少女の不可解な行動
「何しやがる! せっかく助けてやったのによ!」
「それが余計なお世話だって言ってるの! あたしはね、周りにいた冥邪たちに感づかれないようにわざと捕まってるふりをしてたのよ!」
「捕まってるふりだと!?」
またもやこのムカつく女の言っている言葉の意味が分からない。
「そうよ! あたしはね、こう見えて滅骸師なの!」
滅骸師とは神聖魔術を使って、冥邪を含めた邪悪なる存在を退治する者たちのことだ。
元々は太陽神ロムサハルを崇拝するテムロア教の神官の出で、修行の過程で司祭になる者と滅骸師になる者に別れる。ただ、ナファネスクはそのことを知らなかった。
「あのよ、滅骸師って何だ?」
「あんた、そんなことも知らないの! たいそうな服を着てるわりに頭はバカなのね!」
「うるせぇ! 誰にでも知らねぇことの一つや二つぐらいあるだろ!」
呆れた顔で嘆息する少女に対し、ナファネスクは食ってかかる。
「それによ、どう見ても、お前一人であの冥邪王を斃せたとは思えねぇしな!」
小馬鹿にした笑みを浮かべて反転攻勢に出た。
「なんですって!」
「滅骸師っていうのは知らねぇけどよ。要は魔導師みたいなもんだろ? さっきの冥邪王には俺だって苦労させられたんだ。お前一人だけで斃せるわけがねぇ!」
「あたしの力も知らないくせに、言ってくれるじゃないの!」
「ああ、言ってやるよ! 何のふりをしてたのかは知らねぇが、本性がばれた途端、さっきの冥邪どもに喰い殺されるのが落ちだぜ!」
激しく火花を散らす二人。ところが、囚われの少女のほうはすぐに冷静さを取り戻し、この無意味なやり取りに深いため息をついた。
「はいはい、バカと話しても埒が明かないわ!」
気を取り直すように少女は足元に置かれたままの天晶玉を手に取ると、ナファネスクの横をすり抜けていく。ちなみに、天晶とは極めて希少価値の高い鉱物の一種である幻輝石が結晶化したものだ。
「おい、一人でどこに行く気だよ?」
「別にどこにも行く気なんてないわよ!」
「は?」
この少女の行動が全く読めなかった。取りあえず、鉄格子の檻を出ていく少女の後を追う。




