「ルリヴィア様は貴方が幸せになることを望んでいるはずだわ」って?そんな訳ないじゃない。
勢いとノリで書きました。
支離滅裂ですが、よろしければ読んでってください
私はルリヴィア・オーコット。オーコット伯爵家長女である。
突然だが、私には前世の記憶がある。
前世、私はごくごく普通のOLだった。多少の2次元趣味があり、それなりに友人もいたし、家族も普通にいてそれなりに幸せに暮らしていた。
だがある日、お約束のトラックに轢かれて、気づけばこの奇妙奇天烈ナーロッパな異世界に転生していた。
その前世の記憶は十四歳の時に唐突に思い出した。
前世の記憶を思い出した私は、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界だと気づいた。なぜなら、乙女ゲームの世界観と、この世界にはどちらも同様に月が二つあり(なんでとか言わないで)、他にも見覚えのあるゲームの背景と同じ建物。それに加えて、今世の幼馴染がメインヒーローを幼くしたような、そっくりな公爵令息。
確定演出である。
そして、最悪な事実も思い出した。その乙女ゲームの世界で、私は故人キャラだったのだ。ゲームのストーリーが始まる前、メインヒーローであり、私の幼馴染―――イアンは、婚約者だった私を喪って、性格が暗くなり、茫然自失になり、日々を淡々と過ごすようになってしまった。
そして、ヒロインの女の子に出会い、傷ついた心を癒され、元婚約者の死を乗り越えて本来の彼を取り戻すのだ。
ふざけないでくださいまし。といった感じである。
何故なら私は普通に彼のことが好きだ。愛している。生まれ変わっても主人格はルリヴィアなので、ごく当たり前に幼馴染で優しくかっこいい彼に恋をした。
だが、その彼を救うヒロインの言葉は、
「ルリヴィア様は貴方が幸せになることを望んでいるはずだわ」
…………。
いやそんな訳ないじゃない。私は聖女か?当然愛する人には幸せになってほしい。もちろん。でも、一緒に幸せになる相手が私じゃないなんて嫌だ。私のことを忘れて違う女の子と幸せに…???絶対嫌よ。
という結論に至ったので、私は、死亡イベント回避を至上命題とした。
***
「ねえ、ルル、何してるんだい?」
「あら、イアン様。私が何をしているかって?見ての通りではないですか。
身体を鍛えているのです」
「うん。いや、そうなんだろうけれど、如何して急に?」
「イアン様の婚約者たるものいつどんな状況下でも、自身の手で私、そしてイアン様をお守りできるように、です」
「でもあまり言いたくはないけど、君、運動音痴…じゃないか」
「イアン様、運動音痴も努力すれば騎士のようになれると当家の筆頭護衛が言っておりました」
「私、最近の君の行動がちょっとよく分からなくなってきたよ」
「先ほど申し上げたとおり、私はイアン様の婚約者たりうる為に鍛えているのです。最近料理を始めたのは、イアン様と駆け落ちでもした時に困らないため。剣術を始めたのは自分の手で自分の身を守れるようにするため。書庫に籠もって勉強しているのは、将来イアン様を支える公爵夫人になるため」
「うん。なんで君と私が駆け落ちするような事態に???それに君、前まではもうちょっとのほほんとしてて、こんなに苛烈に努力するような子ではなかったよね…?いや、性格はそんなに変わっていないけれど」
「天啓です」
「…なに?」
「天啓です」
「…あんまり変わったこと言うと気が触れたって、婚約解消されるかもしれないから、私以外の人間の前でこういう言動はしないように」
「それはいけません。人に見られないよう工夫しなければ…」
「見られないのは無理だからこれ自体やめてほしいってことなんだけど…」
イアン様は苦笑いしているが仕方なし。
死亡イベント回避のために私は身体を鍛えることに決めたのだ。何故なら私の死因は魔獣増加によって魔の森から溢れた魔獣に殺されること。
つまり!魔獣に負けないように強くなれば、万事大丈夫ということだ。
死亡イベントまで、残り二年。それまで万全の準備をし、満を持して死亡イベントを回避する。イアン様と死別エンドなんてクソ食らえだ。
***
最近、婚約者の様子がおかしい。身体を鍛え始め、剣術を習い、ひたすら勉強をし、挙句料理まで始めた。
おっとりした優しい性格は、多分変わっていないが、少々芯と我が強くなった感じがする。
私の愛する婚約者であることに変わりはないが、これは一体なにが原因なのだろうか。戦う令嬢…みたいな小説でも読んだのだろうか。
しかしルルは箱入り娘だ。伯爵家では通俗小説は検閲していて、特異なものは蔵書にはないはず…
やはり分からない。私が何かしたのだろうか。
前触れなく始まったルルの行動に首をかしげるしかなかった。
***
走り込みと筋トレ、護衛から指南を受ける日々が一年続き、それなりに剣術もましになってきた。
「ねぇ、ルル。もう剣を習って一年経つよ。まず同世代のご令嬢にはいないくらいに剣術が出来るようにはなったじゃないか。そろそろやめないか?」
「いやです。まだまだですから。これでは魔獣どころか害獣を退けられる程度。あと一年は続けます」
「でも、私は君が怪我をしたら本当に嫌だ。君のことは私が守れるように君の分まで鍛えるから」
「駄目です。いざという時のためです。私は折れません」
「そう…いや、君のことを止められるなんて思っていなかったけど」
「絶対、剣術はやめませんけど…お気遣いありがとうございます」
「はぁ、まったく…」
私はふふと微笑んで、剣を鞘に納めた。
***
遂に二年が経過した。
詳しい日付は分からないが、確かルリヴィアが死ぬのは初夏。一カ月警戒すればいい。
その日より私は常に帯剣することにした。
そうして、ちょうど一カ月が経過した日、
領地の村に散策に行っていた時だった。
「ガァァウゥゥッ!!!」
すぐ近くの森から突然大型の熊型魔獣が現れた。
腰が抜けそうになったが、すぐさま剣の存在を思い出し、震えながら剣を抜き、護衛が来るまで後退し続けるだけ、と、剣を振るった。
護衛が叫びながら必死にこちらへ向かってくる。
だが、私は魔獣が前足を振り下ろしてくるさまに一瞬怯み、
「ぁあっ!」
護衛が間に合う前に足がもつれてしまい、一瞬のうちに足を切り裂かれ腹部を前足に押し潰された。目の前の魔獣に対する恐怖で私は気を失ってしまった。
(ずっと、怖かった二年間はこれで、終わりなのね)
と頭の片隅で考えながら…
***
「は?今なんて言った?」
「ですから、ルリヴィア様がオーコット領で魔獣に襲われ、今昏睡状態です、と…」
「…っ、今すぐオーコット家へ行く!急いで馬を出せ!」
手紙を出すことなんて頭になく、必死に馬を走らせ、オーコット家まで辿り着いた。
「おい!イアン・バルデジアだ!開けろ!
ルリヴィア!!」
すぐに扉が開き、中からオーコット家の執事が出てきた。
「バルデジア公子…」
「おい!ルリヴィアは!無事か!目は覚ましたのか!?」
「ルリヴィアお嬢様は、大型魔獣に襲われ足に怪我を…それと腹部に乗られたことにより、かなりの痣が。怪我自体は致命傷ではありませんが、足の怪我による出血の治療は済みましたが、怪我による高熱が引いておらず…」
「生きてはいるんだな…
怪我の具合は…?熱は…」
「現在命に別状はありませんが、高熱により、先程まで一時危ない状況でした。今はもう医者も控えておりますので、どうぞこちらへ」
「あぁ…」
ルリヴィアの部屋まで向かうと医療器具や、包帯などが置いてあり、独特な医薬品の臭いがした。
ルリヴィアの両親は悲痛そうに顔を歪ませていた。そして、こちらを見て口を開いた。
「イアン公子。早いな…来てくれたのか…」
「…医者によれば、ルリヴィアはもう大丈夫だそうだ」
そう言って、ルリヴィアの眠っている寝台のカーテンを開けてくれた。
ルリヴィアは、頭を打ったのか、頭部に包帯が巻いてあり、顔は赤く、苦しそうに浅く呼吸をしていた。
「ルル…ルル…」
ルルの手を取り、ぎゅっと握った。
そのままずっと握っていると、
「い、あんさま?」
薄く目を開けた。
「ルル…!
…ルル。起きては駄目だ…身体はまだ酷く痛むだろう。ほら目を瞑って」
「イアン、様…」
「ルル、いいからまだ眠るんだ…」
「ねぇ、イアン様…!」
ルルの大きい声に驚く。
ルルは私の手を掴んで、必死に言葉を紡ぎ出した。
「ねぇ…絶対、他の女の子と幸せになったりしたら駄目、だから…イアン様は、私以外と、一緒になったりして幸せになんてならないで。私を、忘れたりしないで。私を置いてか、ないで…私、イアン様と、結婚したくて…頑張ったのに…イアン様…イアン様、うぅぅ…わぁぁぁんっ、やだ、やだ…イアン様が他の女の子と結婚、するなんてやだよぉっ…うっ…ひっくっ。ぅう」
ルルは泣き出した。そして、私に他の女と一緒になるなと怒っている…?
まさか、浮気しているとでも思っていたのか!!??
ちらりとオーコット伯爵夫妻を見ると物凄い形相で私を睨んでいた。
「いや、違います!浮気なんてする訳がないでしょう!こんなに可愛くて優しい子が婚約者なのに!」
「うっうぅ…か、可愛い…??」
「可愛いよ…!ルルは世界で一番可愛い!」
「ほんと?」
「当たり前だろう!」
「桃色の髪で、空色の目をしてる、背が小さくて可愛い同い年の女の子、好きになったりしない?」
「君以外好きになる訳がない!」
「…よかった」
そう言うと、ルリヴィアはすっと眠りに落ちた。
あまりにも具体的な女の子の特徴が気になったが、眠るルリヴィアを起こさぬよう、そっと部屋を後にした。
***
「ところで公子…」
「はい」
「身の潔白を晴らすためだからって、怪我で高熱の娘の傍であんな大声を叫ぶのはいかがなものかね」
「…はい…」
「まぁ、いいが、ところで…
あの子の言っていた女性に心当たりは、あるのかな??」
「ありません!!!」
***
目が覚めると、外は明るく、朝のようだった。
足がまだ痛むが、他に痛みはない。熱も引いたようだ。自分の体の調子を見ていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
ガチャっとドアが開くとイアン様がいた。
「イアン様!?こんな、あ、朝に、淑女の部屋に入るなんて…!」
「あ、いや、すまない…ここ一週間はここに滞在していて、朝は私が、君が起きていないかどうか確認していたから…すまない」
「…いえ、まぁ…いいですけど…」
「「…………………………」」
「えっと、ベッドの横の椅子…座ってもいいかな?」
「どうぞ…」
そっとこちらに近づき、椅子に座ると、イアン様はおもむろに口を開いた。
「ねぇ、ルル、体調はどう?身体に痛みとか…」
「足の痛み以外特に何もないです」
「そう…よかった…じゃあとりあえず医者を呼ぼうか」
そう言ってチェストの上のベルを鳴らして、またこちらに向き直った。
「ね、ルル…聞いてもいいかい?」
「はい」
「あのさ、君なんだかここ二年ずっと、今回のことを前から分かってたみたいな言動だったよね」
「えっ、あの、それは―…」
「別に言いたくないなら言わなくてもいいよ?」
「えっと、ですね…」
私は転生関連のことは言わず、かいつまんで話した。
「つまり、二年前、君は夢で自分が魔獣に襲われ死んで、それを機に病んでしまった私とある少女が恋に落ちることを知った。と?」
「はい…」
「じゃあ君が急に剣をし始めたのも、この一件のため?」
「そうです…」
「はぁ…夢の通りにならなくてよかったよ……本当に…」
「…あの、夢で貴方は、本当に幸せそうに恋をしていて、私はそれが嫌で、運命を変えてやろうって…行動してしまって…その、怒っていませんか?」
「ん?怒ってるよ?」
「ごめんなさい。貴方の運命の相手を奪ってしまって…でも、私は貴方の大切な人を奪うよりも、貴方と、離れたく、なくて…」
「あぁ違うよ。怒ってるのは、魔獣の話」
「え、」
「どうして誰にも相談しなかったの?」
「…剣で強くなれば、死なないってことしか頭に、なかったです。ごめんなさい」
「はぁ、全くもう…」
「とにかく無事でよかった…君が死んでしまったら、後を追ってしまうところだった」
「えっ!冗談ですよね」
「冗談じゃないけど」
笑いながら言うので少し怖くなった。
「まぁ、君が生きていて、私の婚約者ってことに変わりはないから、良しとしよう」
「婚約者って、でも、足に傷が…」
「そんなのどうでもいいよ」
「どうでもいい、って…」
「君は私の愛する婚約者。これは結婚するまで絶対に変わらない」
イアン様はそう言ってはにかんだ。
「愛してるよ、ルリヴィア」
その言葉を聞いて、私は涙が止まらなくなった。
心の底から生きていてよかったと思った。
「私も、愛しています。イアン様」
ちなみにヒロインっ子はサブヒーローである帝国筆頭魔法使いとくっついてます。