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第10話 新妻シエルさんは近付きたい

「……お師匠様! 申し訳ありませんでした。わたくしのせいです。ですからこちょこちょはもう止めて下さい───夢……ですか?」


 目が覚めたら朝になっていました。


 いつの間にパジャマに着替えたのでしょうか? 


 記憶にありませんね。少し昨日の事を思い出してみましょ……


「……うぅ! 思い出そうとすると頭が痛くなります。何ででしょうか? 昨日はたしか変なエルフさんと闘っていた様な気がします」


「誰が変なエルフよ! 私はシンシア。エルフの国の王族よ!」


 バタンっと私の部屋の扉が勢い良く開いたと思ったら。変なエルフさんがツギバキだらけの如何いかがわしい服装で私の部屋に飛び込んで来ました。


「……変なエルフ……シンシアさん。何なのですか。その如何わしい服装はアッシュクラフト家の風紀が乱れるので鎧でも着ていて下さい」


「アンタ。私の事また変なエルフって言ったわね。それにこれは如何わしい服装じゃなくてエルフ族に伝わる寝巻きよ。寝巻きよ」


 生地面積が極端に少ない服装が寝巻きですか? 上着は胸の部分しか隠されておらず。


 下はショートパンツの様な薄い短パンが寝巻きですか? 


 エルフ族の皆さんはどんなファッションモンスターなのでしょうか?


「シエル・バレンタイン。アンタ、今、私のこの格好の事、心の中で凄い馬鹿にしてるでしょう? 正直に言って見なさい」


「……いえ。とても素敵な如何わしい服だと思いいます。それと私の事はシエルとお呼び下さい。私は変なエルフさんとお呼びしますので」


「ふざけんじゃないわよ! 私の事も名前で呼びなさいよ。シンシア! シンシアよ。私の名前は」


「……畏まりました。ジンジアさん」


「シンシアよ!」


 何故でしょうか? 私はいつも人をからかったりしないのですが、シンシアさんを見ているとからかわずにはいられないのです。


 シンシアさんの反応が良すぎるからでしょうか?


「………(ウズウズ)」


「なによ。その目は……それよりもシエル。昨日の夜はアンタのせいで酷い目に合ったんだから責任取りなさいよ」


「……責任? なんのでしょうか?」


「昨日の夜、アンタとバトって破壊尽くした。アッシュクラフト家の庭の修繕費よ。なんで私が全額負担なの? 何? 10億モラっ? 暴利にも程があるわよ」


「……アッシュクラフト家の庭園の木々はどれも珍しいモノばかりが植えられていますので、仕方ありません」


 ちなみに『モラ』はこのアルスト大陸の共通のお金の名称です。


「それで一緒に庭を破壊シエル・バレンタインにはお咎めなしなのよ」


「……私とレイン様はアリシアお師匠様公認の仲です。そして、新婚です。テレンシア王国の法律では夫婦の財産は共有されます」


「いや、待ちなさいよ。昨日、レインから聞いたけど。アンタが一方的に押しかけて来たんでしょう? レインに何の説明もしないで」


「……ですので私の借金は帳消しになるのです。それに私はちゃんと修繕費はアリシアお師匠様にお支払いするつもりですよ。魔竜討伐の報酬がありますので借金まみれのエルフさんとは違うのです」


 なぜでしょうか。このシンシアさんと言う方。凄くお話しやすいお方ですね。


 そのせいでしょうか? ついつい毒気のある言葉を言ってしまいます。聖女としてこれはいけませんね。


「ちょっと! 何を窓入ってくる日差し浴びながらボーッとしてんのよ。私の質問を全て無視してんじゃないわよ! アホ聖女! 」


「……アホではありません。これでもテレンシア王国から正規に認められて『聖女』を任されているのです。つまり現在、フローレンス国で行方不明になっているどこぞのエルフさんとは違うのです」


「つっ!……アンタ。私の事知ってたの?!」


「……いえ。当てずっぼです……(ブフゥ)」


 駄目です。笑ってはいけません。人をからかって遊ぶなんて聖女としてあってはいけない事です。


「アホ聖女。アンタ! 私で遊んでるでしょう? 馬鹿にしてんじゃないわよぉ!」


 いけませんね。これ以上シンシアさんを刺激すると昨夜の様に暴れてしまいます。


「……失礼しました。昨夜。レイン様が昔、エルフ族の王族の姫と懇意にしていたと言っていました。それでシンシアさんがその王族のお姫様と思っただけです。それがさっきの貴女のレイン様に助けられた時のお話で確信に変わりました」


「へー、アンタってボーッとしてる様に見えて色々考えてるのね。流石が大聖女アリシアの弟子って所ね……まぁ、良いわ。アンタとの話しも飽きちゃったし。私はこのままレインを起こしに行くから邪魔しないでよね。バイバイ~」


「……はい? そんなハレンチなお姿でレイン様を…起こしに行く?……レイン様の貞操が崩壊してしまいます」



ガチャッ!


「レーイン! おはよう~! 何時だっと思ってるのよ。起きなさ…キャア?! な、何よこの透明な板は?」


「……お待ちなさい。変態エルフさん。そんなハレンチな格好でわたくしのレイン様に近付かないで下さ……フヘ?! な、何ですか。この透明な板は?」


「あら? 何をなさっているのですか? お二人共。そこをどいで下さい。アリシアさんからレイン様を起こして来るように言われておりますので。失礼します」


 こ、この方はたしか夢魔のダリアさん? メイド服を着ていらっしゃるという事はアッシュクラフト家で働いているのですしょうか?


「キュルルルル!!(レイン。おはよなのだ)」

「ニャオーン!(起こしに来たニャア)」


「……ディアさんとスピンさんは」

「普通にこの透明な板にぶつからないで入れてる? 何でぇ?」


「おや? アリシアさんから聴きておりませんでしたか? レイン様によこしまな感情やイヤらしい感情を抱いているとレイン様の部屋へは出入り出来なくなされたのです」


「……へ?」「……は?」


「ですからレイン様に欲情しているとこの部屋には入れません」


「ちょっちょっと待ちなさいよ。ダリア。アンタって夢魔でしょう? 何で普通にレインの部屋に入れてんのよ!」

「……そ、そうです。私、聖女です。なのに邪な心認定されちゃってます」


「私はレイン様に対して主従の感情しかありません。それにディアさんはレイン様の幼馴染みとして接していますし、スピンさんは飼い主とペットの関係なので、レイン様とは健全な関係であると判断されたのでしょう。煩悩まみれの貴女方と違って」


「……わたくしがこのハレンチエルフさんと同じカテゴリーだなんて」

「私がこんな家事力ゼロのアホ聖女と一緒のカテゴリーなんて」


「ありません!」「ありえないわ!」


「「………」」


「……真似しないで下さい!」「真似しないでくれる?」


 このハレンチエルフさんはなぜ、私と同じタイミングで喋って来るんでしょうか?


「おや? お二人共。たったの数日でかなり親しくなられたのですね。息もピッタリですね」


「……親しくなんてなってません。この方は私からレイン様を奪おうとする泥棒エルフさんです」

「ハ、ハァ~? 泥棒はどっちよ。いきなり横から現れて新妻ですとか……この泥棒聖女!」


 ブチッ!っと私は怒りました。普段は絶対怒らない純粋無垢な私ですが怒ります。 


 もう容赦しません。ハレンチエルフさんを懲らしめます。


「……決闘です。『終焉ジ・エンド』」

「良いわ。どっちがレインに相応しいが決めましょう。『風月シルフィード』」


「お二人共何をなさってらっしゃるのですか! ここは家の中ですよ。そんな攻撃を放ったらレイン様のお部屋が吹き飛びます!」

「キュルルアア!(衝撃波じゃああ!)」

「ニャアアアアアアア!(レインが空中に吹き飛んだニャア)」


 なんてやり取りを変なエルフさんとしながら今日も1日が始まりました。


 そして、この決闘の数分後、アリシアお師匠様にお仕置き部屋へとシンシアさんと共に連行されたのでした。



「貴女達。また朝から何、暴れてるのよ!」


ペチンッ!

「……アリシアお師匠~様。ち、違うんです。これはハレンチエルフさんが……」

「そうよ。おばさん! これはアホ聖女がぁ」


「問答無用よ!」

ペチンッ!

「「ヒイィィ!!」」



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