乙女心が分からない
カサレラが少し遅れて一階に下りていくと、ナファネスクとエスタナが楽しそうに話をしていた。
「店に入ったら、真っ先に『エスタナの知り合いだ』ってちゃんと言うんだよ」
「分かった! 絶対に忘れねぇよ!」
「ハクニャって言ったっけ? 聖獣ちゃんはあたしがしっかりと面倒見てやるからね!」
「ありがとな!」
気配を感じたナファネスクは、近寄ってくるカサレラに目を向けた。
「ここから少し行ったところに美味い料理を食わせてくれる店があるってよ! 道順は覚えたから、早く行こうぜ!」
意気揚々とカサレラに話しかけた。
「すみません! 何だか色々とお世話をおかけします」
清廉な少女は深々と頭を下げた。
「別に気にしなくたっていいんだよ! あんたたちはうちのお客様だし、これくらいどうってことないからさ! それよりも、日が暮れちまう前に早く行っておいで!」
「なぁ、おばさんの言葉に甘えようぜ!」
「おばさんって!? あんたね、その能天気な性格どうにかならないの!」
瞬く間にすっかり打ち解けているナファネスクに、自分にはない人懐っこさみたいなものを感じ取ったカサレラは苛立ちをぶつけてきた。
「別にいいじゃねぇか。急に怒るなよな」
仏頂面をするナファネスクだったが、すぐさま元に戻った。
「分かった! お前も腹が減ってるんだろ? 腹が空くとイライラするもんな!」
「ち、違うってば! あんたなんかと一緒にしないでくれる!」
カサレラは強く反論しながら急にふくれっ面になる。
「そうだよ。心では分かってても、年頃の女の子に向かって、そんな真っ正直に言うもんじゃないよ。なんて言ったって、女心は繊細なんだからね」
エスタナは自信ありげに言ってのけると、右手で服の上から豊満な胸を力強く叩いた。その言葉にナファネスクは「へぇ」と納得したように頷いた。
「正直に言うけどよ。俺さ、これまで自分と同年代の女の子とほとんど話したことがなかったから、全然気付かなかった。変なことを言って悪かったな」
「もういいってば! ほら、早く行くんでしょ?」
反論すればするほどドツボに嵌まると感じたのだろう。カサレラは深くため息をついて諦め顔になった。
「おう! そのとおりよ!」
エスタナに見送られながら、二人は《豊穣の女将停》を後にした。ナファネスクはご馳走に胸を膨らませていた。




