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第011話 新たな決意


 休憩を終えて、ビーの世界から元の森に戻った私は、再び森の中を歩きだす。


 森の中の移動なので、景色などを楽しむ事もなく、専らメトルとの会話に終始した移動だった……。


 私は、この世界の事や気になった事を聞き、メトルも答えながら、気付いた事などを教えてくれる。


 そんな会話をしながら、歩き続けて数時間たった頃、メトルが〈もう少しだよー〉と教えてくれた。


 それを聞いて無意識に私は、視線の遥か先を懐中電灯で照らしてしまう。


 そして、偶然にも、照らされた先の木と木の間を横切る人影が見えた。


〈メトル! 今の見えた? 人影だったよね。……村の人かなぁ?〉


〈あかりちゃん、戦う準備してー。今のは魔王の配下の泥人形だと思うー。光に気付いて向かって来るよー〉


 え? ……魔王の? い、いや、そんなことより戦う準備を……。


〈あれはねー、体の中心にある核を壊さないと倒せないよー。それと、捕まっちゃダメだよー〉


 メトルの説明が終わった時には、私は、ビーを以前の様な全身鎧と細剣に変えて身に纏っていた。


 私は、これから初めての戦闘をする事に不安を感じている……。


 だけど、自分の姿を確認して……ふと思う。


 初めてこの格好になった時、私は自分でも信じられない動きを披露し、様々な魔法を扱ってみせた……。


 あれは、私は戦う事が出来るという証明に他ならない! だから、その事実とメトルの事を信じて……私は戦う覚悟を決めた。


〈準備できたねー。じゃ、あかりちゃん、完全融合するよー〉


 メトルが宣言した後、私の意識は即座に切り替わる。


 切り替わった私は、まず状況確認で周囲を索敵……敵は一体! 夜目が働いているので灯りは必要無しと判断、前方から迫って来る泥人形に向かって走り出す。


 ある程度近づくと泥人形は、両手をあげて覆い被さるように迫って来る。


 これが、私の倒す敵……名前の通り、本当に人の形をした泥の塊だ……。


 私は余裕をもって近づく泥人形を観察し、接触寸前に、その泥人形の脇をすり抜け、振り向き様に剣を横に一閃! 泥人形の首が落ちるのを視界に捉えながら、腕を引き絞り、泥人形の背中の中心に突きを放つ……結果、私の剣先には核が貫かれており、泥人形はグズグズと崩れていった……。


 そして、メトルが解除したのだろう……私の意識も元に戻り、ビーも元に戻した。


〈ヤッタねー、あかりちゃん。突然でビックリしたでしょー。これが魔王の戦力になってる、泥人形兵だよー〉


 魔王の戦力……。


 泥人形だから、倒した事への嫌悪感が無くて良かったけど、メトルに事前説明されてなかったら、こんなにあっさり倒せたか……。


 メトルとの融合で得る知識は、戦い方はわかっても、倒し方はわからないから……。


 もっと、この世界の事、メトルに聞いておこう。


〈泥人形兵で単独で動いてるのは、だいたい偵察兵だよー。近くの人類側の戦力を偵察してるのー〉


 魔王は泥人形兵のような、無機物を兵に出来る核を生成する能力があるらしい。


 そして、その核で泥人形兵などを造り、人類側の国や街、村など、人の集まる場所の近くに配置してる。


 それは、人類側への牽制と戦力の把握のため。


 人類側からすると、いくら戦っても自分達の戦力だけ消耗する戦いになるし、他に目を向けようとしても、近くに魔王の軍勢が居ては、それもままならない……。


 そうした膠着状態にするために、人類側の戦力を調べるのが偵察兵だそうだ。


〈……メトル。ここで偵察兵に会ったって事は、アキが居る村を調べに来たのかな? ……大丈夫かな?〉


 メトルの返答を待つ微かな時間でも、私の頭の中には、悪い想像が浮かんできてしまう……。


〈うーん、偵察兵は魔王の命令で動くから、魔王が何か行動を開始したのかもー。……あかりちゃん、急いで村に行こうー〉


 メトルの言葉を聞いて、私は走り出す。


 逐一、メトルに方向の確認をしながら走っていると、人の往来で出来たであろう道にたどり着いた。


〈あかりちゃん。この道をあっちに行けば村だよー〉


〈メトル、ありがとう。……メトル、もう道に迷う心配無いなら、完全融合してくれる?〉


 メトルには悪いけど……ここからは、一本道だっ! 融合してもっと速くっ! ……アキ。


〈いいよー。……じゃ、するねー〉


 意識が切り替わった私は、即座に変身し、速度を上げて走り出す。


 全力で走れば、直ぐに村が遠目に見えてくる……。


 そして、村の入口に着いた私は様子を伺った。


「……見た感じ……異常は無さそうだけど……。とりあえず見てまわろう……」


 村に入ろうとして、直ぐ気付く事があった。


 村を囲むように設けられた柵が、所々折れて倒れていて、その柵には、泥がこびり付いている。


 それに、入口に門番が居ない……。


 このくらいの村だと門番は置かないのか……。


 村の中も見てまわると目立つものがある。


 村のあちこちに泥の山があり、その中にいくつか大きな泥の山があった……ただ、人とは会えなかった……。


 私は、気になった大きな泥の山に近づいて確認すると、泥から人の体がはみ出していた。


 これは……泥の中に閉じ込められて、死んでるのか……この泥も泥人形のものと同じもの……。


 私は、それを見ても冷静なまま、しばらく観察していると、スーっと意識が元に戻った……。


「うっ! ウェぇぇぇ……」


 どうやら、メトルとの融合は、私の精神も強くしてくれてたようで、完全融合が解けた瞬間、胸から喉に込み上げるものを感じ、嘔吐してしまった……。


〈あかりちゃん、大丈夫ー? 周囲は危険無さそうだったから、融合解いたんだよー〉


〈……うっ……ハアハア。……メトル……ごめん、ちょっと待ってね……〉


 呼吸を整えてると、私の体が震えてる事に気づく。


 私は、人の死を目の当たりにして、恐怖で震えていた……。


 こ、怖い……人が死んでる……この人達は……殺されたんだ…………でも……。


 だけど、アキの事が頭に過り、自分を奮い起たす。


〈……メトル。……この村で何があったかわかる?〉


〈たぶんだけどー、魔王の命令で動いてた泥人形兵の軍勢にー、通り道にあったこの村が襲われたんだと思うー〉


 魔王は、魔王の脅威を知らしめるために、配下の兵に基本命令として、遭遇したら襲撃するよう定めているそうだ。


 膠着状態で、平和が長く続けば、魔王の存在を軽く考え始める人類側への戒めとして……。


〈……そんなぁ、……じゃぁアキは……〉


〈あかりちゃん。村の規模と大きな泥の山の数が合わないから、避難してる人が居るんだよー。泥の山を崩して確認しようー。きっと、アキちゃんは無事だよー〉


〈……う、うん。……怖いけど……私が……確かめないと……。メトル。……また融合をお願い〉


 メトルと融合して、冷静になった私は、泥の山を一つ一つ魔法で崩して確認していく……。


 その結果……アキは居なかった。


 安心した私は、遺体を埋葬しようと思ったが、アキの事も心配で先を急ぎたい……この二つで悩んでしまう……。


 アキはこの村に保護された……。


 つまり、この人達にも少なからずお世話になってた筈……。


 そんな人達を放置なんて出来ないっ! でも、早くアキの無事を確認したい……どうしよう……。


 完全融合中の冷静沈着、即断即決の私でも、こう言った悩みには、素の自分の意識が強く出るようだ……。


 そんな私の葛藤を察したのか、融合を解除したメトルが声を掛けてくる。


〈あかりちゃんならビーの世界に干渉出来るからそこに保管しようよー〉


 ビーの世界は、権限を持ってる私なら、色々造れたり変更も出来る。


 それを聞いて私は、ビーに触れ、遺体保管のための施設を造るよう、ビーに願った。


 この人達は、アキや村の人達を逃がすため、必死に戦ったっ! 村のあちこちにある泥の山を見ればわかるよ! それに、この人達にも避難していった家族が居る筈……。


 家族にも頑張ったこの人達を見送らせてあげたい……。


 ビー……この人達は体の損傷もほとんど無いから、このままの状態で保存出来る施設を造って! そして、保管して……お願い……。


 私は、ビーに願いを伝えた後、一人づつビーの世界に送る……ビー! 任せたよ。


 そうして、ビーの世界に送っていると、ある人物を送る際にメトルが教えてくれた……。


〈あかりちゃん。この男の人は、アキちゃんを保護して一緒に生活してた人だよー〉


 …………え……あ……う……うそ……こ、この人が……アキを……ううぅ……。


 メトルの教えてくれた事実に、私は狼狽えた……。


 …………アキの恩人に……うぅぅ……こんな形で会うことに……なるなんて……もう遅いけど……うぅ……ちゃんとお礼を言おう……。


「…………私は立花あかりです。大空アキと兄弟のように育ちました。……私はアキを助けるためにここに来ました。……あなたが……アキを保護してくれてなかったら……私は……アキを助けるって選択すら……出来なかったかも知れないっ! ……あなたのおかげで私は……希望をもって……ここに来れました。……本当にアキを保護……して助けてくれて……ありがとうございます。……私がもっと早くここに来れていれば……なんて烏滸がましい事も考えて……しまいます。……ごめんなさい。…………だから……絶対にアキを助けてみせます。……どうか……見守っていて下さい」


 私は、感謝とお礼の言葉を告げて、アキの恩人を送ると、残りの人達も、感謝しながらビーの世界に送った……。


 犠牲になった人達をビーの世界に送り、落ち着いた私は、疑問に思った事をメトルに聞いた……。


〈メトル。……この人達は、どうして土に埋まっていたの?〉


〈あかりちゃん、それが泥人形兵のやり方なのー〉


 泥人形兵は、一対一ならそんなに強くない。


 だけど、数の暴力で動きを封じに来る。


 核を壊さないと倒せないため、手こずっていると纏わり付かれてしまう……。


 纏わり付かれても仲間が居れば助ける事は出来るが、助ける間も無く泥人形兵の多さにやられてしまったのだろうと……。


 私は大切な事に気づいていなかった……。


 魔王が存在する事で少なからず犠牲者が生まれることを……。


 確かに魔王システムが導入される前の、争い合う世界に比べたら微々たる犠牲だ。


 だけど、私は犠牲になった人達を目の当たりにしてしまった。


 これまで私は、アキさえ無事に助けられたら、その後の魔王を倒す事を、どこか軽く考えていた……。


 神様の事前準備によって、魔王を倒す事は問題無いと、私が何もしていないのも要因だろう……。


 でも、もう心を入れ換えよう。


 私が魔王を倒した後の世界で、新たに現れる魔王によってどうなるかはわからない……。


 でも、今存在する、神様の想定すら越えてしまった魔王を私が倒す事で、この世界の、今、生きている人々が救われると信じて……。


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