獣人族
並みの人間より格段に背が高く、逞しいほど屈強な肉体を戦士風の服装で覆っている。驚愕すべきは、彼ら全員が獣に似た厳つい顔をしていることだ。
「こいつら、獣人か!?」
ずっと農村で生きてきたナファネスクは半人半獣の獣人を見たことがなかった。
「そうです、ナファネスク様。彼らは《異空間転移の門》の守り人で、ナルーガ族という獣人族です」
何の所縁があるのか分からないが、オルデンヴァルトは彼らを知っているようだ。
(そういうのは最初に教えとけよな!)
口には出さなかったが、内心不満は燻ったままだ。
「オルデンヴァルト、少しばかり会わないうちに随分と老けちまったみてぇだな! 一目じゃ分からなかったぜ!」
先ほどの声の主が近寄って来た。話し方は無礼だが、勇猛さを感じさせる獣人だ。
「お前は相変わらずだな、ハバムド。もう二百歳にはなったのか?」
「おうよ! これで、やっと俺様も大人の仲間入りを果たしたぜ!」
ハバムドは自信満々に胸を張る。
「懐かしの再会の途中で悪いんだけどよ。俺らは今先を急いでるんだ」
ナファネスクはもどかしさを剥き出しにして二人の会話に割って入る。装置がある場所さえ分かれば、一人で向かっているところだ。
「これは申し訳ありません。今は思い出話を語っている場合ではなかったですね。さぁ、早く《異空間転移の門》に向かいましょう!」
オルデンヴァルトも事態の重要性を認識し直したようだ。
「ちょっと待てよ! 何なんだ、この憎たらしいガキは?」
急にハバムドが不機嫌さを露骨に出した。
「控えろ、ハバムド! この方は滅亡したアルメスト王国の王子、ナファネスク様だ!」
「おい、嘘だろ!? この生意気なガキがバルドレイア帝国から逃げのびた王子だとでも言うのかよ!?」
粗暴な獣人は面食らった顔をする。
「生意気だけ余計だ! ほら、早く行くぞ!」
再び口を挟んだ。これ以上は我慢の限界だった。
「ナファネスク様、もう少しだけお待ちを! まずは守り人である族長に会って、装置の使用許可をもらう必要があります」
「使用許可だと。そんなかったるいことなんか省いちまえ! 今の俺らに一秒たりとも余分な時間はないんだぞ!」
危機感から口調が荒々しくなる自分を感じた。今この瞬間にもカサレラの身に危険が及んでいるかもしれないのだ。
「それは十二分に分かっています。ただ、《異空間転移の門》は族長しか知らない秘密の暗号を教えてもらわないと動かせないんです」
「チッ、面倒なことだな! なるべく早く済ませろよな!」
ナファネスクはあからさまに舌打ちをした。刻一刻と過ぎていく一分一秒の大切さを本当に分かっているのか、疑問に思わずにはいられなかった。
「分かりました。ドルガガという者が族長をしてまして。おそらく、奥の長老たちのところにでもいるのでしょう」
「ドルガガならとっくに死んだぜ!」
ハバムドのその一言が、二人の動きを強制的に引き止めた。




