街中を震撼させる急報
「もう、あんたってば! 後でお金に困っても、あたしのせいにしないでよね!」
あまりにも嬉しそうな顔をするナファネスクを見て、本気で怒れなかった。
本音は全く逆で、今まで生きてきた中で贈り物など貰ったことのないカサレラは、歓喜する思いを必死に押し隠そうとしていた。
店にある大きな鏡に映る自分の姿を盗み見ながら、ナファネスクの鑑識眼も満更でもないと感心した。
全く相手にされないハクニャだけが退屈そう地面に寝転がっていた。
不意に危険を知らせる鐘の音がけたたましく鳴り響いたのは、その直後だ。
賑わいを見せていた広場に軽装備の警備兵たちがぞろぞろと現れ、全ての店の商売を強引に中止させていく。
先ほどまでの活気は消え去り、何やら周辺を物々しい空気が漂っていた。
☆☆☆
商人たちが半ば強引に店じまいを迫られる中、この街の住人たちが群衆となって広場に押し寄せて来た。
ナファネスクとカサレラもその中に混ざっていた。焔豹のハクニャを残して――。
群衆は、中央にある噴水を中心にして輪を描くように集っていた。その前を監視するように警備兵たちが立ち、周囲に目を配っている。
一方向だけ中央の噴水に向かって直線の道が設けられていた。その通り道の両側にも警備兵たちがズラリと整列していた。
いったい何が起こったのか分からない群衆は一様にどよめいていた。だが、口髭を生やした横幅のある中年の警備隊長が現れた瞬間、静寂が訪れる。
警備隊長が中央に通じる直線の道を歩くと、警備兵たちが順々に敬礼をしていった。
噴水は階段状に作られていて、背の低い警備隊長でも一番上からなら群衆を見渡せるだけの高さがあった。
一回咳払いをすると、警備隊長は口を開いた。
「ただ今から、みんなに集まってもらった理由を説明させてもらう」
重苦しそうに言うと、そこで一度言葉を切った。その表情はとても険しい。
「見張りの警備兵の報告によると、このウールジークの北門からそれほど離れていない場所に人間の言葉を話す冥邪が現れたとのことだ」
なるべく冷静を装って話す警備隊長の言葉に、群衆は「なんで冥邪が?」と驚愕していた。




