第020話 ゲーム
〈この方法はね、あかりちゃん達の世界のゲームを参考にしたんだってさー〉
「……ゲーム……」
メトルの思わぬ言葉にアキは声に出して呟き、ミオンは何の事か分からずキョトンとしている。
私は、そういえば動画漁りをしていて、よくゲーム動画を見かけたなと思い返していた。
……ゲーム動画か……チラッとしか見てないけど……キャラクターが現実離れした動きで攻撃したり防御したり必殺技を出して戦ってたな……それを誰でも操作して遊んでた……メトルの説明だと、そんなゲームを参考にしたのかも? ……子供でも遊べてたやり方なら、拒絶反応も出なそうだし……。
ゲームとの類似性による効果に、この方法にした事に頷ける。
〈それで、あかりちゃんとアキちゃんの違いはね、あかりちゃんは自分の意思で動いて戦うけど、アキちゃんは動きを指示して、動かして戦うのー〉
うん、やっぱりだ……アキの体をキャラクターに見立てて、アキが外から操作する……まんま、ゲームと同じだ……だとすると……アキも人並みにゲームをやってたはず……その腕前次第で本当にアキは強くなりそう……。
〈……なるほど、何となくは理解した。……それで、実際、どうするんだ?〉
アキは自分の事なので積極的に聞きにいってるようだ。
〈始めに、アキちゃんが戦う! 能力を使う! って、意識すればいいのー。そうすると意識が体から離れた状態になるからねー〉
〈ああ、戦う前の準備って感じだな〉
〈そう、そしたら、動かすのは簡単だよー。アキちゃんが頭の中で、こう動け! って思えば、その通りに動くよー。でも、アキちゃんの体で出来ない動きは思い描いても無理だからねー〉
……それは、そうか……空を飛ぼうと思っても飛べる原理が無くちゃね……。
〈うん? ……だったら、こんな手間掛けずに普通に自分で戦っても同じじゃないか?〉
〈……アキちゃんは急ぎすぎだよー。今のは動かし方を言っただけだよー。……アキちゃんはね、パパが咄嗟に与えた能力で普通の人よりは強いんだけど、魔王が相手だと全然ダメダメなのー〉
アハハ、メトルちゃんたら……意外とはっきり言うな……。
〈……ああ、分かってる。あかりからも聞いたし……だから、俺に追加で能力を与えて……今、その説明をしてるんだろ?〉
〈そうだよー。ここからが重要なんだよー。……まず、追加で与えられた能力でアキちゃんの体を強化して、ダメダメなアキちゃんを魔王と戦えるまで強くするのー〉
それは、大事……私も完全融合した時は、自動で強化されるしね。
〈そうして、アキちゃんの体を与えられた能力を十全に扱える状態にするのー〉
〈……そうか。そこまでやって準備完了だったんだな〉
〈うん。……後は、アキちゃんがこの世界に来て習った戦い方や、能力と一緒に与えられた戦闘知識や技術、魔法を使って、自由に思い描いて戦うんだよー〉
……ここまで聞いて……私にこの方法は難しいな……。
〈わかった。……確かに俺次第で強さが変わるな……〉
〈アキちゃん、まだ続きがあるよー。アキちゃんは、頭の中で動きを思い描く分、あかりちゃんより一行程多いのー。それに、高度な動きや技術、魔法も戦闘中に思い描くのは難しいのー。だから、そんな行程や複雑さを、短縮、簡略化する為に、それぞれの一つ一つの動作をコマンド化して組み立てられるようにしてあるのー〉
あぁ……完全に私には無理だ……難しすぎる……。
〈……ますますゲームじみてきたな……〉
〈それで、実際に体を動かさなくても、頭の中でシミュレーション出来るようになってるから、練習も兼ねて色々考えて編み出してみてー〉
〈お! それなら、色々試せて捗りそうだな〉
アキは私と逆でやる気が上がった気がする。
〈それじゃ最後にパパからの注意点を言うねー。……これは、あくまで参考にしただけだから、ゲーム感覚で戦っちゃダメだよー〉
あぁ! そうだった……戦うのはゲームのキャラクターじゃない……アキの体だ! 傷つくし怪我もする……最悪の場合……。
「アキ!」
私は戦いに対する危機感が薄れている事に気付き、アキにも注意を促す為に呼び掛ける。
「ああ! 分かってる。……ゲームと聞いて、勘違いしそうになってた……戦いは遊びじゃないって分かってた筈なのに……」
アキは無くなった腕をさすりながら、レオンとシオン、犠牲になった人達を思い返しているのか、悲愴な顔つきになった。
「……お兄ちゃん……」
ミオンも察したのか、心配そうにアキを見つめている。
「……アキ……戦う時は、油断しないで、慎重に無事にを目指そう……ミオンちゃんを見守るんでしょ?」
私は、思い詰めてしまったアキが無茶な事をしないように、命を大事にする目的を思い出させようとした。
「……ああ……そうだな……ミオン……あかりの為にも……俺は……」
アキは私の声を聞いて、何やら呟いてる……。
「ミオンちゃん、心配しないで……これからは、私も一緒だから」
「……うん」
……ミオンちゃん……頷いてはくれたけど、心配そうなのは変わらないか……安心させる為に私も頑張らなくちゃ……。
〈メトル……大事な事を改めて思い知らされたよ……。説明もありがとうね〉
〈うん、いいよー。それがメトルの役目だし、パパからの忠告を伝えただけだよー〉
〈それでも、メトルにはいつでも感謝を伝えときたいの。……それじゃ、アキ、ミオンちゃん、お昼まで自由にしようか〉
そう言って、アキの能力説明会を締めくくった。
私は、お昼まで何をしようかと考え、埋め合わせじゃないけど、メトルと会話することにした。
そこに、ミオンも参加して三人の会話は楽しいものだった。
特に、メトルがお姉さんぶってるのが可愛く、ミオンも妹扱いを嬉しそうに受け入れていて、その場に居れて私は満たされていた。
アキは、一人で集中してる様子だったので、多分、戦いのシミュレーションをしてたのだと思う。
それぞれで過ごしていると、アキの声が頭の中に届く。
〈メトル、ちょっといいか?〉
〈んー? アキちゃん、なーにー?〉
〈今、ざっとシミュレーションしてみたんだけど、色々組み合わせると、一つの技として確立出来そうなのが幾つも有るのに、何でこんなバラバラなんだ? もしかして、俺がゼロから作り上げる為にか? ……魔法も何か偏ってるし……〉
〈えーと、それはね、この世界がノーキンの世界だからだよー〉
〈……ノーキン? ……何だそれ……〉
……ノーキンって何だろ? ……アキも分かってないみたいだし……ノーキン……ノーキン……あ! 脳筋の事かな……。
〈メトル……ノーキンって、脳まで筋肉の脳筋の事?〉
〈そうだよー。あかりちゃん正解ー〉
〈ああ、なるほど……よく分かったな、あかり。……それでメトル、どうゆう意味なんだ?〉
〈今もまだまだそうなんだけど、この世界の住人は脳筋だらけだったのー〉
この世界はずっと争い続けていた事は、神様に説明されて知っていたけど、どの様にかは、詳しく知らなかった。
メトルの説明を聞くと、正に脳筋としか感想が無かった。
戦い方は、武器を持ってぶつかり合う、そんな原始的な方法で、数が多い方が基本勝つ戦いだった……脳筋だから。
その原始的な戦いが続く歴史の中で、個人の強さが突出した者も時々現れ、そうした者達が戦闘技術を磨き上げる。
それを子や弟子に伝え、更に研磨されて私達の能力に寄与している。
だけどそれは、武器の扱い方等で、技として昇華したものではなかった……脳筋だから。
そんな強者も、対個人やある程度の数には強くても、それ以上の数の力には勝てず、誰もが歴史から消えていった。
そうして、変革の可能性のあった者も脳筋だった為、変わらず原始的な戦いは続いた……脳筋だから難しい事は考えない。
争う理由も、他から奪えばいいと、至極シンプルな考え方からだ……脳筋ゆえに。
私が砦に感じた街も、防衛の為に自然とああなったようだ。
見かねた神様が、魔王システムを導入する程にこの世界は脳筋の世界だった。




