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赤城山ヒルクライム

 とうとう赤城山ヒルクライム大会の当時になった。早朝、ゆかりのキスで目覚めた時はまだ暗かった。体調を整えたかったので昨晩は一人で睡眠を取った。

 コーヒーを飲みながら軽く食事をとってゆかりと自転車に乗って家をでた。

 サイクリングロードに入るところで唯と合流した。

「おはようございます」

「おはよう、唯ちゃん」

「おはよう、今日は頑張ろうな」

「はい、それにしてもわたしが大会にでるなんて自転車でダイエットを始めた時は考えもしませんでした」

「まあ、大会という目標があったから続けられたんじゃないか」

「そうですか?私はもう目標は達成したんですけど」

「まあ、痩せたしな、さあ行こう」


 朝焼けのサイクリングロードを三人で大会の会場に向かった。スタートは七時過ぎでまだ時間があるし、受付は昨日済ませて、ゼッケンと計測用のチップを受け取ってあるけど、下山用の荷物を時間までに預け無ければならないので早めに会場に入らないといけない、今日は天気だし、赤城の上もそんなには寒くはないけど、ジャケットやライト、鍵などは支給されたビニールの下山袋に入れて、登る時の荷物を減らして軽量化した。スマホは家に置いてきたし、ボトルも一本でボトルゲージも一人外した。パンク修理道具も置いていこうと思ったけど万が一パンクしてしまうと完走出来ないのでスペアチューブと軽量のポンプだけは小さくまとめてジャージのバックポケットに入れた。登りの荷物はそれだけだ。

 会場の入り口で下山袋を預けたあとに、待ち合わせした校門で結城と凛と合流した。

「おっす、今日は頑張ろうな」

「おうよ、今日は負けないぜ!と言いたいけどこの間、話したように俺は料金所跡ぐらいまでは引くから後は頼んだぜ」

「ああ、よろしく、いい集団に付ければいいな」

「そう言えば、先週の試走会はペースが合わなくて、今一つだったな、にしてもこのジャージ目立つな」

「まあ、凛のデザインはちょっとハズイけど、カッコは悪くないな」

「おら、ありがとう、揃って表示台に上がりたいですわ」

「わたしが頑張るから絶対大丈夫だよ」

「わたしも完走、頑張ります」

「じゃあ、とりあえず自転車置いて、先生のところに行くか」


 スタート時間別に設けられた場所の中程に自転車を横倒しに置いた。なぜか待機場所の先頭にママチャリが一台スタンドで立てて置いてあるのが見えた。

 スタートの順番は最初に実業団の選手でその次が先生がいるエキスパートでその次は申告タイムで速い順に分けられたグループで年代別のカテゴリーで上位を狙う選手のグループが続いてスタートする。俺と結城はそのグループの後で唯とゆかり、凛たちのスタートはそれよりいくつか後のグループなので自転車を置く場所がちがう、自転車を置いた後に先生のいるエキスパートグループの所にいった。二番目のスタートなのでスタートのゲートが見える位置に先生はいた。ハルヒルの時と同じで先生は知り合いが多いので先生の周りには何人がいて話しをしていた。

 俺たちが近づくと先生が手を振って

「おはよう、我が生徒諸君!」

「先生、おはようございます」

「おお、頑張ろうな、高梨くん、わたしが優勝したらご褒美にチュウしてね」

「先生はだめですわ」

 エキスパートで女子は数人なので間違えなく先生は入賞だろうし、優勝もあり得る。

「とにかく、皆んな安全第一で無事に完走しよう」

「先生、円陣組んで気合い入れますか?」

と言うわけで皆んなで円陣を作って真ん中で手を合わせて、声を合わせて「ファイト!ファイト!」と気合いをを入れた。

 先生は忙しいそうだったので俺たちはトイレに行って軽量化したり、少し離れた歩道で雑談したりしてスタートまでの時間を潰した。


 やがて「まもなくスタートの時間です。選手のみなさんは待機列に戻ってください」とのアナウンスがあり人が動き始めて、市長さんとかの開会の挨拶や安全に走るための注意自己をアナウンスしていた。

 俺たちも先生に一声かけて、それぞれこ待機場所に移動した。

「なあ高梨、あれから一年、俺はお前に勝ちたくて頑張ったけど、チーム戦だし、今日はしっかりお前をアシストするから、頑張ろうな」

「おお、まあ、二人だけのトレインじゃあ効果が少ないかもしれないけど、よろしくな」

 列が動きだして、スタートゲートが見える所でスタートを待っているとだんだん緊張して心拍数が上がってくる。深めの深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

 そして、俺たちのがスタートする順番になった。先生は10分前にスタートしているはずなので追いつく事はないだろう。

「スタート、30秒前」

「5,4,3,2」

パン!とスタートのピストルの音がして

「いってらっしゃい」

と軽やかな声で選手達を送りだした。俺は列の中程なので前が動きだしてから走り始めた。スタートは混雑してるし、緊張して、ペダルのクリートをはめるのに手間取った。結城とは並んスタートしたが出遅れたので結城の後ろになった。

 スタートはしたけど、タイムの計測は上細井の信号を過ぎた所なのでまだ徐行している。県道4号線には右折して入るけど鋭角なので少し注意して曲がる必要があるので多くの選手が手信号で注意を促している。曲がり終わり信号が見えてきた、もう先頭は信号近くに行っている。結城はスルスルと他の選手を追い抜いて良い場所を探しているようだ。信号の手前からフル加速が始まり周りの速度がぐんと上がっていく、

 信号を過ぎたところで「ピッピッ」と計測が始まり、ペダルを踏みこむ、ここは少し勾配があるのでパワーは300Wを超える。まだスタートしたばかりなので体力的には問題ない、すぐに勾配が緩やかになり、バイパスの下を潜る手前で結城が5、6人の集団の後ろに付いた。集団は30キロを超えた結構なペースでぐんぐんと抜いいく、オーバーペースなのではないかと思ったけど集団のドラフティングのおかげか思ったより楽に感じた。

 時沢の信号を過ぎると少し勾配がついてきた。勢いは止まらない感じだったけど小学校手前あたりで集団のペースが落ちてきた。小学校の横でママチャリがダンシングで登っているのが見えた。集団はママチャリの後ろについてしまい更にペースが落ちて後ろから抜かれた。

 結城は後方を確認して抜いた人の後ろについてペースを上げた。結城はなかなか良い集団を見つけるセンスがあるみたいだ。いつもより速いペースだけどなんか楽だ。

 畜産試験場は13分台で通過した。信号がないのでいつもより1分ははやい、

 畜産試験場を過ぎて流れが落ち着いてきて、何度も同じ人に抜かれたり、抜いたりで何となく集まった集団で何となくローテしている感じだった。だけどひたすらに俺は結城の後ろで体力を温存していた。空っ風街道との交差点を過ぎたあたりから若干ペースが落ちてきた。結城は頑張っているけど汗が凄いし息も苦しそうだ。作戦通りだけど結城にとってはオーバーペースなのだろう。俺も結城きアシストしてもらったり、集団のおかげで今までで一番のペースで登っている。

 料金所跡の手前は少し急だけど、結城は力を振り絞ってダンシングで駆け上がる。おかげで続く平坦で速度が上がった。いつもなら足を休める所だけど、せっかく結城が引いているので足緩める訳にはいかない、橋の手前で結城が手信号で「前にでろ」と挨拶を出した。俺は一口だけ水を飲み、追い越しながら結城は

「後は任せた」

俺は

「おっし」

と返して結城の前にでた。

橋を渡って横断歩道を越えれば本格的なヒルクライムとなる。気合い入れ直してペダルを踏む、結城のおかげで体力に余裕がある気がした。全力全開と行きたいところだけど、まだあと12キロあるので無理禁物だ。心拍数は170、パワーは220Wぐらいを目安に登る。先程まで一緒に走っていた。集団はばらけてしまったし、ほとんど抜いて行く人はいなくなってきたのでひたすら前に走っている人を抜いいった。

 「きこえますか森の声」の看板は33分で通過した。目標の70分を切るにはギリギリか少し足りない気がする。

 少し前までは結城がいいペースで引いてくれたけど、ほとんど直線で変化がないし、独走状態になってペースの維持が難しい、気がつくとパワーが下がっていることもあった。

 そんな時、後ろから来た人に抜かれた。オレンジ色のジャージでいかにもヒルクライマーと言う感じで登る姿も綺麗だった。ビュンと抜かれたなら追わなかっただろうけど、それほど速度差がある訳では無いと思ったので少し後ろに付いてみることにした。

 やはり前に少しだけ速い人がいると目標ができてペースが保ちやすい、その人はときどきダンシングするけど、ダンシングの時は若干、速度が落ちる。俺は付いてくるのがギリギリだけど、その瞬間は足を休める事ができた。

 一番勾配のあるカーブ1手前を過ぎてカーブで水を飲み息を整えた。練習の時は一息付いてしまう事とあるけど、前の人から離れてしまうのでそれは我慢だ。

 前の人はカーブの終わりで水を飲み、気合いをいれたのかペースを上げた。この区間は勾配もあるし、一番苦し区間だ。頑張っていたけど心拍数は180を超えて苦しくなってきた。頭に酸素が回らないのか目がクラクラした感じで「もうダメ、やめよ」とか「なんのためにヒルクライムしているのか?」とか、苦しくてやめたくなってきた。

 でも、「せっかくここまで頑張ってきたのだし、もう少し頑張ろう」と思った。もうオレンジ色のジャージの人についていくのは諦めて少しだけペースダウンした。

 練習なら心拍数が下がるまでペースダウンしてしまうけどいつもと同じくらいのペースまでで我慢して走り続けた。ゆっくりだけど心拍数も落ち着いて、苦しいけどなんか持ち直した。

 そしてやっと平坦がある箕嶺までたどり着いた。平坦手前で少しだけダンシングして、あまりスピードを落とさないようにしたけど、ここで体力を使うより、この後に備えて惰性で走る感じで少しだけ力を抜いた。

 姫百合駐車場は47分で通過した。水をたっぷり飲んだ。もう、ボトル水は一口ぐらいした残ってないけど、エキスパートの中には軽量化のためにボトルなしの人もいたし、なんとかいけるだろう。

 九十九折りの坂は変化があって楽しい、だけど気を抜くとパワーが落ちる。この区間はあまりサイクルコンピュータを確認することができないので、今までの練習で体に覚えさせているリズムみたいな感覚で登った。ただ、練習のときは周りの人があまり居ないので自分のペースで走るけど、どうも前に人がいると抜きたくなるし、ついついペースが上がってしまう。

 前半はガンガン抜けていけたけど、だんだん時間が経つにつれて周りの人も速くなってきたの抜くのが大変になってきた。ゼッケンはスタート別に色分けされているので、今、周りにいる人は同じ組の人は自分より少しだけ遅い人で、前の組の人は少し遅いので後ろに付くと失速するので駐車が必要だ。逆に後にスタートした組の人に抜かれた場合はかなり速い人なので付いていくことは難しい、サイクルコンピュータより、周りの人達の動きを参考にした方がいい感じだ。

 一杯清水、残り2キロ、あと10分はかからないけど、目標の70分切りは微妙な感じだ。更にペースをあげて足を使い切るぐらいで、連続するカーブを15キロ以上で走り抜けた。残り500メートル、ダンシングで加速した。スピードは20キロ以上、パワーは300Wを超えた。ゴールが見えてきた。頭に血が回らないのか視界が狭くなった感じだ。限界を突破したようだけど後少しだ。無我夢中でゴールに飛び込んだ。

 タイムは70分を切ったはずだ。サイクルコンピュータで確認すると69分だった。大声で「やった!」と叫びたいところだけど、息が苦しくて、心の中で「やった」と呟いた。パワーを出し切ったのでヘロヘロと倒れ込みそうだったけど、惰性でゴールの観光案内図の駐車場を進み、下山袋を受け取るために大沼の駐車場に向かった。

 結城が来ないかな?と思いゆっくり湖畔を走ったけど結城は現れ無かった。たぶん5分以下の差だと思う。下山袋を受け取り、自転車をラックに引っ掛けて、下山袋からリュックとジャケットを取り出して下山の準備をしていると

「お疲れさん」

と結城がやってきた。

「おお、おつかれ」

「73分だったぜ、自己ベストだぜ」

「俺もお前のおかげで70分は切れた」

俺たちは互いの健闘をグータッチで讃えあった。

 俺と結城が話しをしていると

「高梨君、結城君、お疲れ様、無事に走り終えたようだな」

「先生、おかげさまでベストタイムでした」

「おお、それはおめでとう、私は優勝は出来なかったけど表彰台には上がられるぞ」

「やっぱり、先生は凄いですね」

「いや、まあ、ヒルクライムは得意じゃないけどな、さて、凛ちゃんたちを出迎えるか」

 下山の準備をしながら走り終わった人達が通っている所で凛達を待つ事にした。スマホでweb上で発表された結果タイムを確認すると、ギリギリだったけど70分は切っていてほっとしてると先生がニヤニヤしながら

「惜しかったな高梨君、今回はわたしの勝ちだ」

と言って、スマホの画面を見せた。確かに僅かながら先生の方が速かった。

「うーん、来年は負けませんよ」

「よし、高梨君が勝ったらお嫁さんになってあげるぞ」

「先生、ふざけないでください」

「はっはっは」

 そんな感じで待っていると凛とゆかりがやってきた。

「お疲れ様!、とりあえず下山袋をもらってきて」

「はーい」

と二人が通過したけど、唯はまだだ。三人のスタートは同時だったので実力的に数分は遅れるだろう。

 そう思っていたけど思っていたより早く唯の姿が見えてきた。なんか疲れている感じもしたが、俺たちの姿に気がつくとニコニコして、俺たちのところに来た。

「お疲れ様、頑張ったな」

「ありがとうございます」

そう言って、唯は立ち止まった。本当は抱きしめたいところだけど、肩をポンと叩いて、

「後でな、とりあえず下山袋をもらって来て」

「はい」

唯はにっこり笑って、下山袋を受け取りに行った。後ろから

「何が。後なのかな、にいちゃん?」

「そうですわ、わたくし達には後で何してくれるのかしら?」

「いいなぁ高梨は」

「おい、わたしもいるのだが」

「あっ、そう言えば凛、タイムはどうだった?」

「あら、はぐらかすのかしら?80分ぐらいかしら」

「にいちゃん、わたしも先輩と同じくらいだよ、褒めて」

 スマホで速報を確認すると、暫定で2位、3位だった。

「おい、お前たち、表彰台だぞ」

「あれ、にいちゃんは?」

「俺は入賞もしてないぞ」

「はっはっ、ウチの女子たちは凄いな」


 少しして、唯もやってきて、チーム全員が揃った。先生が

「皆んな、よく頑張った。特に唯ちゃんとゆかりちゃん、トレーニングを始めた頃は完走も不安だったけど」

「皆んな、お兄さんのおかげです」

正面には唯、その右に凛、左にはゆかり、三人は俺に抱きついてきた。俺も手を広げて三人を抱きしめた。そして後ろから先生が

「コラ、公衆の面前でダメだぞ」

と耳元で囁いて、首筋に軽くキスをした。

「おーい、とにかく下山しようぜ」

俺たちは下山の待機場所に向かい、皆んなで下山した。


 下山後に大会会場に行くと大会の結果が張り出されていた。速報どうり唯以外の女子は表彰台に上がる事が決定していた。そして、チーム戦の結果はぶっちぎりで俺たちが優勝だった。もちろん、俺と結城の結果ではなく、他のチームより女子が多いのでポイントが高くなる事とタイムも良かったのおかげだった。

 

 表彰式が終わり、シャワーを浴びて着替えた後に学校近くのレストランで打ち上げをすると言う事で学校でシャワー浴びて着替える事になった。


 そして、打ち上げはレストランの一室を借り切っていた。

「おお、皆んな、集まったな、では、チーム戦優勝の祝賀会を始めるぞ!とりあえず乾杯!ジュースだけどな、では乾杯!」

 乾杯が終わり、一声づつ感想を言う事になった。

「最初は凛ちゃん、年代別の準優勝おめでとう」

「わたくしはまさか入賞するとは思いませんでしたわ、ただ、高梨君と一緒に走れるようになりたくて練習しましたわ」

「そう言う事は来年は優勝だな、次はゆかりちゃん、三位おめでとう」

「なんか、先輩と走っていただけなので、なんかビックです。でも、最後に追いつけなかったので、来年は勝ちたいです」

「そうか、凛ちゃんも頑張らないとな、では、唯ちゃん、予想より速くて驚いた」

「ありがとうございます。わたしはあんまり速くないと思っていましたが、以外とビュンビュン追い越せてびっくりでした」

「まあ、唯ちゃんは入賞出来なかったけど、女子では速い方だぞ、では、結城君は高梨君をアシストしたみたいだけど」

「まあ、高梨と一緒だったから、頑張れたし、タイムも悪くなかったし、楽しかったぜ」

「そうだな、楽しむのが一番だな、では、高梨君、わたしに勝てなくて残念だったろう」

「いいえそれは無いけど、来年は凛達のように入賞出来るように頑張りたいです」

「それではわたしも来年は優勝目指すかな、では皆んな腹一杯食べてくれたまえ」

 

 こうして赤城山ヒルクライム大会は終わった。


 会社の休み時間の暇つぶしに「なろう」を読んでいたけど、なかなか読みたい小説が見つからなかったので、自分で書く事にした。私は文才がないし、ただ妄想を書いただけなので他の人が読んだらつまらない小説だろう。

 それにしても、投稿が一年以上続いてこんな長編になるとは思わなかった。

 次は短編の小説とか書いてみたいかな、

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