庭園にいたのは
(オルデンヴァルト、ハバムド、俺を恨むなら恨んでくれて構わない!)
「おい、一人逃げたぞ! 誰か捕まえろ!」
どこからか帝国兵の叫び声が聞こえてきた。
(待っていろ、カサレラ! 今すぐ助けに行くからな!)
ナファネスクは急ぎ足で階段を降りていった。ところが、階下にも帝国の警備兵たちが待ち構えていた。そう簡単に進ませてはくれないようだ。
「お前ら、そこをどきやがれ!」
剣術はエゼルベルクに嫌というほど叩き込まれた。敵が鍛錬を積み重ねた重装備の警備兵であっても、全く負ける気はしなかった。何しろ五大英雄神の直伝なのだから。
剣術の他にも棒術、弓術を含めてありとあらゆる武器の扱い方を習った。だから、剣以外の武器で戦うことになっても、互角以上に渡り合える自信があった。
現に、馴染みのない両刃鎗でさえも大した修練をすることもなく使いこなせているのがその証だ。
そんな中、戦いの場において最も扱う頻度の高い剣術の稽古はほぼ毎日のようにみっちりと修練させられた。まさに鬼のしごきだった。その結果、現在では《無敗の闘神》の異名を持つエゼルベルクを相手に、十本の手合わせで一本は取れるまでに成長した。
王家伝来の宝剣の切れ味も凄まじく、交える敵の剣を折ってしまうほどの威力があった。
頑丈な分厚い盾でさえいとも簡単に真っ二つに断ち切った。
立ちはだかる者全てを斬って斬って斬りまくるナファネスクの鬼気迫る猛者ぶりに、帝国の警備兵たちは次第に怖気づいていく。最後には命乞いをする者まで現れたが、容赦しなかった。
下手に逃がした場合、仲間を呼ばれる可能性があったからだ。そうなっては後々面倒だ。
多勢に無勢だった劣勢を見事に覆したナファネスクは、大して時間を労せずに帝国兵たちの一掃に成功した。しかも、ここに増援の帝国兵がやって来る気配もない。
ナファネスクはなりふり構わず駆け出した。すると、少し先に広大な庭園が見えた。
かつては華やかで美しかったはずの庭園は今や見る影もなかった。
滅亡させた国の居城だったせいもあるのか、美しく彩っていた花々は全て枯れ果て、木々は無造作になぎ倒されていた。
冥邪どもを従えて戦うバルドレイア帝国に支配された領土がどれほど悲惨な目に遭うのかを表しているようにも思えた。
その廃園と化した庭園に可憐な姿のままのカサレラは立っていた。ようやく再会を果たしたのだ。




