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第013話 道中


 朝になり目を覚ました私は、布団をはね除ける様に起きあがり、部屋を見回し、自分の部屋でないことを確認すると……。


「ハァー……やっぱり夢じゃなかったのかぁ……」


 と、淡い期待からか、そう溢してしまう。


 そうだっ! これは現実だっ! しっかり受け入れないと……私は、アキを助けに……その為にこの世界に来たんだから! ……そして……アキを助けたら魔王を倒して一緒に元の世界に戻るんだっ! ……それまで……甘い考えは捨てよう……。


 そう私が内心で心構えと目標を再認識していると、私の頭の中に可愛い声が響く。


〈あかりちゃん、おはよー〉


〈あー……メトル、おはよう。……昨日は、私……いつの間にか寝ちゃってたみたいでごめんね。一人で大丈夫だった?〉


〈いいよー。あかりちゃん疲れてたみたいだしねー。……それと、あかりちゃんが寝てる間の警戒とかは、メトルの役目だから気にしないでー。……それにね、警戒しながらでもメトルは休めるからさー。だから安心してねー〉


 な、なんて出来た妹なんだろう……私もお姉ちゃんとして……尊敬される行動をせねばっ! ……よしっ! 今日もアキの後を追うんだからしっかり距離を稼げるよう頑張ろう。


〈メトル……メトルが居てくれるおかげで私は助けられてるよ……ありがとうね。……それじゃ、出発前に準備しちゃうから、ちょっと待っててね〉


 私は、朝の身だしなみを整えるとコンビニに向かい、朝御飯を入手し、ついでに道中の補給用に飲み物やおやつを鞄に詰め込んだ。


 水分補給と……おやつは大事! ……私が食いしん坊だからじゃないんだからねっ。


 家に戻り、朝食を食べ、少し休んでから出発! 家を出てビーの世界の出口に向かい、先に教会に寄る。


 教会では、水晶の列を見て回る事で私の気持ちが引き締まる。


 ……これからも、出発前に寄るよう心掛けよう……。




 ビーの世界から出て森に降り立った私は、まずメトルに道の確認をすると〈まだまだずっと一本道だよー〉と教えてくれたので歩きだす。


 ……素の私の体力だと、いくらペースを上げたところで多可が知れている……逆に休憩の頻度が増えて遅くなるのが落だ! ……だったら、出来る限り歩き続けられるペースで進もう……そして、陽が暮れそうになったらメトルと融合してスパートだっ! ……このプランでいこう。


 私は歩きながらペース配分を考え、決定すると、その通りに歩き続けた。


 途中、お昼休憩でビーの世界に一度戻った以外はメトルと会話をしながらひたすら歩き、日暮れ前に融合でのスパート! 陽が落ちると同時にビーの世界に入った。


 今日は、特に問題もなく予定どおりに移動出来た! ……明日もこの調子で行ければいいなぁ。


 ビーの世界に入って私は、今日は何処に泊まるか問題を考え、やはり宿泊施設までの移動が億劫に感じてしまう。


 結局コンビニでお弁当を仕入れて昨日と同じ家に戻ることにした。


 ……何か、移動手段を探そうかなぁ……。


 家に戻ると、魔法で身綺麗にし、ご飯を食べ、寝る前の準備っと、昨日と同じ様な行程を済ませ、ベッドに横になる。


〈メトル、今日もお疲れ様。融合のおかげで、大分移動時間を短縮出来たよ……明日もよろしくね〉


〈うん。任せてー。あかりちゃんも移動頑張ってたしねー。明日も頑張るためにゆっくり休んでねー〉


〈ありがとう、メトル。それじゃ、お言葉に甘えて……メトル、おやすみなさい〉


〈あかりちゃん、おやすみー〉


 メトルとの会話を終わらせた私は、やはり疲れていたのだろう、直ぐにスヤスヤと寝息をたて始めた。




 翌朝、現実を受け入れた私は、目覚めもすっきり! 元気にメトルに挨拶をして一日の始まりとした。


〈メトル、おはよー! 今日もよろしくねー!〉


〈あかりちゃん、おはよー。今日も頑張ろうねー〉


 挨拶を交わした後は、いつもの朝のルーティンだっ! 顔を洗い、服を着替え、コンビニで朝食とおやつを物色! そうした諸々をこなし、教会に寄ってから私は出発した。


 相変わらずの一本道を、変化の無い森の景色を眺めながら歩き、何事もなくお昼休憩でビーの世界に戻る迄を消化した後、再びの移動で遂に変化があった。


 進行方向の視界の中に、泥の山が散見されるようになった。


 これは……泥人形の残骸だよね……まさか……。


 私は警戒をメトルに任せ、見落としが無いよう、周囲を良く観察しながら歩を進め、見つけたくなかった物を見つけてしまう。


「あ……あぁ……そんな……うぅぅ」


 私は大きな泥の山を見つけ、予測はしていても、実際に目にするとショックで動揺してしまった。


〈あかりちゃん、しっかりしてー〉


 メトルの声掛けで、なんとか落ち着きを取り戻すも、最悪を想像して思考が上手く働かない。


 それでも、確認しなければっ! と奮起して行動に移す。


〈……メトル……完全融合をお願い……〉


〈わかったよー。あかりちゃん〉


 察しのいいメトルは直ぐに融合してくれた。


 融合によって、完全に冷静になれた私は、大きな泥の山を崩し、アキじゃない事を確認し、遺体をビーの世界に送って保管して貰う。


 それを移動をしながら、大きな泥の山を見つける度に繰り返した。


 確認していて思うのは、村で見つけた犠牲者達は、全て年配の男性だった。


 彼等は他の村人達の避難の時間を稼ぐ、あるいは守る為に、覚悟の上であえて残って戦ったのだろうと推察されるから、私はその犠牲をまだ何とか呑み込むことが出来た。


 だけど、今回は、若い男性も女性も老人も居た。


 そして、一人だけ小さな男の子も……。


 私はその男の子を見て、まだこんなに小さいのにと、同情すると同時に、沸々と湧いてくる怒りに体を震わせていた。


 そんな自分に気付いて……。


 ……私は何を憤っているの? ……こんな理不尽な出来事は元の世界でも何度も見聞きしたでしょっ! その時私はどうした? ……特に興味を示さず……偶に興味をひかれても……可哀想に……なんて、薄っぺらい感想だけ……しかも、直ぐに忘れた……そんな私が……何を今更……怒る? …………最低だ……私にそんな資格なんて無いっ! ……私に出来る事は……ただ、事実をきちんと受け止める事……そして……忘れない事だけ……。


 私は、自分の身勝手さを嫌悪し、愚かさを自嘲した。


 そして、男の子に関しては一つ気になる事があった。


 男の子が埋まっていた泥の山には、男の子と一緒に左腕が、正確には左手から手首と肘の中間の位置迄の腕が埋まっていた。


 男の子の右手は、その左腕にしっかり握られており、男の子の左手は、その左腕の握った拳に添えられていた。


 これを見れば、左腕の持ち主が男の子を引き連れて守っていたのだとわかる。


 だけど、男の子の命は失われてしまった……。


 だから、せめて、左腕の持ち主は生きていて欲しいと私は願った。


 その後も観察しながら歩き続け、泥の山を見かけなくなったなと感じ始めたところで融合を解除した。


〈メトル、ありがとう。……確認したけど……アキは居なかったよ〉


 ……素直に喜べない……犠牲が多すぎる……。


〈そっかー。アキちゃんは無事だと信じよー。……あかりちゃん大丈夫? 少し休んでもいいと思うよー〉


 メトルの心配の言葉は嬉しかったけど、私は前に進む事を選び、歩き始める……。


〈あかりちゃん、もう直ぐ森が終わるよー〉


 メトルの言葉通り、直ぐに視線の先の森が途切れ、その奥に広がる平原が私の目に映った。


 私は逸る心を抑え、ペースを変えずに歩き、遂に森から出る事が出来た。


 森から出れただけで私の心が浮上したのがわかる。


 代わり映えしない景色の中を、ただひたすら歩くだけというのは、私に想像以上のストレスを与えていたようだ。


〈あかりちゃん、ここからは真っ直ぐ前に進んで行けば、街道があるからー〉


 言われるがまま、私は真っ直ぐ前に進む。


 しばらくすると横断する街道が見えてきた。


〈メトル。街道は、どっちに行くの?〉


〈ここまで来たらもう少しだよ、あかりちゃん。街道を左に行けば街が見えてくるよー〉


 やっと……やっとだ……もう直ぐアキに会える…………いやっ! まだこの先にアキが居ると決まった訳じゃない! 一番可能性が高い場所なだけ……浮かれちゃダメだ……街に着いて確認する迄は気を抜くなっ! 例え……もしアキが居なかったとしても……また探せばいいだけ……私には諦めるなんて選択肢は無いんだからっ! ……どんなに時間が掛かっても私は必ずアキと会う……。


 もう直ぐ街に着くとわかり、思わず立ち止まってしまった私は、浮かれそうになった自分を戒めると、街に向かう為に再び一歩を踏み出した。


 アキとの再会を期待して……。


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