かつては冥邪王だった
「さっきはがっかりさせて悪かったな、ゼラム。すぐに獣霊降臨だ!」
【うむ、承知した!】
金色の巨竜が現れ、ナファネスクの体と融合する。その獣霊を見たヴェラルドゥンガは少し驚いたような顔を見せた。
「今の金色の竜!? お主はゼラムファザードか?」
「何!? どうしてお前がゼラムを知ってるんだ?」
ナファネスクは、ヴェラルドゥンガが壊神竜の名を知っていることに驚愕した。
「フフフ、そうか。そういう事か」
ヴェラルドゥンガはいかにも楽しそうに笑い声を上げた。
「良いことを教えてやろう。汝がその魂に宿し獣霊はかつて我と冥邪天帝の座を争いし冥邪王なのだ!」
言っている意味がよく呑み込めなかった。それと同時に、冥邪が獣霊になれるのか、という素朴な疑問が湧いた。ヴェラルドゥンガはさらに話と続けた。
「我とそやつは冥邪天帝の座を争って、幾度も激闘を繰り返した間柄でな。その結果、最後に勝利を掴んだのがこの我よ。無様に敗北を喫し、獄淵界にすら居場所を失ったそやつの成れの果てが、今の哀れな姿というわけだ。それから数千年の間、ずっと無疆の獣気に持ち主を探し続け、虎視眈々と我の命を狙っていたとは。これが笑わずにいられるか!」
再びヴェラルドゥンガは高らかに大笑いした。
今の話は真実なのだろう。それなら、壊神竜があれだけ冥邪に執着し、敵対心を抱いていたことにも合点がいく。
「残念だったな、無疆の獣気を持つ者よ。その獣霊では到底我には勝てぬ。瞬く間に始末してくれるわ!」
鼻持ちならない物言いに、ナファネスクはむかっ腹が立った。
「好き勝手なことをほざいてくれるじゃねぇか! 俺とゼラムが組めば、向かうところ敵なしだってことを今から思い知らせてやるぜ!」
ゼラムファザードはありったけの獣気を一気に放出した。そのまま三対六枚の翼を勢いよく羽ばたかせて飛ぶと、重量感のある両刃鎗でヴェラルドゥンガに斬りかかる。だが、桁外れの妖気を溜めた二叉の槍に防がれた。
「なんと生ぬるい攻撃よ。それくらいで斃されるほど軟ではないわ!」
声高に雄叫びを上げると、ヴェラルドゥンガの下半身の野獣の口から溢れんばかりの妖気の光線を吐き出した。慌てて上空へ舞い上がる。




