第017話 受け入れ
アキの方はまだ続いてるので、私はメトルに声を掛けた本来の目的を尋ねた。
〈メトル、ビーの世界に皆を受け入れる事になった場合、簡単に入る方法あるかな?〉
私の把握してる方法は、私に触れて一緒にだ。これだと時間が掛かるし、もう直ぐ日が暮れそうなのに、今からそれは避けたい。……他に無ければ仕方ないけど……。
〈あるよー。ビーの形をビーの世界に繋がってると意識して入口になるものに変えればいいんだよー〉
おおぅ! 聞いといてアレだけど、本当に簡単だった。……やっぱ確認は大事だね。
〈メトル、ありがとう。受け入れが決まったらやってみるね〉
メトルからの答えを得た私は、アキ達のやり取りをミオンに通訳して貰いながら結論が出るのを待った。
待つこと暫し、ミオンに「お姉ちゃん、決まったよ」と言われて結論が出たことを知り、間を置かずにアキが私を呼ぶ声が耳に届く。
「あかり! 決まったぞ。皆、ビーの世界で保護して欲しいそうだ」
アキの報告を聞いて私は内心安堵する。
もし提案を断られた場合、アキがどう行動するのか分からず不安だったからだ……。
今のアキは私よりミオンちゃんの方が優先度が高い……まぁ、姉より妹を大事に思うのは仕方ない……。でも、これでこの後も一緒に居られるのが確定したし……良かった。
「うん……まずは一安心だね、アキ。それでどうする? 直ぐにでもビーの世界に移動するなら用意するけど……」
「そうだな……。とりあえず用意しといてくれないか。その間に、このまま移動が出来る事を伝えてくるから」
即座に踵を返すアキに、私もやるべき事をしようと身に付けていた短剣を手に取る。
大勢の人がスムーズに通れるように大きな門にしようと考えた私は、ミオンから離れて、周りに人が居ない開けた場所に一人佇むと短剣にしていたビーに語り掛ける。
「ビー。これから大勢の人をビーの世界に招き入れたいの。だから、城門のような大きな門に形を変えて!」
直後、ビーは短剣から元のビー玉状に戻ると宙に浮かび、そして、両開きの大きな門に姿を変える。
突然現れた大きな門に、離れた所からのどよめきの声を聞き流しながら門扉を開くと、そこには中の景色は無く、世界の境界を表しているのか、波打つ膜のようなもので遮られており、手を伸ばすと突き抜けたので、これを通り抜けるのだと理解した。
門の考察をしてる間にミオンが寄って来ていたので、ミオンに門の説明をしていると、アキも村の皆を引き連れて到着した。
「あかり、凄いな。いきなりこんなのが出てきて、皆を落ち着かせるのが大変だったぞ」
あー、やっぱりさっきのどよめきは……と、なると……。
「アキ、こっちの準備は出来たよ。後は、この門を通り抜けるだけだから、アキが最初に入って、中で皆の対応をしてくれないかな?」
「……いいけど、どうしてだ?」
「だって、ビーの世界は私達の世界が基準の文明レベルだよ! それを見たらどうなるか分かるでしょ? 私は、何かあった時の為にここで見ておくからさ」
「そうだったな……分かった。中の事は任せてくれ。……そうだミオン! すまないが皆が中に入るまで、あかりに付いていてくれないか? あかりは、ミオン以外と言葉が通じないから……頼む!」
「アキ、ありがとう。ミオンちゃん、私からもお願い。ミオンちゃんが居てくれると助かるから、一緒に居て欲しいな」
「……うん、わかったよ。お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ありがとな、ミオン。偉いぞ」
アキはミオンの頭を一頻り撫でると、村の皆へと声を掛けてから門をくぐった。
私とミオンは門の脇に待機し、見守る態勢でいると、村の皆は複数人で集まって列を作り、順番に門をくぐっていき、その際に私に向かって頭を下げたり、感謝の言葉を言ってるとミオンが教えてくれた。
……私の方がアキの事で感謝だよ……本当にありがとう。
全員が門を通ったのを確認した私は、ミオンにも確認してから、門形態のビーに触れ、「私達が入った後はいつも通りにね」と、言ってからミオンと手を繋いで一緒にビーの世界へと入った。
ビーの世界では、村の皆はそれ程騒いでおらず、既にアキが粗方落ち着かせたようだ。
ただ私は気になる事が一つ、いつもとは違う場所に現れたことだ。
現れたのは駐車場で、何処だろうと疑問が浮かんだが、直ぐに答えが分かった。
ここは、毎度、私が目指して諦めていた宿泊施設の駐車場だったからだ。
……ぐぬぬ……こうもあっさりと来ることになるとは……。
悔しい気持ちもあるが、元々、皆を連れてここに来るつもりだったので、いつもの入口からここまでの移動を省略出来、疲れてる皆にとっても良い事だと喜びが勝った。
気を取り直して私はアキの元へ向かう。
「アキ、お待たせ。これで全員移動完了だよ。……皆、思った程大騒ぎになってなくて、私の心配し過ぎだったみたいね」
「ああ、あかり。それが、皆入って来てここの景色を見た瞬間、ポカンとして動かなくなってな。誘導する事の方が大変だったぞ」
なるほど、そっちの反応だったか。
「それはそれで確かに……アキ、お疲れ様。でも、まだやって欲しい事があるの……」
私は、この後の流れをアキに説明した。
宿泊施設の入口で、入る人に身綺麗にする魔法を掛けるのを私の役割とし、アキはその事を皆に周知してから、宿泊施設内の食堂に案内、そこで食事の仕方と必要な設備の使い方を説明するよう頼んだ。
……今日はもう、食事を取ったら早く休んで貰いたいからね……お風呂とかは後日……最低限、水道とトイレの説明しとけば大丈夫かな……。
この宿泊施設には来たこと無いが、元の世界で似たような宿泊施設に私とアキの家族同士で行ったことがある。
……アキにも分かるはず……案内図や説明書きもあるだろうし……。
アキの「任せろ」の言葉を聞いて、私は通訳兼癒しのミオンと一緒に宿泊施設へと向かった。
宿泊施設の入口で魔法を掛ける私と、横で何やら話し掛けているミオン。
後で聞いたら、怪我の有無などを確認していたようだ。
「フー、終わったぁ。ミオンちゃん、ずっと付いていてくれてありがとうね。お腹空いたでしょ? 私達も食堂に行って美味しいご飯をいっぱい食べようね」
「うん、お姉ちゃん」
自分の役目を果たした私達は、意気揚々と、空腹を満たしてくれるご飯の待つ、食堂を目指して移動した。




