第019話 アキの能力
部屋に戻ると、飲み物とストックしてあるおやつを用意し、ミオンに食べ方を教え、それを摘まみながらアキが戻るのを待った。
……フフ……さっき朝食を食べたばかりなのに……おやつが別腹なのは、世界が違っても共通なんだ……あれ? おやつじゃなかったかな……。
食べると、驚きの表情から美味しそうな表情に変わるミオンを眺めながら、そんな取り留めの無い事を思っているとアキが戻ってきた。
「悪い、待たせたな」
「ううん、ミオンちゃんとまったりしてたから大丈夫だよ」
「おかえり、お兄ちゃん」
それぞれ言葉を交わしてから、私は本題に入る。
「それじゃアキ、メトルに聞いてくから……そこにある物は自由に手に取ってね。……ミオンちゃん、アキの事お願いね」
アキにテーブルに置かれた飲み物やお菓子を勧め、ミオンにアキの事を任せてからメトルを呼んだ。
〈メトル、もう分かってると思うけど、今いいかな?〉
〈うん、いいよー。聞きたいことがあるんでしょー〉
〈さすがメトル! ……昨日はああ言ったけど、早い内に知っておきたくなってさ、勝手でごめんね……アキに与えられる能力の事、教えて欲しいの〉
〈あかりちゃん、そんなに気にしなくていいのにー。でも、嬉しいかもー。教えるのはいいよー。……けど、あかりちゃん、メトルが直接アキちゃんに教える事も出来るよー〉
〈そうなの? 私が聞いて、アキに伝えるつもりだったから……出来るならそっちの方がいいかも……どうするの?〉
〈うーんとね、あかりちゃんは勇者システムと接続されてるでしょー〉
私はこの世界に来る前に、神様に勇者システムと接続された。
それは、私を勇者にする為に。
そして、この世界に来て、勇者システムを起動した際、メトルと出会えた。
つまり、メトルは勇者システムによって存在し、勇者システムと接続した者しか知覚出来ない。
だけど、勇者システムと接続出来るのは勇者になる者のみ。
そこで、勇者システムと接続してる私と接続し、間接的に勇者システムと接続する事で、メトルとの一対一、私を含めた複数での意思疎通が出来るようになり、直接メトルがアキに教えられると。
更に、この、私と接続する事がアキに能力を与える方法だった。
……なるほど……私は接続したら、後はメトルに任せればいいって事ね……でも……あ、そうだ……。
〈メトル……この接続ってアキ以外にも出来るの?〉
私はミオンだけ蚊帳の外になるのを想像し、心情的に嫌だったのと、別の狙いもあってメトルに確認した。
……フフフ……ミオンも接続出来れば、メトルとミオン、妹達の夢の共演が……最高過ぎる……。
〈うん、出来るよー。でも、色々条件とか制限があるんだよー。能力も与えられないしねー。特別なのはアキちゃんだけだよー〉
アキ用にカスタマイズしただけあって、アキが特別なのは、まぁ分かる……能力の件は最初から期待してなかったし……私は、ミオンが私達の輪に入れればいいだけだから、条件も制限も大した問題じゃ無かったな。
〈そっか。……メトル……アキの他にミオンちゃんも接続したいんだよね。どうすればいいの?〉
〈簡単だよー。手を繋いで接続するように思えばいいだけだよー〉
〈え! それだけ? ……わかった。早速接続してみるよ。メトル、ちょっと待ってて〉
私は簡単すぎる接続方法に、アキとミオンに経緯を説明して直ぐに実行した。
〈メトル、お待たせ。……アキとミオンちゃん、聞こえてる? 教えた通り、頭の中で話せば通じるからね〉
〈あかりちゃん、おかえりー〉
〈……ん、あ、あー、こうか? ……メトルだよな? 俺はアキ、よろしくな〉
〈……聞こえてるよ、お姉ちゃん〉
〈……無事、出来たみたいね。……メトル、私とアキじゃない可愛い声は、ミオンちゃんね。……ミオンちゃん、私達じゃない可愛い声がメトルだよ。二人とも仲良くしてね〉
〈うん、わかったよー。メトルはメトルだよー。アキちゃんとミオン、よろしくねー〉
〈……うん。……私はミオン。……メトルちゃんよろしくね〉
〈メトル、俺とも仲良くしてくれな〉
……まぁ、最初だしね……ちょっとぎこちないけど……これからどんどん打ち解けていけばいいな……。
接続後の、四人での意思疎通が確認出来たので、ここからはメトルに任せる。
〈メトル、これでアキに能力を与えるのは完了だよね。それじゃ、アキの能力の説明、お願いね〉
〈任せてー。……それでアキちゃん、アキちゃんの能力は、あかりちゃんと同じ事が出来るんだよー。ただ、戦い方が違うのー〉
〈そうなのか? ……あかりと同じって事は……俺も勇者になるのか?〉
アキが恥ずかしそうに問いかけると……。
〈もー! 勇者はあかりちゃんが居るでしょー。アキちゃんは、魔王を倒す勇者に付き従う者。……勇者の従者だよー。パパがそう言ってたのー〉
〈……〉
〈……お兄ちゃん、頑張って〉
メトルの答えに、アキは無言になり、ミオンは純粋に応援していた。
アハッ……アキが私の従者? うーん、あまり変わらないかも……。
私は想像して、姉の世話をやく弟が、勇者の世話をする従者と、呼び方が変わったくらいにしか思えなかった。
〈もう一度言うねー。アキちゃんはね、能力的にはあかりちゃんと同等なのー。でも、ちょっと違って、アキちゃん次第で強くも弱くもなるのー〉
メトルの説明によると、アキは、私がメトルと共有して得る能力が同じく扱える状態になっている。
ただ、それだと、アキも拒絶反応で動けなくなるのは例外ではなく、そこで、アキには私とは別の方法をとったそうだ。
私はメトルと完全融合して拒絶反応を抑えてもらって、能力を自由自在に扱えるようになる。
でも、アキには抑えてくれるサポート人格が居ないから、共有ではなく、アキ自身に直接能力を与えて、アキの中に潜在させておき、アキの任意で発動出来るようにし、発動した瞬間、アキの意識が体から離れるようになっている。
そして、離れた意識で自分の体を操作するそうだ。
〈メトル、能力を直接アキに与えたの? あんなに避けてたのにどうして?〉
〈あかりちゃん、アキちゃんは特別って言ったでしょー。アキちゃんには、この世界に来る時にパパが咄嗟に能力を与えてるから、もう関係無いのー〉
能力を直接与えるのを避けてたのは記憶の対処が出来なくなるから……。
もし、与えた状態で記憶の対処をし、元の世界に戻すと、知らずに能力を発動して、何かしらの事故等を起こす可能性がある。
その可能性の方を重要視し、記憶の対処をせず、能力を把握出来てる状態で元の世界に戻すと。
この世界に送られた者は、適性チェックをクリアしているので、悪用する事も無いと判断された妥協案らしい。
勿論アキも適性チェックをクリアしているそうだ。
そして、アキには既に能力が与えられていたから、追加で直接能力を与え、この方法になったようだ。




