決して消えぬ愛の力
下半身は鋭い爪を伸ばした六本足に太い尻尾が生えた巨大な怪物に変貌した。猛々しい二本の角が生えた顔は野獣のそれだ。
上半身は人間とほぼ同じ姿のままだったが、肩までしかなかった金髪は赤黒く変色して伸び続け、ふくよかな胸と背中を覆い隠した。口元からは二本の鋭い牙を覗かせている。頭からも四本の雄々しい長い角が生えていた。
右手には突然出現した――穂先が二叉に分かれた――長い槍を持っていた。
ふとナファネスクが贈った華麗な装飾の髪飾りが地面に転がり落ちた。それを気にした風もなく、ヴェラルドゥンガの前足が無残に踏み砕く。
巨大化し、姿を変えたヴェラルドゥンガからはカサレラの面影を感じることがほとんどなくなった。
「さて、無疆の獣気を持つ者よ、これ以上生き延びられるとは思わぬほうがいいぞ!」
ヴェラルドゥンガは二叉の槍の穂先に尋常ではない妖気を溜め込み、ナファネスク目がけて放った。
先ほどとは比べ物にならない強大な威力だ。それを、向こう見ずな少年は両手にハクニャを両手で抱いたまま紙一重で避けた。
激しい爆音が轟く中、ナファネスクは気絶したハクニャをそっとその場に寝かせた。
「ほう、顔つきが変わったな。やっと戦う気になったか?」
ヴェラルドゥンガが不遜な態度で問いかけてきた。
「ああ、今のあいつの言葉で俺にはまだやり残したことがあるって気付かされたんだ。それはカサレラをお前の呪縛から解き放ってやることだ!」
(まだ俺の戦いは終わってねぇ! あいつの魂を安らかに眠らせてやるまではこんなところでくたばるわけにはいかねぇんだ!)
向こう見ずな少年は片手で涙を拭きとった。その顔は何かを吹っ切ったように見えた。




