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ラッシュレックレス  作者: 檜鶯盈月
第3章 本当の気持ち
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武勲者はハクニャ

「おい、脳みそブチ切れ野郎! 俺らがやられてばかりだと思ったら、大間違いだぜ!」

 ゼラムファザードは六枚の翼を思い切り羽ばたかせて、本物のモルザーバに向かって途轍(とてつ)もない速度で突っ込んでいく。


「覚悟するのはお前のほうだ!」

 極限まで達した速さに五つの妖気の球体は追尾が間に合わず、次々と躱していく。瞬く間に邪教の法王の頭上を優に超える高さまで舞い上がると、全身全霊の獣気を注ぎ込んだ両刃鎗で一刀両断にする。


 大量の薄紫色の血しぶきをまき散らし、モルザーバは驚愕した顔のまま死に絶えた。


「どうにか斃せたな!」

 獣霊降臨を解くと、ナファネスクは危機的状況を打破したことに安堵の息を漏らした。その間にカサレラと獣霊降臨を解いたオルデンヴァルトが嬉しそうに駆け寄って来た。


「やるじゃない! ナファネスク!」

 カサレラは心底喜んでいた。


「ナファネスク様、お見事です! それにしても、どうやってあの冥邪王の正体を見破ったのですか?」

 まだ謎が解けないオルデンヴァルトが不思議そうに訊いてきた。


「それはな、あいつの第三の目だ! 本体は赤く光っているが、分身は光らない。その違いだ!」

 端的に謎解きを披露した。でも、特に勝ち誇っているわけではない。何故なら――。


「それを気付かせてくれたのはお前だ、ハクニャ!」

 ナファネスクは颯爽と駆け寄って来た聖獣の焔豹を両手で抱くと、武勲を称えて高々と持ち上げる。次いで、頬ずりした。今回ばかりは感謝してもしきれるものではなかった。


 もし、ハクニャによる火球の攻撃がなければ、自分たちは今頃相当な苦戦を強いられていたのは間違いない。もっと言えば、勝てたかどうかさえも不明だった。そう考えるだけで、正直背筋が冷たく凍りついた。


(ハクニャ、お前が俺たちを勝利に導いてくれたんだ! 今さらだが、お前は俺たちの守り神だな!)

 少しの間、三人はハクニャを囲み、談笑しながら勝利の美酒に酔いしれた。


 その後でナファネスクは、カサレラに目を向けながら物思いに(ふけ)った。モルザーバの言葉を思い出したからだ。


 カサレラはどこに隠れていようが、いずれは冥邪たちに見つけ出されてしまう。自分たちにしても、逃げ隠れする気は毛頭ないが、敵がいつ襲ってきてもおかしくないのだ。


 帝国の手先と成り果てた冥邪王との戦いは少ないに越したことない。その上でどうにかして冥邪天帝ヴェラルドゥンガの顕現を阻止する。


(何が起ころうと、絶対に帝国の野望を打ち砕いてやる! 絶対にだ!)

 心から愛するカサレラを必ず守り抜くためには一分一秒たりとも気が抜けない、と一層身を引き締めるナファネスクだった。

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