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第010話 休憩


 メトルの号令を聞いて、私は、早速出発しようと周囲を見渡す。


 あ! まだメトルに村の場所聞いてなかったわ……あれ? …………道無くね? ……ひょっとして森の中に突っ込むのかなぁ……まさかね。


〈……メ、メトル。……村への案内お願いね〉


 私は、まさかの可能性に怯えながら、メトルに声を掛けた。


〈わかったー。……えっと、あかりちゃん、そこのちょっと右の木と木の間に入ってー〉


〈メ、メトル。……森の中に入っていくの? 暗くて前も良く見えなさそうだけど……大丈夫?〉


 まさかの可能性が当たった事で、聞き返し、確認してしまう……。


 今居る場所は、まだ、明るさがあるが、メトルの指示する森の中は、奥の方は真っ暗で何も見えない……。


〈あ、そっかー。今のあかりちゃんの状態だと、魔法で明るく出来ないもんねー〉


 あぁ、この世界だと魔法で明るくするのかぁ……だから、気軽に言ってたんだなぁ……でも、今の私じゃ使えないし、完全融合すれば問題解決だけど……さっきメトルと約束したばかりだしなぁ……。


 私は魔法の便利さに納得し、私も利用しようかと、メトルとの約束とで、悩む……メトルなら頼めば即了承してくれるだろうけど。


〈あかりちゃん。明るくするのに必要な物を思い浮かべてー〉


〈うん? ……何でもいいの?〉


〈いいよー〉


 うーん……これから暗い森の中に入るのに必要とする明かりかぁ……咄嗟にはこれしか浮かばないなぁ。


「ドュルドュルドュルドュルドュン……懐中電灯!」


 私が、ノリで声に出して発表すると、その瞬間、私の手には懐中電灯があった。


〈え、えー! メ、メトル……どうなってるの?〉


〈それはね……あかりちゃんが名付けた、ビーの機能なのー。……メトルもビーって呼ぶねー〉


 ビーの中には箱庭の世界がある。


 そこには、私の居た世界を参考に様々な施設や店舗があり、中に入って利用出来るし、物によっては、望んで取り出す事も出来るようだ。


 これは、私の旅の衣食住を満たすための機能らしい。


「ビー、水が欲しいの……出せる?」


 私は、喉が乾いてた事もあって、試しにビーにお願いすると、足元にペットボトルの水が現れた。


〈あかりちゃん、声に出さなくても、出して欲しい物を思い浮かべれば大丈夫だよー。出せない場合はメトルが教えるからー。それと、しまう事も出来るからねー〉


 私はメトルの説明に便利だなぁと感心しつつ、手荷物くらいは持てるようにと鞄と、他にも必要そうな雑貨を出して貰い、用意をしながら考え込む……そして、メトルに告げた。


〈……凄いね……私はアキの事で頭が一杯で、何も考えずに、この世界に来たら何とかなると思い込んでたよ……。私の代わりに、神様がしっかり準備しといてくれたんだね……感謝、感謝〉


 ……神様、ありがとうございます。


〈そうだよー。パパは凄いんだよー〉


〈パパ? ……え? ……パパって誰が? ……神様! えぇぇっ、子持ちだったのぉぉ! しかも、男かっ!〉


 メトルの暴露に感謝の気持ちもふっ飛んで……私は混乱した。


〈うーん、わかんなーい。メトルの事、創ってくれたからパパって呼んでるのー〉


 確かに、サポート人格を神様が創ったからメトルの考え方も間違いではない……。


 それに、どうやら、このメトルの子供っぽさは、神様に設定されたものらしい。


 神様は、何故そんな設定にしたのか……原因は私だった。


 召還された者は適正を判断される……。


 私も適正を判断する対象だったため、私に関する記録があるらしく、その中にある、私が強くお姉ちゃんに拘り持ってるとの情報からメトルはこうなったようだ。


 メトルは、〈メトルには、勇者システムに接続するまでの、あかりちゃんの記録が共有されてるのー〉と、誇らしげに言っていた……イイコだなぁ。


 良い子なメトルからの聞き取りを終えても、結局、神様の性別は不明なままだった……もしや神様に性別は無いのかも。


〈これで暗くても大丈夫だねー。方向がズレたりしたら、メトルが教えるから安心してー。じゃ、あかりちゃんしゅっぱーつ!〉


 私は手に持つ懐中電灯で前方を照らし、視界の確保は十分出来そうだとわかると、歩きだす。


〈メトル、ここに入って行けばいいの?〉


〈うん。そっちの方向に木を避けながら進んでねー〉


 私は言われたとおり、木を避けながら進み、時々メトルに方向の修正をされながら歩いていく。


 数時間、メトルと会話しながら歩いていると、少し、疲れてきたと感じた……そういえば、お腹も空いてるなと気付く。


〈メトル、ちょっと休憩したい。……あとお腹も空いちゃった〉


〈わかったー。あかりちゃん、ビーに触れて中に入りたいって思ってみてー〉


 ビーに近づこうと考えた時には、ビーは目の前に居た。


 そっと手で触れて中に入りたいと思うと、直ぐに景色が変わり、そこは……私は元の世界に帰ってきたんじゃないかと勘違いさせる光景だった。


 道はアスファルトで整備され、家々が建ち並び、パっと見ただけでも飲食店やコンビニが目に入る……大きな建物は、商業施設やビルだろう。


 そんな光景が私の目の前に広がっている……まるで、私が居た世界の何処かの町を丸ごと持ってきたかのような印象だ。


〈あかりちゃん、ここにある建物は好きに利用していいからねー。ここはね、魔王の居る場所まで行く間、過ごして貰うために用意したんだよー。あ、そうだ! 一応教えとくねー。あかりちゃんには、権限があるから、この世界を自由に変えられるよー。必要があったらやってみるといいよー〉


 神様の気遣いが、凄すぎて……限界突破してる……。


 私以外が、召還されていた場合、カスタマイズ前の勇者システムを接続され、この世界に来る。


 そして、ビーの世界に入って、中で過ごしてる間にビーが自動で魔王の場所まで移動してくれるそうだ。


 召還者はただ魔王を倒すだけ。


 他の事は全て準備済み。


 私の場合は、アキを優先しているので、アキと合流出来て、魔王を倒しに向かう事になったら、ビーで移動が出来る。


 ここまでお膳立てが出来てるんじゃ、召還対象は誰でもいい、発言も仕方なく感じる……神様ごめんなさい。


〈じゃぁ、メトル。ちょっと休憩するね〉


〈うん。ゆっくり休んでねー〉


 私は、色々目移りしたけど、結局、コンビニでお弁当とお茶を選んだ。


 食後にお茶を飲みながらまったりして、そろそろお腹も落ち着いたかなと感じたところで、外に出ようとメトルに声をかける。


〈メトル、お待たせ。ありがとうね。……それで、ここから出る時はどうしたらいいの?〉


〈いいよー。出るにはね、入って来た時に居た場所から出るのー。そこで、確認してからじゃないと危ないからー〉


〈え! ……ここで、危ない事があるの?〉


 私は、私しか居ないこの世界にどんな危険が有るのか、想像も出来ず、聞き返した……一人きりで、何かあれば……詰む。


〈あかりちゃん。……突然外に出て、もしビーが高い所を飛んでたらどうなるー?〉


〈あ! ……落っこちちゃうね。……メトルさん、納得です〉


〈わかってくれたらいいのー。それに、念のための用心だからー。……それで、その場所で外に出たいと思えば出れるよー〉


 出方もわかったので移動開始。


 入口に戻り、すんなり外に出た私は、再び、アキの居る村目指して歩きだした。


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