まずは市場へ
白いカーテンから明るく差し込む朝日の光で、ナファネスクは目を覚ました。
昨日は何かと色々あった。
肉体面でも精神面でもそれなりに疲労していたのだろう。よく眠った気がする。
ゆっくりとベッドから起き上がると、カサレラの姿が部屋から消えていた。
(まさか――!?)
寝る前のカサレラは何か思いつめた様子だったのを覚えている。向こう見ずな少年は慌てて服を着ると、急いで部屋を出た瞬間、階段を上ってきたカサレラと鉢合わせになった。
驚いたように「キャッ」と悲鳴を上げる清廉な少女の姿に、ナファネスクは心の底から安堵した。
「びっくりさせんなよな! 起きたら姿が見えねぇから心配したんだぞ!」
「ゴメンね。ハクニャに朝ご飯をと思って」
罰が悪そうに舌を出す。両手には干し肉と牛乳の入った二枚の皿をのせたお盆を持っていた。
二人は自室に戻ると、カサレラは静かにお盆を床に置いた。
すぐに食べにやって来たハクニャを「よしよし」と優しく撫でてやる。いつの間にか聖獣の焔豹はカサレラを信頼しきっていた。
「ねぇ、この宿でもご飯を食べられるんだって。朝ご飯はここにしない?」
「別に構わないぜ」
ナファネスクは即答した。
自室で旅の準備を整えてから、二人は一階にある食堂に向かった。そのまま空いている席に座った。
「おや、二人ともよく来てくれたね! 今朝はソーセージを包んだ焼きたてのパンにクリームシチューだよ! もうすぐできるから、少しだけ待ってておくれ!」
宿屋の女主人であるエスタナは朝からにこやかで明るかった。
大した話題もなく待っていると、「お待たせ!」とエスタナが料理を運んできた。
「さぁ、食べようぜ!」
口に入れると、どちらの料理も美味しかった。農村の食事と比べれば段違いだ。カサレラも満更でもなさそうに食べている。
朝ご飯を食べ終わると、ナファネスクたちは宿屋の女主人のエスタナに感謝と惜別の言葉を送ってから別れた。
「くれぐれも気を付けるんだよ!」
二人の子供と一匹の聖獣を見送るエスタナは、心配そうにいつまでも手を振っていた。
大通りに出ると、まず円形の大きな広場に足を運んだ。その中央には大きくて立派な噴水があった。
広場にはずっと街に根付いた店以外にも、交易を目的とした商人たちが様々な品物を売っている。これからの旅に備えて品物を揃えるなら、一度は立ち寄っておきたい場所だ。




