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凛と坂を登る


 チュンチュンと鳥が鳴き始める少し前の時間だと思う。俺は息苦しさを感じた。「なに?」と思ったら首筋を舐められて眼を覚ました。

「なんだよ、ゆかり」

俺はほっぺたをつねられた。

「お馬鹿さん、わたくしですわ」

「あっ、そう言えば少し重いと思った」

「重いなんて失礼ですわ」

「いやまあ、凛は身長があるから」

「それにしても、あなたは何時もこんな感じで、ゆかりさんに起こしてもらうのかしら」

「いや、いつもでは無いぞ」

「それで、こんなふうに、妹さんに反応しているのかしら?」

「だから、ただの生理現象だから、さあ、起きて、登るぞ」

「その前に、おはようのキスぐらいはいいですわね」


 凛のベッドから降りて、トイレにいって、顔を洗って、サクッとコーヒーとパンを食べながら今日のトレーニングについて話しあった。

「では、あなたがリードしてくださるのですね」

「ああ、最近の凛の赤城のログを参考にして、今日は1時間半を目指そう」

「わからましたわ、あまり意地悪しないようにお優しく願いしますわ」

「わかったよ」


 そして、凛のアパートをでて赤城を登り始めた。赤城山ヒルクライムのスタート地点までは凛のアパートからは10分とかからないのでウォーミングアップには少し足りないので徐々にペースを上げて、畜産試験場からは凛のFTPパワーの90〜100%ぐらい、だから俺は自分のFTPパワーの80〜90%ぐらいでギリギリ一時間半だろう。

 凛のログを見るとかなりバラツキがあった。たぶん、凛はタイムを意識していないのだろう。元々、ダイエットが目的だったみたいだし、その時の気分で速くなったり、遅かったりしている。ただ、誰かと一緒に登る時は大体タイムはいいので、本当の実力はもっと上なのかも知れない、とりあえず畜産試験場までは様子を見て、畜産試験場をすぎたら何処が限界なのか試して見よう。

 凛は「優しくして」と言っていたが凛は結構Mだ。少し虐めた方が嬉しいと言う事は何となく分かっている。まあ、俺もどちらかと言えばMなんだが、

 

 さて、畜産試験場までは強度を落としたし、問題はなかった。タイムは16分、悪くはない、残り15キロちょっと、目標タイムは90分だから、登り74分、平均速度は12.5キロぐらいか、このくらいだと俺は15キロぐらいで登るので、それほど大変では無いけど、楽でもない、一年前の俺のペースだ。女性でこのペースで登れる人はあまりいないだろう。

 料金所跡までは15〜16キロぐらいを目標にした。料金所跡以降は途中は8%を超える所もあるので、少し貯金しておかないと、

 料金所跡の所で凛の後ろに下がり、様子を伺った。

「調子はどうだ」

「大丈夫ですわ、ナイスリードですわ」

「よし、これからが本番だ。ついて来れるかな」

「もちろんですわ」

 凛は楽そうでは無さそうだけど、きつそうでも無さそうだ。丁度いいペースだったようだ。このペースでいいだろう。

 単調な登り坂をパワーメーターを見ながら一定パワーで登る。自分のペースだと余裕が無くて、勾配の変化でパワーがバラついてしまうが、凛に合わせると余裕が生まれるのでバラツキを抑える事ができて、俺にとっても良いトレーニングになると思った。

 だけど、少し飽きてしまったので姫百合からは少し揺さぶる事にした。


 姫百合手前の焼きとうもろこし屋のと所で凛の様子を確認すると、汗をかいているし、息も上がっいるけど、まだ行けそうだ。凛は少し平坦になったので、ホッとしてる感じだった。

「凛、調子はどうだ?」

「はい、まだいけますわ」

「よし、後、30分だ。頑張ろう」

「ええ、一緒にいきたいですわ」


 姫百合駐車券をすぎて、九十九折り区間に入った。俺は坂が急になる左側が谷側となる所で家族して、凛をつきはなした。凛は必死に喰らい付くが、俺は4倍ぐらいのパワーなので追いつかない、そして、右カーブで勾配が緩くなったところで俺はスピードを緩めて、凛を待つ、凛が追いついたのを確認して、左カーブでまた加速する。凛の様子を確認して、ギリギリ凛がついて来れるように走った。凛の表情はキツそうだけど、なんか楽しいそうだ。

 パワーを上げ下げして、飴と鞭のような走りは体力を消耗する。結果的にはタイムは良くないはずだ。でも、ロードレースではこうやって、ライバルの体力を消耗させる作戦もあるし、トレーニング的にも心肺能力を向上させる効果もあるらしい、そう言えば、先生はこう言った走り方が得意だったな。

 それにしても、凛も頑張るな、よく付いてくる。ゴールまであと少し、ちぎるのは簡単だけど、イク時は一緒といっていたし、我慢だ。そう言えばベッドでイク前に凛は苦しそうに眉間に皺を寄せて「まだよ、もっとお願い」とせがんでくる。だけど俺は我慢できなくて先にいってしまう。凛が本当に気持ちいいが分からないけど、こんな時こそ、一緒にイクか、

 そして、ゴール手前の直線、速度制限の標識当たりで後ろに付いている凛に手信号で「前に」と合図した。凛は「ハイ!」と答えて、ダンシングで加速して俺の前にでた。軽やかで美しいダンシングだった。凛は「これがわたくしの全力全開ですわ」と叫んでゴールの観光案内所に飛び込んだ。

 凛は息をハアハアしながらもすぐには止まらないで、ゆっくりとまだ一台も停まっていない駐車場内を回った。俺は先に自転車から降りて凛を見た。凛はいい汗をかいて気持ち良さそうだった。

 凛は呼吸が落ち着いてから自転車から降りて、俺の所に寄ってきて、にっこり笑って、

「苦しかったけど、とっても気持ちイイですわ」

「いけたかな?」

「ええ、でも貴方は物足りなくては無かったかしら」

「まあ、でも楽しかったよ」

「ああ、でもまだ心臓がドキドキしていますわ」

「どれ」

「もう、エッチなんだから」

「大丈夫、誰もいないから」

「でも、学校に行かないと」

「そうだな、時間もあるから、下るか」


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