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ラッシュレックレス  作者: 檜鶯盈月
第3章 本当の気持ち
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分身

「ぬぅ、小娘の分際でよくもやってくれたな! 大人しくしていればいいものを! 《破滅の聖女》とは言えども、ただでは済まさん!」

 血の流れ出る傷口に手を当て、モルザーバは憎悪の言葉を吐き出した。すると、息つく暇もなく全身から膨大な妖気を噴き上げる。それに加えて、深手を負っていた傷口も徐々に治っていった。邪教の法王と名乗るだけあって、どうやら治癒術も心得ているようだ。


「さぁ、我の真の力をとくと見よ!」

 傷を完治させたモルザーバに異変が起きた。ナファネスクたちを囲むように左右に二体ずつ分身が現れる。しかも、一見どれが本物なのか見分けがつかなかった。


 分身も含め、五体のモルザーバはおどろおどろしい杖を空高く突き上げた。突然杖の先端の空間に妖気で作られた巨大な球体が現れる。

「これでも喰らうがいい!」

 叫び声とともに全ての邪教の法王が一斉に杖を振り下ろすと、五つの妖気の球体はこちらに目がけて尋常ではない速度で飛んできた。唯一の依り代であるカサレラにも襲いかかる。


「危ねぇ!」

 ゼラムファザードは三対六枚の翼を勢いよく羽ばたかせた。そのまま凄まじい速さで低空を飛んでカサレラを抱きよせると、即座に天高く飛翔する。


 どうにか紙一重で妖気の球体を避けることができた。だが、真下から地面に衝突したはずの爆発音が聞こえてこない。視線を戻すと、妖気の球体は角度を変えてゼラムファザードの後を追尾していた。


「マジかよ!?」

 ナファネスクはこのままでは避けきれないと覚悟した。左腕でカサレラを抱きかかえている以上、使えるのは右手だけだ。それでも、溢れんばかりの獣気(じゅうき)を帯びた両刃鎗(りょうばそう)で巨大な妖気の球体を斬りつけた。


 獣気と妖気とが激しく衝突する中、妖気の球体は物凄い破裂音とともに消滅した。その際に生じた衝撃波をカサレラの身を(かば)いながら受け止める。


「クッ!」

 ナファネスクは呻き声を上げながら激痛に耐えた。


 さらに二つの妖気の球体がゼラムファザードを挟み込むように襲来する。ただ、今度は少しだけ余裕があった。二つの妖気の球体が自分に当たる寸前までその場に浮遊し、一気に地面に向かって急降下した。追尾不能に陥った巨大な妖気の球体同士は勢い余って激突し、荒々しい衝撃波を放ちながら消滅する。


 アシュトロアにも二つの妖気の球体が同じ方向から襲いかかる。ゼラムファザードのような対処の仕方はできない。


 アシュトロアは二挺の弩を同じ妖気の球体に狙いを定め、膨大な獣気を圧縮して作った矢を放った。一つ目に命中して消し飛ばすと、立て続けに二発目を放ち、もう一つも消し去った。


「滅骸師としてのお前の力は分かったから、今はここにいろ!」

 カサレラを地面に着地させてから、ナファネスクは懇願した。

「わ、分かった……」

 冥邪王との戦いの壮絶さを身に染みて味わった清廉な少女は顔色失って頷くだけだった。


 ゼラムファザードは再び五体のモルザーバに向かって飛んでいく。今やナファネスクの心は激しい憤りに燃え上がっていた。

「お前、いったいどういうつもりだ! カサレラは、冥邪天帝ヴェラルドゥンガを顕現(けんげん)させるための唯一の依り代なんだろ? 殺しちまったら、二度と顕現はできなくなるじゃねぇのか?」

「別に瀕死でも、生きてさえいれば問題なかろう」

「何だと、お前!」

 どちらも怒り狂っていた。

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