本物と偽物の違い
「今度は一人に集中して攻撃してやろう。そうすれば、全てはよけ切れまい!」
勝利を確信したモルザーバは再びおどろおどろしい杖を高々と掲げた。同時に、再び五つの巨大な妖気の球体が現れる。
(あの化け物の言うとおり、いくら何でも追尾してくるあの馬鹿でかい球体を一人で全て捌き切るのは不可能だ! もし、二発でもまともに喰らったら、確実に死ぬぞ。しかも、どいつが本物か見当もつかねぇ! いったいどうすりゃいいんだ!)
何の解決策も見出せない中で五体の邪教の法王が杖を振り下ろす寸前、三つの巨大な火球が左から二番目のモルザーバの顔面に命中した。すると、残りの四体は忽然と掻き消え、全ての妖気の球体も消失する。
三つの火球を放ったのは聖獣である焔豹のハクニャだった。
「な、何だと!?」
片手で顔を覆いながら、モルザーバは分身の術を見破られたことに驚きを隠せない。
「ハクニャが分身を見破ったのか!?」
ナファネスクも驚嘆していた。
(たまたま命中しただけなのか? いや、ハクニャはとても賢い動物だ。あれが本物だと確信して攻撃したに決まってる! でも、どうやって見破ったんだ?)
このときばかりはハクニャが人間の言葉を話せれば、と痛切に感じた。
もちろん、唯一手がかりになり得ることもあった。三つの火球はモルザーバの顔に集中して命中したことだ。それが分身を見破る糸口かもしれなかった。
「ただの獣ごときが我を傷つけるなど許さん! 絶対に許さんぞ!」
モルザーバは顔の傷を完全に治癒し終わった途端、おどろおどろしい杖の先端をハクニャに向けた。その直後、夥しい妖気の光線を放った。
「やらせねぇ!」
異変を感じたゼラムファザードは咄嗟の判断でハクニャの前に立つと、ありったけの獣気で防護壁を作りながら盾となる。ギリギリだったが、どうにか妖気の光線を防ぎ切った。
「おのれ、よくも小癪な真似を! よかろう! だったら、そこの獣霊使いから先に血祭りに上げてくれるわ! 覚悟しろ!」
モルザーバは再度四体の分身を作り出した。どうやら激しい怒りによって理性を失っているようだ。
ゼラムファザードに狙いを定めて、またもや五つの巨大な妖気の球体が出現する。
その間にナファネスクは五体の顔を凝視して、一生懸命見比べた。絶対に一体だけ分身とは違うところがあるはずなのだ。
(そうか! 分かったぞ!)
本物にはあって、分身にはない。その違いを見つけ出した。だが、既に五体のモルザーバはおどろおどろしい杖を振り下ろし、今まさに五つの巨大な妖気の球体が自分に襲って来ようとしていた。




