第021話 魔法
魔王システムが導入されると、ある変化があった……それが魔法。
どうやら、この世界には元々魔法は存在しなかった。
そこに突如魔王が現れ、魔法を使って戦いに参入し始める。
その結果、魔法を使って戦う魔王は圧倒的に強過ぎた。
……だよねぇ……肉弾戦主体の戦いに、遠距離から一方的に魔法を撃たれちゃ……。
これでは、均衡の維持は不可能と判断した魔王システムは魔王に対抗出来る様に魔法の因子をこの世界にランダムにバラまいた。
……またランダム……しかも説明無し……雑過ぎない……。
そして、魔王との戦いに生き延び、魔法の因子を得た者が、魔王の使った魔法の真似事をし、魔法を発現させる。
更にそれを見た別の要因子者が真似をし、発現させていく。
こうして攻撃魔法がこの世界に広まり定着した。
だけど、魔法を発現した時点で思考が止まってしまい、創意工夫等されず、威力重視のぶっ放す系の魔法ばかりになってしまった……脳筋だから。
……アキの言っていた魔法の偏りの原因はこれか……色々な属性があっても、攻撃方法がほぼ一種類とか……。
強化系の魔法は偶然の産物だった。
強くなった自分を想像しながら訓練してたら発動し、それに気づけたからだ。
まぁ、これが発動したのは自然の流れかな……むしろ、脳筋のくせによく変化に気付けたなと誉めてあげたい。
強化魔法の存在が知られてからは、あっという間に広まり進歩した……脳筋に一番向いてる魔法だったから。
……ですよね……私の強化のされ方……常軌を逸してるし……。
不思議だった回復魔法だけが発展していなかったのは……もうこれはどうしようもない……。
何故なら、戦い方もだが、皆、怪我をしても、そのまま突っ込み死んでしまうから……正に脳筋の悲しい性質。
そこは一度止まろうよ! ……でも、納得……使う機会が無いんじゃ、他と比べてそりゃね……。
頑張り屋で可愛いミオンの様に、出番の少ない回復魔法を自ら鍛えようとする脳筋はほとんど居なくて停滞しているというのが答え。
ただ、魔法は、扱う人の想像と努力次第で無限の可能性があるそうだ。
例えば、この世界にあるアキの腕を治す方法も、回復魔法が上達した人によるものらしい。
へー、そうなんだ……でも、現状でそんな希少な存在を探すより、ミオンちゃんに頑張って上達してもらう方が早い気がするなぁ……。
朗報として、私とアキもいつか自らの力のみで能力を扱えるようになれば、魔法の進化や改造、新しい魔法を編み出す事が出来るようになると。
おぉぅ、夢が膨らむ話だけど……いつになる事やら……。
メトルの説明でアキと序でに私にもあった疑問は一応解消されたので、アキは再び集中モードに入ってしまった。
……アキ……凄いやる気なのはいいけど、力が入りすぎな気も……私が適度に気を抜くように促していこう。
アキの様子を気にしつつ、私もメトルに礼を言ってから、三人での会話を再開してお昼までの時間を過ごした。
お昼になり、集中していて中々動き出さないアキを無理矢理立たせると三人で食堂に向かう。
歩きながらもブツブツと呟き、考え事をしてるアキをミオンは手を引っ張って誘導し、私は、そんなアキに呆れながら付いていった。
食堂に着き、席に座って入口を眺めながら待ってると続々と村の人達がやってくる。
ウンウン、ちゃんと時間通り集まって来たね……ここのご飯が気に入ったっのか隣のミオンちゃんがソワソワしてる……カワイイなぁ……遅れず食べれそうで良かったね、ミオンちゃん。
ミオンの様子にデレデレしていると、村長も食堂に現れ、真っ直ぐ私達の所に来て同じ席に座った。
この後の予定は、朝食の時に伝えてあるけど、一緒の方が何かと調整しやすいからね……食べながら、再確認しておこう。
そうして全員が揃うと、村長が軽く声を掛けてから昼食が開始される。
やっぱり村長なのは伊達じゃないね……朗らかな中でも一瞬、空気がピシッとしたよ。
三度目となると、皆、手順に慣れたようでスムーズに動き出す。
ただ、新しく登場した料理におっかなびっくり手を出す人、戸惑いからフリーズする人達が見受けられた。
あぁ……見た目とか色合いがねぇ……それなのに、匂いは暴力的にまで食欲を刺激してくるという……。
そんな所にアキがさっと顔を出してフォローして回っていた。
フフフ、さっきまで自分の世界に入り込んで上の空だったのに……こういうところが、如才ないというか、面倒見がいいというか……お兄ちゃんなんだよねぇ……。
そう感心しつつ、そろそろ私達も動こうかとミオンに目を向けると、ミオンはアキの後ろを付いて行きたそうな顔でアキを見ていた。
ぬおー! し、しまった、感心してる場合じゃない! ぐぬぬ、おのれぇアキ! さすが我がライバル! その無意識に迸る兄力で私の可愛い妹ミオンちゃんを魅了するとは! ……だが甘いっ! ここからは、私のターンだっ! 私の真の姉力を思いしるがいい。
「ミオンちゃーん、私達もご飯取りに行こっかぁ。……そうだ! 今日のメニューで私のオススメを教えてあげるねぇ。それを食べたら、美味しすぎてミオンちゃんの可愛いほっぺたが落ちちゃうかもねぇ。えーん、そうなったらお姉ちゃんどうしよぅ。でも、ミオンちゃんに食べて貰いたいなぁ」
どーよ! これが修正した真お姉ちゃんだああぁぁ! ……どやぁ。
「……う、うん」
……あっれー? 思ってたリアクションが返って来ないんですけど……あ、そっか! ミオンちゃん、照れてるんだな! ウフフ、お姉ちゃんは分かっているからね。
自己満足した私は、何故か苦笑いしているミオンと料理の元へ、色とりどりの料理に目移りするミオンに私のオススメを教えつつ、自分とアキの分を取り分けていく。
ご飯の用意が出来、席に着いているとアキと村長が戻って来たので食事を開始、料理に舌鼓を打ちながら、この後の事を話し合った。
昼食も済み、村長からの通達も聞き、食堂に居た人達がそれぞれ部屋に戻るのを見送った私達は、自分達の部屋へ戻る為、廊下を歩いている。
フハー、ご飯美味しかったなぁ……それに、ミオンちゃんから「お姉ちゃんのオススメ、美味しかったよ!」って言われちゃったし……満足満足。
思わぬご褒美も貰えて、テンション爆上がりだった私も、歩を進めるごとに気持ちが沈んでいく……。
……さてと、次はいよいよ教会への案内か……どれくらいの人が参加するかな? でも、今回行かなくても、これ以降は、今回の参加者に案内してもらえばいつでも行けるようになるし……心の整理を優先してもらいたいな……。
「アキ、この後、駐車場に集まったら、予定どおり教会までの道すがら、ガイドお願いね」
「ああ、任せとけ。……皆の様子もな」
……アキの事も心配なんだけど、任せられるのはアキしか居ないし……メトルとは、直ぐに相談できる状態にしときたいから……アキ、頼りすぎで……ごめんね……。
「……ミオンちゃんは大丈夫?」
「……うん。……お兄ちゃんと約束したし……ちゃんとお別れする……」
……強いなぁ……私からすると、ほぼ赤の他人でも、人の死に対するショックは尋常じゃなかったのに……アキやミオンちゃん、村の皆は、これから家族や友人、親しかった者の死を現実に受け止めに行く……私も、この強さを見習わないと……。
そう心を奮い立たせると、重くなった足取りに力を込め、部屋へ向かって歩み続けた。




