拒否はされなかった
「お前は呪われた女なんかじゃねぇ! 俺が必ずそれを証明してやる!」
恥ずかしそうに俯く清廉な少女に、ナファネスクは力強い声で断言した。
「もう知らない! あんたって本当にどうしようもないバカなんだから!」
キスは拒絶しなかったものの、カサレラは恥じらいから大声で怒鳴った。すぐに掛け布団を頭まで被ると、ナファネスクに背を向けた。その姿を一瞬たりとも目を離せなかった。
(俺の思いは伝えた。拒否はされなかったんだ。それでいいじゃねぇか)
興奮して今夜は眠れそうになかった。その反面、心の底から安堵の息が漏れ出た。
ナファネスクは先ほどの最高に幸福な瞬間を何度も思い返してはとても満ち足りた気持ちに浸っていた。
今夜は、自分の人生の中で生涯忘れられない夜になると確信した。
☆☆☆
ナファネスクはハッとして目が覚めた。急いで起き上がると、既に朝日が昇ろうとしていた。
(しまった! もう朝じゃねぇかよ!)
昨日の夜は気持ちがとても興奮して、寝られそうにはなかった。それなのに、いつの間にか眠りに落ちてしまい、今に至る。
ふと横にいるカサレラを見た。掛け布団を被ったままだが、どうやらまだぐっすり寝ているようだ。
ナファネスクはそっと荷台から出ると、昨晩夕食を共にした場所に向かった。
思っていたとおり、たき火に枯れ木をくべながらオルデンヴァルトは見張りをしていた。
「オルデンヴァルト、これはどういうことだよ! 夜中に交代するはずだっただろ!」
「これは、ナファネスク様。おはようございます」
「挨拶なんかどうでもいい! 早く理由を説明しろ!」
「それなんですけど。交代しようと荷台に行ったら、二人とも気持ちよさそうに眠られていたので、起こすのを躊躇ってしまいました。どうもすみません」
悪くもないのに、オルデンヴァルトは頭も下げた。
「いや、別に謝らなくてもいいけどよ」
「それに数時間ですが、俺もここで眠りこけていたようです。ですから、あまり心配しないでください」
嘘か誠か分からないが、それが事実ならホッとする話だ。
これからまた旅をする中、夜通し起きていたのでは体が持たない。自分たちには冥邪王との戦いが控えているのだ。
冥邪王や先ほどの冥邪との戦いにおけるオルデンヴァルトの活躍は、アルメスト王国の五大英雄神の名に恥じないものだった。いつの間にか欠かせない戦力になっていた。
もし、自分とカサレラだけだったら、ここまで生き抜いて来られたかどうかも分からない。
「カサレラはまだ眠っているみたいですね。では、彼女が起きるまで待つとしましょう」
「いいのかよ?」
「はい、後一時ぐらいなら問題はありません。おそらくですが、俺たちはこれから苦難の旅が待っているはずですから。寝たいときに眠らせてあげましょう」
苦難の旅。もちろん、それは帝国の手先との戦いを意味していた。今まで襲ってこなかったのが不思議なくらいだ。
オルデンヴァルトは帝国の手先との戦いに四度目はないときっぱり言い切っていた。今度の戦いで死力を尽くしてくるはずだと――。
さらに半時が過ぎようとした頃、カサレラが荷台から降りてきた。




