冥邪王レナディス
「お前、冥邪のくせに俺らの言葉を話せるのかよ?」
ナファネスクは驚きを隠せない。
「無論。我は百体いる冥邪王の一体であり、名はレナディスだ」
「冥邪王だと!?」
冥邪王という言葉は初めて耳にした。普通の冥邪とは何が違うのだろうか、と考える。
【冥邪王とは名前のとおり数多の冥邪どもを束ね上げる王たちのことだ。その力は並みの冥邪とは比べ物にならぬほど強い。心して戦うのだ!】
ナファネスクの要望に応える形で壊神竜が補足説明をした。冥邪についてどうしてそこまで詳しく知っているのか疑問に思ったが、今はどうでもいいことだ。
「フン、冥邪王ね。まずは小手調べと行くか!」
こちらから先制攻撃はせず、重量感のある両刃鎗を構えるだけに留めた。まずは敵の出方を見計らってから慎重に動くべきだと第六感が告げていた。
ゼラムファザードが現れると、レナディスの背後にいた四体の冥邪どもが鋭い牙を見せつけながら威嚇してきた。
「沈まれ、ダーダムたちよ! 決して手を出すではないぞ!」
人間の言葉など理解できるはずもない下級の冥邪どもだったが、冥邪王であるレナディスの発する威圧的な物言いにたじろぎ、すぐに大人しくなった。
「では、行くぞ! 獣霊使い!」
レナディスは声高に宣告すると、八本の腕を真っすぐ伸ばした。そのまま全ての手のひらをゼラムファザードのほうに向ける。すると、その真ん中からギョロッと目が見開かれた。間髪入れずに八つの目から妖気の光線が一斉に放たれる。
不意打ち同然の先制攻撃にゼラムファザードは|両刃鎗を垂直に構えてから獣気で作り出した防護壁を張る。ところが、想像を絶するほどの破壊力を持つ八条の妖気の光線を全て凌ぎ切る前に、防護壁は粉々に砕かれてしまった。
残りの光線が全身鎧に命中する。鎧には微かなひび割れが生じ、ナファネスクは苦痛の呻き声が漏らした。
「クソ、やってくれるじゃねぇか! これが冥邪王の力か!?」
八本腕の冥邪王は繰り返し同じ攻撃を仕かけてきたが、二の轍を踏むゼラムファザードではなかった。六枚の翼を思い切り羽ばたかせてより上空に舞い上がると、辛うじて次々と躱していく。それでも、八条の妖気の光線が止まることはなかった。
「あの野郎! これじゃあ、簡単に近づけねぇ!」
大空を飛び回ることで全ての妖気の光線をどうにか避けてはいるものの、両刃鎗しか武器がないゼラムファザードは敵の懐に入る必要があった。このままだと先に力が消耗するのは目に見えていた。
「どうした? 逃げるだけでかかって来ぬのか?」
八本腕の冥邪王が挑発してくる。
「うるせぇ! その口、今すぐ黙らせてやる!」
言いたいことを言われたナファネスクは怒鳴り返す。
(どうすればいい? 一か八か、突っ込んでみるか?)
挑発に乗るわけではないが、それしか方法を思い浮かばなかった。




