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第12話 シエルさんとユーリさん 決闘です

「決闘だ! 決闘! 高等部一年首席のユーリ・メルトと編入生シエルの決闘だぁ!」

「さぁさぁ! どっちが勝つかかける方々はこちらに並んで並んで」


「私はユーリ首席に1000モラよ」「俺は編入生に800モラだ」「引き分けに10000モラー!」


 シエルとユーリと一緒に魔法闘技場に移動したが。闘技場周辺には生徒達の人集ひとだかりが出来ていた。


「……黒マントを着た人達がいっぱいです。大道芸人さん達でしょうか?」


「いや。違うぞ。シエル、あれはアレイス学園で決闘や集会をする時に被るマントだ。たしか名前は…」


「『黒耀のマント』です。ずっと学園に来ていなかったせいでそんな事まで忘れてしまったんですか? レイン。その様子では休学中は殆んど魔法の勉強はしていないようですね」


 ユーリは俺に向かって呆れ顔でそう告げた。


「……ムムム。ユーリさん! 貴女は失礼なお方です。レイン様はテレンシア王国の平和の為にこの一年間を必死に……ンムッ」


 俺はシエルの背後に忍び寄ると彼女の口を静かにふさいだ。


「そうそう。一年間テレンシア王国で平和にのんびりと過ごしていんだよな。シエル…(アホシエル。この一年間の魔竜討伐の旅の事はアレイス学園の生徒にはナイショにしているんだ。だからそんな大声で喋らないでくれ)」


「……んんんんんんんんんんんんん!!(畏まりました。旦那様。2人だけの秘密という事ですね)」


「な、何ですかいきなり。シエルさんの口を塞ぐなんて……新婚だからってこんな人の目がある場所でイチャイチャしないで頂けませんか!」


 ユーリはユーリでなぜか額に青筋を立てながら怒り始めた。くそ。この2人の行動や感情が全く読めん。


 こんな事なら相棒の剣士のトールに女性の扱いについてもっと教えてもらうんだったな。


「……はい。わたくしとレイン様は相思相愛です。今夜にでも同じベッドで添い寝を開始」

「しないけどな。つうか母さんの結界で君とシンシアは俺のベッドまで侵入出来ないだろう」

「……愛の力で全ては解決出来ます。それまでに私の愛は重いのです」


 シエルは自身の両手を握り締めると快晴の空に向かって祈り始めた。何かの懺悔ざんげでも始めるのだろうか? 


「クゥゥ!! そうやって自分達だけでイチャイチャするの控えていただけませんか! (全く! 久しぶりに登校してきたと思ったらなんでこんな可愛らしい人と居るんですかぁ!)」


「いや。だからイチャイチャなどしていないぞ」

「……フフフ。わたくしの勝利ですね。ではこれにて決闘は終了。行きましょう。レイン様」

「あ、あぁ。なんだ結局は決闘は無しになったのか?」


 シエルは俺の右腕に抱き付くとそのまま決闘場を立ち去ろうとした瞬間。


「始まってすらいませんよ! 何、決闘を無かった事にしようとしているんですか。逃がしませんよ。シエルさん」


「……流石、私のレイン様と同じ学年の首席さんです。抜け目がありません」


「シエル。君って見た目は大人しそうに見えるが。一部の人に対してはかなり計算高く腹黒な部分があるよな」


「……はい。レイン様。私はこれまで旅をしたパーティーメンバーの方々に対しては慈愛で接しますが。恋敵には容赦は致しません」


「そうか。良く分からないが頑張ってくれ」


「……はい。恋はパワーです。全力です! シュッシュッです!」


 何かのやる気に満ち溢れたシエルは両手を握り締めてシャドーボクシングを始めた。


 たしか最近、ワコークの国で流行ってるだったか。


「やる気があるのでしたら。早速、闘技遊戯アッシェンテを始めましょう!」


「……闘技遊戯? おままごとですか?」


「違います! アレイス学園の伝統闘技です! 付いて来て下さい。移動しながら説明します」



闘技遊戯アッシェンテ


 アレイス学園校長トルギス・トリストメギストスが考案した試合方式。


 ・対戦者同士が使える魔法は一種とする。

 ・相手を死に至らしめる行為及び辱しめる行為をした者は即刻敗者とする。

 ・試合開始後、不正行為が行われた場合は不正を働いた者を敗者とする。


 等々。闘技場のマジックボードには闘技遊戯アッシェンテについてのルールが書かれている。


 そして、いつの間にかシエルとユーリは、決闘場の中央に向き合いながら立っている。


「なぜかやる気に満ちたシエルに、俺と再会してからずっと機嫌が悪いユーリの闘いか」


「何? 復学早々にまたユーリと夫婦喧嘩してるわけ?」

「よう! 久しぶりだな。親友! 今までどこ行ってたんだ?」


「君達は……セイラとアルストか」



「以上が闘技遊戯アッシェンテの主要ルールです。何かわからないはありませんか?」


「……いいえ。実に人を尊重するトルギスさんらしいルールで分かりやかったです」


「トルギスさん? 貴女、私のお爺様を知っているのですか?」


「……はい。トルギスさんは私の魔法分野での先生でした」


「はい?……なんでテレンシア王国随一の魔法使いと言われるお爺様が貴女に魔法を教われるんですか? 普通はレインや私位の技量がなければ見向きもしませんのに」


「……はい。私はレイン様のお役に立つ為にいっぱいいっぱい努力しました。それを見ていたトルギスさんは私を気に入って……」


「沢山入る孫には見向きもせず。世界最高峰の魔法使いが聖女シエル・バレンタインに魔法を教える? そんな事あるわけありません……貴女の発言も行動も不愉快です。先程話した私がこの決闘で勝利した場合の件。覚えていますか?」


「……アレイス学園でのレイン様の隣を得るですか」


「はい。そして、貴女が私に勝てばお友達《配下》になりましょう」


「……はい。よろしくお願いいたします。では……」


「いきます!」


「「闘技遊戯アッシェンテ!!」」


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