突然の強襲
時刻は後もう少しで正午に差しかかろうとしていた。朝ご飯を食べ終えた二人はしゃにむに目的地に向かっていた。
日の光が眩く照りつける中、ナファネスクは一角獣のホーテンショーを風を切る速さで疾駆させていた。
ホーテンショーにすれば、全速力には程遠い。後ろから追いかけてくるオルデンヴァルトに合わせている感じだ。オルデンヴァルトも今は一頭の馬に跨っていた。
カサレラが連れ去られた今、荷馬車でゆったりと行くわけにはいかない。そこで、四頭の中から一番威勢のいい馬以外を野に解き放ち、万一に備えて用意しておいた鐙をつけて走らせている。
二人が進む地面にはずっと見慣れていた土の露出した道はなかった。この辺りはもはや人の行き来がない危険な場所なのだ。
「ナファネスク様、そこでお止まりください!」
二馬身ぐらい後方からオルデンヴァルトの呼ぶ声が聞こえた。
ナファネスクは手綱を上手く操り、ホーテンショーを休ませる。少しして、やっとのことで追いついた聡明な元騎士も馬を止めた。馬は相当苦しそうだ。
「ここから森に入ります」
オルデンヴァルトの指差す先には、少し森林を伐採したような形跡が見られた。どことなく隠された道のように見えなくもない。
「それと、これから先は歩いて行きます」
「ああ、分かった」
気高い一角獣から降りると、ナファネスクは鐙を外してやった。
「ホーテンショー、今まで本当にありがとな! 短い旅だったが、父さんの形見であるお前と出会えてとても楽しかった! これからは自由に生きろよ!」
主との別れを悟ったのだろうか、一角獣は寂しそうに近寄ってきた。地面に飛び降りた焔豹のハクニャも、ホーテンショーに物悲しい顔を見せる。
少しの間、ナファネスクは愛馬だった一角獣の顔を強く抱きしめた。次いで、森の入り口で待つオルデンヴァルトの元へと歩いて行った。ハクニャと共に――。
森の中は背の高い木々の葉に覆われて、薄っすらと暗かった。だが、ランタンをつけるほどでもない。
(この道の先にエスカトロン城に通じる装置があるんだな。カサレラ、もうちょっとだけ辛抱しててくれ! 絶対にお前を助け出してやるからな!)
誓いを違えるつもりなど更々ない。必ず冥邪天帝ヴェラルドゥンガの顕現を目論む者どもの手からカサレラを奪い返すのだ。無傷のままで。
背の高い木々に覆われた道を進むと、少し広々とした空間に出た。
突如ハクニャが二人の前に飛び出した。周囲を警戒するように激しく毛を逆立てて唸り声を上げる。そのときになって、見知らぬ集団が周囲の草木に身を潜めていることに気付かされた。
「今だ! 一斉に射ろ!」
その号令とともに、無数の矢がナファネスクたちに襲いかかった。
「何者だ、お前ら!」
すかさず王家伝来の宝剣を抜いたナファネスクは幾つもの矢を払い落としながら怒鳴り声を上げる。弓矢を使う以上、冥邪の可能性は低い。
「おい、待ってくれ! 俺だ! オルデンヴァルトだ!」
剣で矢を払いのけると、オルデンヴァルトは自分の身を晒して一歩前に出た。襲撃して来た相手を知っているような口振りだ。
「オルデンヴァルトだと!? お前ら、すぐに射るのを止めろ! そいつらは敵じゃねぇ!」
荒々しい声が轟くのと同時に、降りかかる矢の雨はピタリと止んだ。少しすると、人間とは異なる姿の者たちが周囲から姿を現した。




