復讐は終わらない
「許さねぇ! お前ら、絶対に許さねぇぞ!」
【それでこそ無疆の獣気の持ち主よ! さぁ、我と一体となるのだ!】
「おう! 行くぜ、獣霊降臨!」
ナファネスクの雄叫びに呼応して、頭上に金色の巨竜が現れて一体化する。すると、一瞬にして姿が一変した。
獣霊と同じ色をした苛烈な竜王の顔を象った兜と全身鎧に覆われ、背中には三対六枚の翼を生やしていた。右手には――両手で握っても余りある――柄の両端から先端が幅広くてとても滑らかな弧を描いた特大の両刃の剣が伸びた両刃鎗を持っている。
「まずはお前だ、クインシュガー! 父さんの無念を晴らしてやる!」
幻獣騎兵ゼラムファザードは重量感のある両刃鎗を巧みに操り、圧巻の素早さで臨戦態勢の構えを取った。
今まさに報復の狼煙が上がろうとしていた。
☆☆☆
レストフォルトは幻獣騎兵ゼラムファザードから放出する夥しい獣気を全身でヒシヒシと感じ、じんわりと冷や汗を滲ませる。
ただでさえ、ブエルゾラハとの熾烈な戦いの後で全身の節々から激痛が走った。新たな敵と渡り合う余力はほとんど残っていない。
「あのガキ、化け物か――!?」
身の毛がよだつ恐怖心から、思わず驚愕の声が漏れ出る。
「レストフォルト殿、何をしているんです? 早くそいつも始末してしまいなさい!」
同じく危機感を感じているのか、遠くからカシュナータが指示してきた。
「ああ、わざわざ言われなくても、それくらい百も承知だぜ! 殺らなきゃ、こっちが殺られちまうんだ! ガキ、さっさと死んでもらうぜ!」
クインシュガーは全身の激しい痛みで、思いどおりに力が出せなかった。それでも、頑丈な鎖を器用に操ると、鋭利な小型の刃の回転速度を維持したまま、最後の一撃とばかりに二つの螺旋刃に今出せる最大限の獣気を注ぎ込んで投げ放った。
全力を振り絞ったのだろうが、ブエルゾラハと戦ったときのような冴えは感じられなかった。
ゼラムファザードは六枚の翼を荒々しく羽ばたかせて宙に舞い上がった瞬間、二つの螺旋刃の攻撃を余裕で躱して、鎖と鎖の間をするりとかい潜る。それから、クインシュガー目がけて飛翔速度を極限まで上げた。
「父さんの無念を思い知れ!」
自分の得物の間合いに入った途端、ゼラムファザードは尋常ではない獣気を帯びた両刃鎗を力いっぱい横に薙ぎ払った。
「何だと!?」
防御の態勢を取る間もなく、クインシュガーは胴体部分から真っ二つに切断された。
大量の血しぶきが飛び散り、天翼虎の獣霊は掻き消える。騎士らしき服装のレストフォルトは二つの肉塊に変わり果て、地面に落ちていった。
まだ敵討ちは終わっていなかった。憎悪を向ける相手がもう一人いる。バルドレイア帝国の宮廷魔導師だ。




