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第009話 戦闘方法


 サポート人格であるメトルとの初コミュニケーションを済ませた私は、メトルに聞いた。


〈メトル、アキが保護された村の場所ってわかる?〉


〈わかるよー。あ、でも待って、最初に教える事があったのー〉


〈うーん……早く村に行きたいから、歩きながらでいい?〉


〈ダメだよー。あかりちゃん、力を抜いてそのまま立っててー〉


 ……何だろ? まぁ、言われたとおり立ってよう……。


 私の提案が却下された事に軽くショックを受けつつ、メトルの言う事に、疑問を持ちながらも従うことにした……。


〈……じゃ、いくよー〉


「……ああああああぁぁぁぁ…………ハァハァ」


 私は、メトルの合図の直後、私の体に起きた異変に、思わず驚嘆の声をあげてしまう……。


〈あかりちゃん、大丈夫ー? 今のが勇者システムの能力なのー〉


 ……こ、これが勇者システムの能力。


 メトルの合図で、私の体中に溢れる全能感! 頭の中にも様々な知識が詰め込まれていて、その状態に身動き一つ出来なかった……ヤバすぎる。


〈初めてだからー。発動の感覚を知って貰うためにわざと抑えなかったのー。あかりちゃん。歩きながらじゃなくて良かったでしょー〉


 確かに歩きながらだと、どうなっていたかわからない……それ程の異次元さだった……。


〈うん。メトルありがとう〉


 私はメトルにお礼を言いながら考える……そして、こう結論付けた。


 メトルが自発的に私に対して発言する時は、私の考えよりも、メトルの意見をまず考慮しようと……メトルはサポート人格だ! その発言は、私の事を思ってだろうし……ついでに可愛いし。


〈いいよー。じゃ、詳しく教えるねー〉


 メトルが教えてくれたのは私の戦闘方法! 今、私の中には、私とメトルの二つの意識があり、戦闘時、危険時、又は任意で瞬時に私とメトルは融合する。


〈あかりちゃん。戦った事なんてないでしょー〉


〈無いけどさぁ、さっきの状態だと戦った事があったとしても無理だよぉ……〉


 私は、戦いの経験の有無など、あの状態には関係ないと弱音を吐いてしまう……。


〈それはさっき言ったでしょー。わざと抑えなかったってー。仕方ないなあー。今度は完全な融合をするから動いてみてー。……いくよー〉


 またメトルが合図を出すと、その声を聞いた瞬間、私はビーに意識を向けた。


 即座にビーが消え、私は鎧を着て剣を持つ姿に変身する。


 鎧は頭から足の先まで、スラッとした全身鎧、手に持つ剣は細く長い。


 その剣を振るう私の動きは洗練で華麗だ! 暫くして、剣舞のような動きを止め、手を大きな木に向け魔法を放ち始める。


 様々な魔法を放っているとスーっと私の意識が浮上する感覚と共に素の自分に戻ったと認識出来た。


〈どうだったー。これなら戦えるでしょー〉


〈う、うん。……今の私だよね? ……いや、確かに自分で動いてた自覚がある〉


 今の融合は、私の素の意識が薄まり戦闘に特化した意識に切り替わった、って例えが近いかなぁ……それか、覚醒状態になった私! ……一応補足すると、私を私として認識出来てる。


〈そうだよー。じゃ、説明の続きするねー〉


 メトルが言うには、勇者システムには蓄積されたあらゆる戦闘に関する情報があり、情報源はこの世界の争いの歴史だ。


 その情報を元に様々な能力を創造し与えるのだが、これには知識や技術も含まれていて、一纏めに能力と表してるそうだ……それは神様がシステムに組み込んだ理念の基が、能力を与える、だからだ。


 ただ、能力を与えただけでは、急には使いこなせない……そこをサポート人格が補う。


 ここまでは魔王システムも同じ。


〈魔王システムを基にしてるからねー〉


 違うのは、魔王は直接、私の場合は代わりにメトルが勇者システムから能力を与えられる。


 メトルに与えられるとは言ったが、これは建前……実際には、メトルと勇者システムは、ほぼ同一のようなもの、勇者システムの顕在する能力、知識、技術の全てをメトルは十全に扱える。


 そして、十全に全てを扱えるメトルと融合する事によって、メトルの持つ全ての能力と戦闘に関する知識や技術が私に共有され十全に扱える状態になる……この手順は、元の世界に戻る事を考慮してるんだろうなぁ。


〈ここまでが最初にした融合だよー。実は完全な融合の一歩手前状態なんだよねー〉


 完全な融合の一歩手前状態だから、私は、素の自分では絶対出来ない事を、出来てしまうというギャップや違和感、戸惑い、一番大きいのは未体験への恐怖心で動けなくなったようだ……つまり、頭と体は準備出来てるけど、意識が否定していると。


〈それでー。二度目の融合が完全な融合ー。メトルの役割が重要なのー〉


 メトルが深く融合する事によって、私の意識に生じたギャップや違和感、戸惑い、恐怖心を抑えてくれる。


 それらが無くなった私が、メトルと共有した全てを自分の実力と認識し、扱ったのがさっきの動きらしい。


〈完全な融合に慣れていけば、一歩手前の融合でも、同じように動けるようになるんだけどねー。でも、時間が凄いかかるんだよー〉


 なるほど、確かに違いは、意識の問題だけだ……実際に体験した事が無いから、受け入れられず動けなくなる……逆に慣れる程の成功体験を積んだなら、それが経験値となり、共有した全てを自分の実力として受け入れられる……時間がかかるのは、その水準が最高峰だからだろう。


 だけど、慣れるのに時間が掛かっては、即戦力にならない……そこで、メトルの出番だっ! ワー、パチパチパチ。


 メトルの活躍で、戦った事のない私が最強勇者に大変身っ! ……メトルさん、いい仕事してますね、さすがです。


〈メトル。完全融合をずっとしている事は出来るの?〉


 私は、完全融合がずっと出来れば、その間、私は最強勇者でいられるから、これは、いい案じゃないかと聞いてみたが……。


〈出来るけど、したくないのー。…………だって……あかりちゃんと話せなくなるんだもん〉


 グハァっ! ……し、真の最強はメトルちゃんやったんやー! カワイイが最強過ぎるぞぉぉぉっ! ………………オホン……ンー、ンー……アー、アー…………この、突然のメトルのデレに私は完全敗北した……そして、私の最強なんてただの張りぼてに過ぎず、真の最強の称号が相応しいのはメトルだったのだと思い知らされた一幕だった……完。


 あー……ただいま! 一瞬、違う世界に行ってたわぁ……。


〈戦闘中なら我慢できるけどー、ずっとはメトル、つまらなーい〉


〈カ、カワイイ……おっと、ゲフンゲフン〉


 どうやら、完全融合してる間は私の状態や状況、思考などは把握出来てるが、意志疎通が出来ないようだ……おそらく、私の意識の邪魔をしないためだろう。


〈そっか。……私もメトルと話せた方が嬉しいから、完全融合は、普段はいざという時の奥の手にしとこうか〉


 嬉しいと言ったのは本心だけど、それ以外にも、メトルには、まだまだ聞きたい事も、教えて欲しい事もある……話せなくなると私も困る……。


〈うん。ありがとうー、あかりちゃん。普段の状態の時は、メトルに任せてー〉


 いい子だなぁ……任せたよっ! メトル。


 私は完全融合すれば、最強勇者になれるけど、それは、戦闘時以外では奥の手! 融合の一歩手前では動けなくなる……必然的に普段は素の自分ままになる。


 そこをメトルが周囲警戒や、危険察知などしてくれると、で、何かあれば即座に完全融合かぁ……これなら、この世界を憂いなく行動出来そうだ。


〈あかりちゃん。これが最初に教えなくちゃいけない事だったのー。待たせてごめんねー。……それじゃ、森の中にある村に向かって出発しようー〉


 ……もうすぐアキに会える。


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