第012話 一日目終了
決意を新たにした私は、メトルに問いかける。
〈メトル。……この後は、どう動けばいいかわかる? ……私は、アキの後を追いたいけど……行方がわからないし……〉
〈うーん。一応、ここから歩いて五日の場所に街があるよー。避難する場合、近くの街に行くと思うけどなー〉
確かに! メトルの言う事には、一理ある……と、なると……まずそこに向かうとして…………メトルにお願いしよう……。
〈メトル。私の話を聞いてくれる?〉
〈んー? いいよー。あかりちゃん、なーにー?〉
〈えっとね……私は、今、メトルが教えてくれた街に向かおうと思うの。……でね、私は急ぎたいの……。だから、メトルに完全融合をして欲しいの〉
〈……〉
メトルの反応が無い……しっかり丁寧に私の考えを伝えよう。
〈……だけどね、メトルは、私と話せなくなるから嫌って言ったでしょ? 私は、メトルのその気持ちを蔑ろにしたくないの……〉
〈……あかりちゃん……〉
〈だからね……ずっとじゃなくていいの! 移動の内の少しの時間だけ我慢して協力してくれないかな? お願い……メトル〉
私はこれをメトルの我が儘なんて思わない。
メトルは私を助けてくれる大切な存在だ! そんなメトルの希望には、なるべく寄り添ってあげたい。
〈……あかりちゃん、ありがとうー。いいよー。協力するよー。……メトルの事、考えてくれるんだねー。…………メトルはサポートするのが役目だから、命令すればいいのに……あかりちゃん……だいすきー〉
うっほ! ……失敬……。
メトルから大好き頂きましたっ! ありがとうございます! ……メトル……私も大好きだよ。
〈メトル、当たり前でしょ! メトルは私の妹なんだから、お姉ちゃんが妹を大切にしないわけ無いでしょ……メトル、協力してくれてありがとうね〉
〈うん。……あかり……お姉ちゃん〉
ぬっはー! ……拝啓アキ様……私に、遂に妹が出来ました……出会えた時、それを知って驚くアキの顔が楽しみです! ……待っててね……直ぐに追い付くから。
メトルの協力を得られた私は、アキと村の人達が避難先にしたと思われる街に向かって、移動を開始した。
歩き始めて直ぐに、だいぶ陽が落ちてきてる事に気付いた私は……。
〈……メトル。……早速だけど、完全融合お願い出来る? もう直ぐ陽が暮れそうだからさ……〉
〈いいよー。……じゃ、融合するねー。……あ、この道は、当分一本道だからねー〉
おっと! ……大事な確認を忘れてるなんて……これじゃ、メトルの方がお姉さんになってしまう……。
〈ありがとう、メトル。……道も教えてくれてありがとうね〉
私の言葉が終わると、スっと意識が切り替わる……そして、私は走り出した。
私は走り続ける……全力疾走で! そして、改めて驚かされる。
完全融合中の私は、やはり凄まじい! 村への移動の際に薄々気付いてはいたが……もう、結構な距離を全力で走っているのに、全然息もあがらず、疲労もない。
どれ程、私の身体は強化されているのだろうか……私には完全融合した瞬間に、最高の状態の強化が自動でされる。
勿論、完全融合中の私にも、自分に同じ魔法をかける事は出来るけど……咄嗟の融合の際に任意だと、もし手間取ったら命取りになる……さすが神対応。
その強化のおかげで、私は走り続ける事が出来ている。
そして、完全に陽が沈んだところで走るのを止めて、融合を解除した。
〈あかりちゃん、おつかれー〉
〈メトル、ありがとうね。メトルのおかげで、だいぶ進むことが出来たよ〉
完全融合状態で、全力疾走を小一時間はしたけど……結構な距離を稼げたと思う! これを、明日からのペース配分の参考にしよう。
そう思いながら、全力疾走中もずっと側で付いてきてたビーに「ビーもおつかれ」と声をかけ、そっと触れてビーの世界に入った。
ビーの世界に入ると、違和感に気づく。
前に入った時と、若干景色が違う! この世界も夜になっていたのでそのせいかと思ったが、街灯に照らされた街の様子をよく見れば、新しい建物がある。
元々あった建物をずらしてスペースを作り、そこに新しく建っていた……見た目は、教会かな。
〈メトル。新しい建物が出来てるね……何かわかる?〉
〈この建物はあかりちゃんが望んだものだよー。中に村の人達が保管されてるはずだよー〉
……急なお願いで、ほとんど丸投げだったのに……立地まで気にしてくれてる……ビー、ありがとう。
〈そっか……ここなら外に出る前にいつでも寄れるね。……でも、見た目は教会だけど、中はどんな風になってるのか気になるから……今から見学に行くよ! メトル〉
私は、新しい建物に向かって歩きだし、直ぐに到着したので、そのまま中に入った。
両開きの扉を開いて中に入ったら、私の想像していた教会の中のイメージとは違っていた。
中は、奥に向かって長方形の空間になっていて、とにかく広い……建物の大きさと、中の広さが合って無い! その事をメトルに聞くと、空間拡張されていると教えてくれた……そういえば、このビーの世界も空間拡張されて出来てるんだなと気づく。
普通に考えて……ビー玉サイズのビーに一つの世界が入っている事がおかしい……つまり、それが答えだった。
天井からの照明で、空間内は明るい。
正面奥に祭壇があり、左右の壁には大きな窓が並んでいて、祭壇上部の窓は、ステンドグラスになっていた……この辺は、私が元居た世界の教会に近いかも。
大きく違うのは、祭壇前に一定間隔で縦長の水晶? が並べられている事だ。
近づいて確認すると、水晶には、犠牲になった村の人達が水晶一つ毎に一人づつ内包されていた。
〈メトル……これは?〉
〈あー、これはね、保存するためと、全身像がよく見れるようにだよー〉
どうやらビーは、私がお願いで言った保存と見送るの言葉で気を利かせてこうしたようだ。
この、水晶のような物に内包される事によって、いつまでも状態が維持出来ると……そして、透けているのでよく見える……確かに私の言葉通りだった。
私は、そんな水晶を一つ一つ手を合わせて冥福を祈りながら見て回り、教会を後にした。
教会を出た私は、コンビニに向かいながら、今日の寝る場所をどうするか目で探しつつ、メトルに聞いた。
〈メトル。……この世界の施設は好きに使っていいんだよね?〉
近くの一軒家にするか……宿泊施設まで行くか……悩むなぁ……。
〈そうだよー。好きに利用出来るし、あかりちゃんの世界のものと同じ様に、サービスも対応もされるよー……人は居ないけどねー。……あ、普通の家とかだと、自分で用意しなくちゃかもー〉
なぬっ! なら、断然宿泊施設の一択でしょっ! ……メトルに聞いておいて良かった。
そう私が決定した時には、コンビニに着いたので、中に入り、今日の晩御飯を選ぶ事にした。
このコンビニも、商品類が勝手に補充されてるようだし、施設のサービスや対応も人手無しでも可能になっているのは……この世界は神様の超パワーか何かで不思議現象を可能にしてるのかも知れない。
飲食類や雑貨類を選んでコンビニを出た私は、ある事に気づく。
あ! 宿泊施設に行くなら、そこでご飯を出して貰えばいいじゃん……コンビニで選ぶ必要無かったし……あぁ、でも、今から宿泊施設までの移動はちょっと面倒だなぁ……。
〈メトル。魔法で体を綺麗にするものとかある?〉
〈あるよー〉
あるのかぁ……じゃぁ、やっぱり今日は近くの一軒家にしよう! お弁当もあるし、お風呂の代わりは魔法で我慢して……後は寝るだけだしね。
そう決めた私は、直ぐ近くの一軒家を選び、中に入るとメトルに完全融合して貰い、思い当たった魔法で体も服も綺麗にした。
そして、家の中を軽く見て回り、食卓で食事をし、寝る前のアレコレを済ませたらベッドのある部屋に向かった。
ベッドに横になった私は、しばらくメトルと会話をしていたが、初めての異世界生活で思った以上に疲れがあったのか、いつの間にか眠りに落ちていた。
こうして、私の異世界一日目が終わった……。




