いざ食事処へ
「よし、決まりでいいようだね! ちょうど今、最上階の一番良い部屋が空いててね。そこに泊まりな! 他の部屋と同じ値段にしとくからさ!」
ご機嫌なエスタナだったが、まだ伝えるべきことがあった。
「それと、こいつも良いかな?」
ハクニャを持ち上げて、不安そうにエスタナに見せた。「ミャー」と鳴きながら、愛くるしい表情をする。
「その動物、ただの猫ってわけじゃなさそうだね?」
「聖獣の焔豹って言うんだ」
エスタナの感は鋭かった。ここは正直に話したほうがいいとナファネスクは思った。
「聖獣ときたかい! これはなんだかご利益がありそうだね! いいよ、連れて行きな!」
太っ腹な女主人のエスタナはあっさりと承諾してくれた。
ナファネスクは一泊分の料金を支払ってから、案内されるがまま泊まる部屋に着いた。
「ゆっくりしておくれよ!」
それだけ言い残し、エスタナはドアを閉めて去っていった。
部屋は広々としていて、とても安らげそうだ。
高級感のある調度品といい、エスタナが一番と豪語するだけあった。向かって左側に子供が寝泊まりするには少し大きすぎるベッドが二つ並んでいた。
「カサレラ、つい話の流れで相部屋になっちまってすまねぇ! どうしようか迷いに迷ったんだけどよ。他の宿屋を探したところで……な?」
銀色の短髪を掻きながら、申し訳なさそうにナファネスクが口を開いた。
「分かってるって。別に気にしなくていいわよ。あたしも同じことを考えてたしね」
「そっか。じゃあ、今から何か美味い飯でも食べに行こうぜ! 構わねぇだろ?」
街に入ったときからナファネスクは、ここでなら農村では口にできない料理を食べられるのではないかと期待していた。
「はいはい、行けばいいんでしょ」
同い年にも拘わらず、カサレラの目線からは子供っぽく見えているようだ。ナファネスクにすれば、そんなことなど少しも気にしてなかった。
「お前はここで留守番だ!」
ハクニャの頭を優しく撫でると、ナファネスクは「さぁ、出発!」と声を張り上げてドアを開け放った。
「やっぱり、あいつってバカね」
心底嬉しそうに通路に出ていくナファネスクの後ろ姿をカサレラは本当に元王子なのか、と疑いの眼差しで見送った。次いで、留守番役のハクニャを優しく撫でてやった。
「よしよし。ハクニャ、ゴメンね。すぐに戻ってくるからね」
優しい口調で言い残すと、ナファネスクの後を追って通路に出た。




