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ラッシュレックレス  作者: 檜鶯盈月
第2章 運命の導き
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旅路の始まり

「もう旅立つのか?」

 ユリゴーネルが見送りとばかりに来ていた。


「はい」

 ユリゴーネルの問いかけに清々しく答えた。


「ならば、その笛を吹いてみるのじゃ」

「これを、ですか?」

 促されるままに右手に持っていた風変わりな笛を吹いてみた。だが、何の音も響かなかった。


「あれ? おかしいな」

 今度は思い切り吹いてみたが、やはり何も音は出なかった。


「一度でよい」

 ユリゴーネルはこの笛のことを何か知っているような口ぶりだった。


 少しすると、遠くから馬が疾駆する(ひづめ)の足音が聞こえてきた。どうやらこの農村に向かってくるらしく、足音は徐々に大きくなる。


「あれはまさか――!?」

 ナファネスクは、足音を響かせる正体に目を(みは)った。


 正確には馬ではなかった。雄々しい一本の長い角を生やした一角獣(ウニコルニオ)という稀有な生物だ。


 一角獣は目の前で(いなな)きながら立ち止まった。背の高さは一角獣のほうが大きかった。


「エゼルベルクはそやつをホーテンショーと名付けていたのう」

「ホーテンショーか。良い名前だ! ホーテンショー、これからよろしく頼むな!」

 ナファネスクの言葉に応えるように、気高い一角獣は優しく顔を舐めてきた。「よしよし」と鐙を付けるときも、とても大人しかった。新たな主として認めているようだ。


「そやつに乗っていけば、夕暮れまでには近くの街にたどり着くはずじゃ」

 飲み水は持ったものの、食べ物や寝袋はなかったので村長の言葉に安堵した。


「それじゃあ、ユリゴーネルさん、お体を大切に!」

 ホーテンショーの背に(また)がると、ナファネスクは別れの挨拶をした。ハクニャもすぐ後ろに乗っている。


「くれぐれも体には気を付けるのじゃぞ!」

「はい! じゃあ、行ってきます!」


 ナファネスクは手綱を思いっきり引っ張った。すると、即座にホーテンショーは(きびす)を返して疾駆する。


 冥邪天帝ヴェラルドゥンガの顕現を阻止する壮大な旅は、今幕を開けようとしていた。

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