次なる冥邪王の元へ
オルデンヴァルトが姿を消してからもう間もなく二十分が経過しようとしていた。そろそろ時間切れだ。
「残念だけど、これ以上はもう待てないよ! 早く行かないと、この街が壊されちゃう!」
カサレラは切迫感から口を開いた。冥邪王が待つと宣告した時刻まで残り僅かしかない。
「仕方ねぇな。俺らだけで行くとするか」ナファネスクも同じ気持ちだ。
「あいつも本当にその気があれば、俺らの後を追ってくるだろう」
(今度の冥邪王も、俺とゼラムで斃してやる! 相手が何者であろうとも、カサレラに指一本触れさせはしねぇ!)
二人はお互いの目を見ながら強く頷き、足早に歩き始めた。ハクニャもその後ろから着いていく。突然背後から複数の蹄鉄の音が響いてきたのは、そのときだ。
「王子! お待たせしました!」
ナファネスクたちを大声で呼び止める声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、二頭ずつ並んだ計四頭の立派な馬に荷台を引かせた馬車が猛烈な速度でこちらに近づいて来た。手綱を操っているのは騎士風の姿をした誰かだ。
「おい、あいつ、オルデンヴァルトか!?」
先ほどとは見違える姿にナファネスクは思わず目を疑った。その間に荷馬車は二人の真横で急停止する。
「さぁ、二人とも俺の横に乗ってください!」
声だけは間違いなくオルデンヴァルトのものだった。
むさ苦しかった無精髭を綺麗さっぱりと剃り落とし、ボサボサの長い髪をバッサリと切って清潔感のある風貌に様変わりしていた。
「お前、その馬車はどうしたんだよ?」
近くで見ると、それなりに高そうな荷馬車に見えた。
「その話は後でゆっくりしますよ! さぁ、二人とも早く乗ってください! 冥邪のいる場所まで飛ばしますよ!」
気にはなるが、話している暇がないのも事実だ。
ナファネスクは御者台に座ると、カサレラを引っ張り上げてやる。さすがに御者台はぎゅうぎゅう詰めになった。
「さぁ、ハクニャもおいで!」
カサレラは両腕を大きく開いて、自分の膝に飛び乗るように促した。言われるままに聖獣の焔豹は軽やかに跳躍し、優しく抱きかかえられる。
「もういいですね? では、出発!」
オルデンヴァルトは手綱を巧みに操りながら、威勢のいい四頭の馬に引かせた荷馬車を勢いよく走らせた。
今か今かと手ぐすねを引いて待ち構えている新手の冥邪王のいる場所に向かって。




