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第022話 教会


 部屋を経由してから駐車場に着くと、既に結構な人数が集まっていた。


 そこで暫く待っていると、まだまだ集まってきて、最終的に村人全員が集まった。


 えーと、全員? 強制してないのに何で? うーん……。


〈メトル、こんなきっちり全員揃うと、何か理由があると思うんだけど分かる?〉


〈うん、この世界の在りようが原因だよー。魂レベルで刻み込まれてるねー〉


 この世界は、奪い、奪われ、争い続けた歴史の世界。


 魔王の存在が抑止力なっていても、それでも争いは完全に無くなっていない。


 交流があっても、突然、牙を剥いてくるかもしれない、弱味を見せたら餌食にされる、そんな世界。


 ……今更ながら、アキ達の状況はかなり危険だったかも……。


 だからこそ、仲間意識が非常に強い! 仲間の死を弔う機会を後回しにするなんてあり得ない程に……それは、森の中の村も例外じゃなかった。


 自分達以外が、いつ敵になるか分からない……不安、疑心暗鬼……自ずと仲間内で結束し、依存しあう。


 そうしてこの世界の住人の人間性は形作られてきた……大多数は、それが強すぎて排他的にまでなっているけど……。


 つまり、この結果は当然の既決だとメトルは教えてくれた。




 メトルのお陰で謎の解けた私は、皆を纏めている村長の手伝いをしているアキとミオンの元へ向かう。


「アキ、ちょっといい?」


「ん? ああ、どうした?」


「この後アキにガイドしてもらうの、少し変更したくて……」


「……まあ、そうだよな……」


「まさか、全員集まるなんて……。私は、この三分の一も集まればって思ってたんだけど……」


「確かに、この人数相手にスムーズにガイドなんて難しいかもな……」


「人数が増えた分だけ時間も手間もかかるしね……。それに重要なのは教会に案内することだからさ、ガイドの方はこうして欲しいの」


 私の想定していた人数だったら、教会に向かう道を商店街通りを経由して、一軒一軒説明していくつもりだったけど、さすがにこの人数だと時間と手間が掛かりすぎて無理! だから村長と部屋割りの時に集まった人達にアキが簡単なガイドをして、他の人達は後で村長達から説明してもらう形に……。


「どうかな?」


「ああ、そこまで人数を絞りこめるなら俺の方は問題ないぞ。それに今回ガイドする目的は、知ってもらって皆の行動範囲を広げることだろ? 周知されるなら方法は何でもいいし、なんなら希望者募って改めてちゃんとガイドする機会をつくればいいしな」


「うん。じゃ、アキは先頭でガイドお願いね。私は最後尾から、はぐれたり遅れたりする人が居ないか見ながら付いていくから」


「わかった。……ミオンはどうする? 俺としては、あかりの方を手伝って欲しいが……」


「……うん、お兄ちゃん。私、お姉ちゃんの手伝いするね」


「ありがとう、ミオンちゃん」


「じゃあ、俺は村長に伝えてくるな」


 アキが村長の元へ向かい、その後ろをミオンが付いて行き、村長と話し合うと二人はそれぞれ人を集めに動き出す。


 完全融合しないと会話の出来ない私は、それを眺めていた……。




 駐車場には、アキと村長を先頭に、直ぐ後ろにアキとミオンが集めたガイドを受ける人達、少し間を置いて歪ながらも隊列を作る村人達、そして最後尾に私とミオンが立っている。


 既に皆への村長による説明とアキの補足は済み、後は動き出すのを待つ状況で、隣のミオンを見ると様子がおかしい事に気付く。


 どうしたんだろ? さっきまで積極的に手伝いとかしてたのに……。


「ミオンちゃん、大丈夫?」


「……う、うん」


 そう返事はするけど様子がおかしいままのミオンの事を私は考える。


 ……ああ、そうか……手伝いをする事で気を紛らわせてたけど、いよいよとなって色々な事が頭に浮かんで心の中がグチャグチャになってるのかも……。


「ミオンちゃん、もうすぐ出発だね。……お姉ちゃんからミオンちゃんにお願いがあるの」


「……う、うん。……な、何? お姉ちゃん」


「これから移動するのに、お姉ちゃんが迷子にならないよう、しっかりしてるミオンちゃんに手を繋いでいて欲しいな。ミオンちゃん、お願い」


「……うん。……いいよ、お姉ちゃん」


「ありがとうミオンちゃん、お姉ちゃんは安心だよ」


 ……これで少しはミオンちゃんの気が紛れればいいな……


 私はミオンの手を優しく握った。




 私はミオンと手を繋ぎながら、ミオンが深く考え込まないよう、私に意識が向くよう、話しかけていると、私達の前の集団が動き出した。


「あ! ミオンちゃん、前が動き出したよ。私達も行こう!」


「うん」


 私達はしっかりと手を握って歩き始めた。




 暫くは、前を進む人達から外れる人が居ないか注視しつつ、ミオンと話ながら歩くペースは一定を保っていたけど、それが段々落ちていき、今は止まったり進んだりを繰り返している。


 私には、その理由が分かる。


 駐車場を出てからの移動は、主に車道を歩いてるから、左右の町並みはちょっと離れてるし、建築物も初めて見れば驚くけど、ただデカいだけと認識すれば、どれも似たり寄ったりで、キョロキョロと眺めながら進める位には落ち着いて歩ける。


 だけど! 商店街通りは衝撃が強すぎた……。


 派手な店構え、漂ってくる美味しそうな匂い、陽気な音楽、綺麗なショーウィンドー、私も驚いた趣の変わった店、そんな様々な雰囲気を醸し出す店が一本道の左右に軒を列ねている。


 そんな空間を目にしたら、先を進む人達が立ち止まってしまっても仕方ない……。


 ……何で、こんな見てきたかのように分かるのかは……私の目の前を進む人達が、今、その状態だからだよ。


 私は、ミオンに頼んで「また来る機会はあるよ」と、伝えてもらいながら前の人達の背中を追いたてていった。




 それにしても本当に色々な店があるなぁ。


 最初、ガイドする候補にデパートもあったけど、あそこは立体的で複雑だから確実に迷子が出ると却下して、こっちにしたけど、全然負けてない……一本道なら迷子にもならないだろうし……。


 ……やっぱり、この店全部も神サービス有りだよね……。


 ダダンッ! 突然ですが、神サービスとはっ! このビーの世界の各施設、色々利用すると、消費した物、減った物は補充され、新しい物、種類が増え、リアルタイムでの対応がされたりする……誰も居ないのに……。


 まるで、このビーの世界を見守っている存在が居るかのような、理解不能で不思議なこの現象! ……すなわち! 神様の超パワーで快適にしてくれるサービス! 略して、神サービス! と、私が勝手に名付けて呼んでいるのでしたあぁぁ! ……解説おつ。


 ……でも、この神サービスも、いつまで続くか疑問だ……。


 前に聞き齧った説明だと魔王を倒すまでは大丈夫だと思うけど、私のパターンは通常の勇者の魔王討伐行程とは大分変わっちゃってるからなぁ……。


 ……おっとイカンイカン……今は村の皆を保護してる状態だから、ついつい杞憂民が顔を出してしまった……切り替えねば……。




 ちらほらと立ち止まってしまう人達を追いたてつつ、何とか商店街通りを抜けると、また一定のペースで進み始め、とうとう教会に到着した。


 先に到着した人達は既に教会内に入っているようで、私達も前の人達に続いて教会内に足を踏み入れる。


 開いている扉を潜り中に入ると、教会内は様々な感情が渦巻いていた。


 私が思わず立ち止まると、ミオンは私と握っていた手を離し、足早に進んでいく。


 そのミオンの背中を見つめながら、私はメトルに声をかけた。


〈メトル。……完全融合してっ!〉


〈うん、わかったー〉


 有無を言わさぬ私の要請に、メトルは即座に答えてくれた。


 私は、この光景を、この感情の嵐を受け止めるため完全融合した。


 変化は直ぐに訪れ、さっきまで混雑した音でしかなかったものが、私の理解できる言葉となって私の耳に届く。


 私は周囲を見渡し、数々の言葉に耳を傾けながら、ゆっくりとミオンの後を追った。


「……うっ……ううぅ……うぅ……」


 嗚咽を漏らす者……。


「畜生! 魔王めぇぇぇ! よくもおぉ!」


 怒りを露にする者……。


「ありがとう。……貴方のお陰で私達は……」


 感謝を述べる者……。


「よく頑張ったね。……偉かったね……」


 労う者……。


 それぞれがそれぞれの感情で死者に相対していた。







 そして……。

















 









 私がたどり着いた先では、ミオンがレオンの内包された水晶にすがり付いて泣き崩れていた……。




 隣の水晶には小さな男の子と腕が内包されており、その水晶の前にアキは佇み、静かに涙を流しながら何かを呟いていた……。


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