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ラッシュレックレス  作者: 檜鶯盈月
第4章 哭天の魔神
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ロスした時間を取り戻せ

「さて、二人とも旅を続けますよ。ここで相当な時間を食ってしまいましたからね。どこかで挽回しないと!」

 この中で唯一の大人であるオルデンヴァルトは足早に荷馬車に戻った。ナファネスクは酷く自省していて、これ以上説教する必要はないという判断を下したようだ。


 気がかりがあるとすれば、馬たちを疲労させることにはなるが、どれだけ今日の目的地まで近づけるかという思いだけだった。


「ここからは少し急ぎますよ!」

 ナファネスクとカサレラが旅立つ準備が整うのを待ってから、オルデンヴァルトは荷馬車を走らせた。


 帝国の手先となった冥邪王がいつ現れるのか分からない以上、用心に用心を重ねるに越したことはない。向こう見ずな少年はすぐに気持ちを切り替えた。


(そうだ。いつどこで新手の冥邪王に出くわすか分からないんだったな。大事の前の小事って言うじゃねぇか。またいつでもカサレラと二人きりで話す機会は来るさ。それより、あいつを絶対に守るためにも、もう少し気を引き締めろ、俺!)

 二度と足を引っ張らないと決意を固めたナファネスクは愛馬ホーテンショーに跨ると、再び疾駆させた。


 一日も早く冥邪天帝ヴェラルドゥンガの顕現を阻止できることを願いながら。


☆☆☆


 それからの旅路はほとんど何事もなく、不思議なほど至って順調だった。


 今までの展開なら、そろそろ次なる冥邪(めいじゃ)王が現れてもおかしくなかったが、どういうわけか冥邪どもの姿すら見かけなかった。


 ナファネスクたちは夕暮れ間際に一つの街を通り抜け、先ほどの遅れを取り戻すために日が沈む寸前まで休むことなく進んだ。


 オルデンヴァルトの話だと、目的の森までは後半日以上はかかるという話だ。


 今日の旅は半強制的に終わりを告げた。


 ナファネスクたち一行は休める場所を見つけて、野営することにした。


 すぐに火を起こし、食事の準備にかかる。


 晩ご飯はパンと火で(あぶ)った燻製(くんせい)肉だった。焔豹(ケマール)のハクニャにも燻製肉が与えられ、一角獣(ウニコルニオ)のホーテンショーを含め、馬たちは近くの草をムシャムシャと食べていた。


 食事を終えれば、後は眠るしかやることがない。


 唯一の大人であるオルデンヴァルトが夜の見張り役を買って出た。ナファネスクも負けずに名乗り出たが、途中で交代することでしぶしぶ納得させられた。


 ナファネスクとカサレラは狭い荷台の中で、それぞれ薄い布団に(くる)まり、横になっていた。


 カサレラの寝顔をそっと見ながら、ナファネスクは何だか寝られずにいた。

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