気が立っているだけだと思うがな。


「…………(ジーッ)」


 シエルは何も応えなかった。彼女は初めて会話をする人物を観察する所から始める癖がある。


 その人物が自分と波長が合うかとか。話していて大丈夫かなどを探るだとか昔、言っていたな。


 何でも最近はシンシアの様な自分から距離を詰めて来てくるタイプにイタズラをするのにハマっているとかも言っていたが。


「貴様! ユリウス様。貴様をお気に入りしたと言っているのに何故、何も反応しないんいんだ?」

「失礼極まりない娘ね! どこの家の娘かしら? 家の程度がしれるわね」


 シエルが何も発しないのを良い事に取り巻き達の口調がさっきよりもヒートアップしている。


「ほおう。静かにしていると尚更、細工都市のドールの様に美しのだな。編入生……たしか名前はシエルだったか? テレンシア王国の現聖女と同じ名前とはますます気に入ったぞ」


 いや目の前に居るのがその本当になのだがな。この国にはまだ隣国のよあな写像技術があえて発展させられていない。


 その為、情報伝達で使われる新聞や雑誌なども魔法絵で描かれる事が多く。


 エリシア聖教の現聖女の姿などを描いた絵なども描かれるが。かなり外見を変えて幼く描かれているのだとか。


「貴族のユリウス・バルトロメオが聖女であるシエルさんの顔を知らない? そんな事があり得るのですか?」

「良くある事だ。側近などにテレンシア王国や隣国の貴重な情報を集めさせたりはするが。ろくに目を通していないとダリアが……ぐっ!」


ギュッ!


 ユーリに凄い力で手の甲をつねられた。


「ダリアって誰ですか? ていうか。学園に戻って来たのなら。今までどこで何をしていたか話してもらいますからね。それとシエルさんとの新婚関係もッ!」


「な、何をいきなり怒っている? シエルとはただ俺の実家に一緒に住んでいるだけだと決闘場に来る前に説明しただろう」


「じゃあ。ダリアって誰ですか? それにレインの身体からシエルさんとは別の女の子の匂いがするんですが?」


「こ、これはペット達だ。シエルが女の子達をペット化させて飼っているだけだ」


「……女の子達をペット? 最低です! 成敗!」


「ぐはぁ?!」


 なんて事をユーリとやっている間にもシエルとバルトロメオの会話は続いていた。


「……いいえ勝手に気に入られても困りますし。貴方と会話をする気もありません。不愉快極まりないのでそれ以上近付かないで下さい」


「その毒舌と強気の姿勢と目。ますます良いな。俺に従順になるまで屈服させたくなるぞ。そして、学園でも上位のユーリ・メルトをまるで寄せ付けい強さも。欲しい! 君が欲しいぞ。シエル」


「……私は貴方の物ではありません。身も心もレイン様だけの妻です!」


「僕に気に入られた娘達は皆、最初はそう言うのさ。だが数日後には恍惚に満ちた顔で僕にねだる様になるのさ〖ユリウス様の寵愛を下さい〗ってね……お前達。彼女を拘束しろ。例の場所に連れていくぞ」


「「「はい。ユリウス様」」」


 取り巻きがシエルを取り囲み始めた。


 それを見たシエルは魔法を発動し様としたが途中で止めてしまった。


 おそらくさっきの俺の忠告が頭をよぎってしまい、魔法を使うのを躊躇ためらったのだろう。


 しかしバルトロメオの奴。シエルがテレンシア王国の本物の聖女だと本気で認識していないのか?


 いくらこの国では《勇者》《聖女》《付与師》の人物を秘匿にする習わしがあるからといって、あれ程の人数の情報屋を動かしていればシエルの存在くらい分かると思うんだが。


「ちょっと! レイン。何をボーッとしているんですか? シエルさんが危ないんですよ! 助けないと」


「……あぁ、分かっている。だが安心してくれ。あの程度の人数なら一瞬で鎮圧出来るからな」



「へへへ。たしかにこれは可愛いな。ユリウス様が飽きたら今度は俺達が可愛がってやるよ」

「髪も綺麗よね。嫉妬しちゃうわ」

「あの場所に行ったらそんな強気な顔はできないぞ。何たってあそこはユリウス様の趣味の部屋だからな」


「……力ある者はその力を正しく使わないといけないのです。それがお師匠様の教えであり。レイン様との約束で…」


「だがそれも時と場合による……こういういかにも悪という連中には特にな。『暴風テンペスト』!」


 闘技場に暴風雨が巻き起こり。ユリウスの側近達の真下へと降っていく。


「「「ギャアアア!!」」」


「何だ? どうしたんだ。君た……ぎがぁ?!」


「……レイン様? そんな! あんなか弱そうな方々に『暴風テンペスト』を使うなんて」


「加減はしたさ。久しぶりだな。ユリウス・バルトロメオ。よくも俺のシエ……シエルに手を出そうとしたな。覚悟しろ!」


「……レ、レイン様。そんなこんな皆さんがいる場所で愛しているだなんて。恥ずかしいです」

「いえ。レインはそんな事一言も言っていませんよ。シエル」


「……不登校児レイン・アッシュクラフト。落ちぶれた元貴族が現役貴族に魔法を放ったな! これがどういう事か分かっているのか?」


あぁ、分かっている。何も起こらないさ……そろそろ教室へ行く時間だからな。お前に構ってられないんだ。バルトロメオ。しばらく寝ていろ──『暴撃』」


「がぁ?!……レイン・アッシュクラフトが何故、これ程までの力を持って…い…る?」


 バルトロメオは弱々しい声でそう言うと静かに意識を失った。

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