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ガレージキットのフェスティバル

 七月最後の日曜日、今日はガレージキットの展示即売会に原型師さんがお店を出すのでその手伝いに行く予定だ。

 早朝、先生のスタッフの山田さんが自動車で迎えに来てくれた。

「おはようございます」

「おはよう、後ろ乗って」

後ろのドアを開けると凛が乗っていた。

「おはようですわ」

「なんか眠そうだな」

「ええ、準備で遅くなってしまいましたわ」

「じゃあ、出発するからシートベルトしてね」

 山田さんは車を出した。

「あれ?先生は?」

「家で死んでる」

「ああ、ずっと徹夜みたいだったし」


車はすぐに高速に入った。助手席には誰も乗っていなかった。後席は俺と凛、山田さんは俺と凛に気を使ってくれたのだろう。山田さんは無口なので黙って、運転をしている。カーステレオからアニソンが流れているのは山田さんらしい。

 俺は基本的き早起きなので起きていたが、凛は横でスヤスヤ寝ている。俺はぼんやりと外を眺めて過ごした。


 高速道路を降りて、コンビニに寄って、おむすびやパンと水分を買って、会場近くの駐車場に車を停めた。今日の展示品や品物はなどは宅配便で送ってあるので荷物は少ない、俺はコンビニで買った食料をもって、凛はコスプレするので、キャスターの付いたトランクをガラガラ引いている。

 会場は馬鹿でかい建物で圧倒される。中学生のとき凛と二人で行ったビックサイトより大きい感じがした。

 駐車場から会場の入り口は結構距離があった。会場前まで行くと既に行列ができていた。建物の周りをグルリ囲むように並んでいる。凄い人数だけどコミケと比べれば少ないだろう。


 俺たちは出店側なのでディーラーパスがあるので並ばないで関係者用の入り口でパスを見せて会場に入った。

 会場の中は広くてガランとした感じだった。俺たちは早い方なのか人はそれほど多くはないけど、展示の準備をしている人がちらほら見えた。

 俺は山田さんの後についていく、そして俺が手伝う原型さんの出店場所に到着した。場所は壁ぎわで広めのスペースだった。既にダンボールが積んであった。

 山田さんの指示でダンボールを開いて、山田さんが展示用の台を組み立て始めた。準備をしていると、もう一人の手伝いの人がやってきた。田中さんといって、山田さんの知り合いという事だ。

 凛も手伝をして、なんとなくお店ぽくなってきたところで、一旦、休憩というかコンビニで買ったおにぎりを食べた。

 少し落ち着いてきたので周りを観察する余裕が出てきた。いつのまにかそれぞれのお店の準備が整っていた。

 基本的なお店のスペースは長机に椅子が2人で俺たちたちのスペースは机二つなので椅子は四つ置いてあった。


 開会まであと少しという時間に「通路に出ないでくださいと言う」場内アナウンスがあった。出店者はそれぞれの場所で待機だそうだ。でも、隅の方で待機している怪しそうな人がいる。


 そして、開場を伝える場内アナウンスが流れるとドタドタと急に慌ただしくなり「走らないでください」と言うアナウンスが流れるけど早足?いや小走り?さすがに全力疾走している人はいないけど。

 そして、もう行列が出来ているところもある。おそらく今動いいる人は外に並んでいる人ではなく、俺たちの様に出店してしている人だろうか?

 そして、外で並んでいた人たちがドドッと傾れ込んできた。うちらの店にもお客さんが来始めた。事前の打ち合わせ通り、お客さんには販売するガレージキットのリストが書いてある紙を渡して、購入希望商品を記入してもらい、それを見て俺と凛はガレージキットをダンボールから出して、山田さんか田中さんに手渡す。田中さんと山田さんはそれと代金と引き換えにお客さんに手渡す。

 忙しい、けど、淡々と作業をこなした。一時間ぐらいして、客足が少し落ち着いてきたことろで、凛が

「そろそろ、着替えに行ってきますわ」

と言って、トランクを引いて店を離れた。

 山田さんの話しでは、お昼を過ぎれば忙しくはなくなるので交代で休憩できるそうだ。

 しばらくして、凛が戻ってきた。薄いパーカーを羽織っているが、かなり露出度が高そうだ。だけど、会場内はコスプレしたまま歩いている人もいるし、いいのかな。

 凛は俺の所まで来て、羽織っていたパーカーを脱いで目の前でグルリ一回転回って、決めポーズをした。俺はズンという感じを受けて、直視出来なかった。

「どうかしら?」

「可愛いけど、きわどくないか?」

「このくらいコスプレイヤーなら普通ですわ」

「凄いな、あっ!そのコスは俺が塗ったフィギュアと同じだな」

「うふっ、そうですわ、あなたとわたくしとの合作ですわ」

山田さんがにっこり笑って、

「じゃあ、凛ちゃん、売り子を頼んでいいかな」

「もちろんですわ」

凛が前に出ると周りから視線が集まってくる。まず凛をみて、それと俺の塗ったフィギュアがある事に気がつく、フィギュアを確認して、購入してくれる人が増えてきた。

 開場してすぐはアニメ化されているメジャーなキャラクターのガレージキットばかり売れていて、俺の塗ったフィギュアのキットはあまり売れていなかった。

 凛はいつものクールな感じでは無く、買ってくれた人に思いっきりの笑顔で「ありがとうございますわ」と言って、お客さんの反応もいいようだ。

 横目で通り過ぎてから、戻ってくるお客さんもいたりして、売れ行きが急に良くなって、お昼少し前に俺が塗ったガレージキットは完売となった。山田さんの話しでは先生塗ったのキットより用意した数が少なかったけど予想以上の売れ行きだそうだ。

 他の新作もほぼ完売して、再販の物も残り少なくなった。お客さんも少なくなったので、俺と凛は休憩に入って朝にコンビニで買った食料を食べた。


 食べ終わったあと、「二人でイベントを見学してきていいよ」と言われたので、二人で見て回る事にした。

 凛はカメラを肩に掛け、パーカーを腰に巻いて、短いスカートから下着が見えない様にしている。それでも流石、凛だ!熱い視線を集めている。そして、隣りいる俺には「なんだよ(怒)」みたいな冷たい視線か突き刺さってくるような気がする。凛は俺の手をしっかり握っているのでなおさらだ。

 

「これ、可愛いですわ」

 時々、凛は立ち止まって、フィギュアを鑑賞する。それはいいのだが、その度に俺の腕を胸に押し付けてくる。二人だけの時はもちろん歓迎なのだが、人前では恥ずかしいし、ガレージキットを販売しているディーラーの人が呆れてたり、凛は胸の谷間がしっかり見える衣装なので、その胸に圧倒されたりしていた。

 そして、時よりディーラーの人に声をかけて、持っていたカメラで写真を撮っていた。

 

 そんな感じでざっとではあるけど、開場を一周した。声優のミニライブみたいなのもやっていたが、人が多すぎなのと時間がなかったので、横目で見ただけだった。


 そして、建物の外にでた。外はすごく暑かったけど、コスプレイヤーとそれを撮影している人がレイヤーさんのところで行列をしていた。適当にバチバチ撮るのでは無く、撮影者は順番に一人づつ撮影するのがマナーの様だ。

 それにしても、ダンボールで作った様なロボットや、ボディービルダーの様な鍛えられた筋肉を活かしたコスプレ、凛より際どいコスプレや色々なコスプレイヤーさんがいて面白い。


 見学していると、凄いカメラを持った人が凛に

「写真を撮らせてもらえないでしょうか?」

 と声をかけてきた。凛は

「よろしいですわ」

 と答えて、俺に荷物とパーカーをわたして、壁ぎわの空いたスペースに移動した。撮影が始まると慣れた様子で色々なポーズを決めていた。撮影していると同じようなカメラマンが集まってきて、あっと言う前に5、6人の列ができた。

 凛は撮られて楽しそうだった。俺も列に並んで凛を撮影することにした。

 俺の番では特別可愛いポーズと表情だった気がした。


 撮影が一段落したところで、また、建物の中に入って見学を続けた。それほど冷房が効いている訳ではないけど、灼熱の外よりはずっと涼しい。

 俺たちのお店に戻る途中、ふと、あるフィギュアが目に止まり、俺はそれをじっと見ていた。

「魔法使いのエルフですわね」

「うん、銀髪のツインテールが可愛いな」

「あまり胸は大きくないけど、あなたの好みなのかしら?」

「いや、良く見て、一見、クールな感じだけど、細かいところがエロい、特にスカートの皺がすごい」

「そうですわね、透けてるわけじゃないけれど、中が見えているみたいですわ。あら?ゆかりさんに少し似ているかしら?そして、こちらの赤毛の戦士はあなたに似てなくて?」

「そうかな?ちょっと頼りない感じもするけど」

「あら?この魔法使いはだいぶ丸いですわ」

「でも、可愛いな、痩せる前の唯に似てるかな」

「そう言えば、唯さん本当に綺麗になりましたわ。今度、モデルになってもらおうかしら」

「すいません、これください」

俺は魔法使いのガレージキットを買った。少し高いけどイベント参加の記念になるだろう。

「あら?戦士は買わないのかしら、三人でセットではないのかしら?」

「男は塗装するモチベーションが湧かなくて」

「では、わたくしが買いますわ」

「凛が塗るのか?」

「いえ、おじさまにお願いしますわ」

「忙しいんじゃないかな」

「ええ、でも、わたくしのお願いなら大丈夫ですわ」


まあ、先生は凛を可愛いがっているし、頼めば塗ってくれるだろう。俺と凛はガレージキットを買って、自分達が手伝っているお店に戻った。


 戻ると、店番をしていたのは山田さんだけだった。新作は完売しているし、お客さんもいないので暇そうにしていた。

「お帰り、楽しかったかい?」

「はい、おかげさまで色々、目の保養になりました。田中さんは?」

「ああ、手が空いてきたので交代で挨拶周りしたり、ブラブラしてたよ」


俺と凛は椅子に座って、休憩した。体力には自信があるけど普段歩かないので少し疲れた。


 しばらくして、閉会の時間が近くなってきたので片付けを始めた。もう既に撤収しているディーラーも結構いる様だ。

 閉会のアナウンスが終わると一斉に拍手が響いた。そして、展示台や完成フィギュア、売れ残りなどを台車に乗せて、それを宅配業者に渡して、イベントが終わった。


 俺たちは開場を出て、駐車場に向かった。凛はいつのまにか普段着に着替えていた。


 帰りは高速のサービスエリアのレストランで食事を奢ってもらい。家に着いたのは夜中だった。すごく疲れて、風呂に入って、すぐに寝た。色々あって、赤城を登るより疲れた感じだった。

10年前、ワンフェスに参加したことを思い出して書きました。まあ、全然売れななかったけど。

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